小山内園子のレビュー一覧

  • 破果
    韓国の女性の小説家ってすごいなと思うことが続いている。
    出生率が日本より低いことから、家父長制とそれによる分断が、日本よりキツいのだろうなと、推測されるのですが、「自由を奪われている人は、自由を謳歌している人より余程、世の仕組みについて明確に知ることができる」と丸山眞男先生もおしゃっる通り、抑圧され...続きを読む
  • 彼女の名前は
    『82年生まれ、キム·ジヨン』の作者による短編集
    様々な女性たちへ実際にインタビューした話が基になっているからか、一話ずつ心にせまる切実さがあった
    不当な出来事に流されず声をあげ続ける韓国の女性たち
    道筋は厳しく、険しいものも多い
    自分がまだ十代や二十代前半だったころに“若い女”というだけで軽んじら...続きを読む
  • 破果
    おどろおどろしい装画に手に取るのを一瞬ためらうほどです。ちょっと元気がない時は読むのを遠慮しちゃうかも。
    ですが、カバーを外した本体をぜひ見ていただきたいのです…!
    カバーの怖さとは一転、何やら真っ黒ではない優しい雰囲気。

    おそらく、桃色の紙にこげ茶色を印刷していると思うのですが、それが良い味を出...続きを読む
  • 私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない
    高校の時に読もうとしたときには、差別の構造も知らなかったし筆者の主張が強すぎる・偏っていると感じて途中で読むのをやめた。だが今回読んでいると納得する部分が多くて、そこに対する共感は女性差別だけでなく他の差別・抑圧の事例に触れたからなのか。
    女性差別だけでなく、様々な場合において適応できる会話法だと感...続きを読む
  • 破果
    65歳の殺し屋の話。
    淡々とした語り口。達観した主人公。
    が、老いを感じる中で、人への、老犬と繋がり、彼らへの共感、情け、愛情に気づき、冷静さを保ちながら、淡々とした風情は保ちながらも、戸惑い、それまでとは違う行動をとっていく。

    カッコ良い。老女のハードボイルド、ノワール小説ってのが新しい、フェミ...続きを読む
  • 私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない
    フェミニズムってなんやねん!って人におすすめ。韓国は男女格差が凄いんだなと思った。そんで日本もめっちゃやばいんだと改めて。フェミニストとかフェミニズムとか最近よく聞くけど全然なんだか分かってなかったから勉強しなくちゃなあと。自分が20代だからかな、、?差別されてるとかあんまりピンとこなくて、40とか...続きを読む
  • 破果
    4.8くらい。面白かった。
    なんか話題になってるな、目を通しておくか、の気持ちだったけど、ミュージカルにもなるらしく、そこでとっかかりやすかった。
    アクションシーンや、印象的なところは、どうミュージカル化されるのか期待出来るな、見てみたいな、という気持ちになった。

    文体はまあ、韓国だもんなって感じ...続きを読む
  • 破果
    本当に面白かった。「老いた」「女性」を通した描写、情景はそのまま差別や社会に潜む問題に通じているのに押しつけがましさが無い。文体のなすワザでもあると思う。また爪角の高い「防疫」能力によるだけではなく、彼女の人間的という意味で魅力的なキャラクターによるものだ。めくる手が止まらない、というほど軽いもので...続きを読む
  • 破果
    このミス2024の海外編で韓国版ノワールとのことで興味津々。早速読んでみました。
    65歳の殺し屋女性、業界歴45年のベテランも老いには勝てず。体だけでなく心もいうことをきかなくなってきて・・・
    仕事のミス、老いの生活、
    ラスト、因縁のある若い殺し屋との闘いもヨカッタ!
    韓国の翻訳小説は初めてだったが...続きを読む
  • 脱コルセット:到来した想像
    長い間かかったが読み終わった。
    美の呪いが以下に女性差別と繋がりがあるかを、経験のレベルで書いてある本。

    理論としては書籍”美とミソジニー”から生まれた脱コルセット運動だけあって、そちらが詳しいが、こちらと合わせて読むことで実践がわかる。
    おすすめ。
  • 破果
    ひとりの女がなぜ殺し屋に
    ならなければならなかったのか。
    65歳の老女になるまで
    どんな出会いがあり
    どんなふうに生きてきたのか。
    その孤独と苦悩。
    小さな喜びと悲哀。そして罪と罰。
    強く、逞しく
    それでいて繊細な主人公から
    最後まで目が離せなかった。
    ただ黙って一緒にいただけの
    捨て犬との触れ合い...続きを読む
  • 破果
    途中の少女時代の爪角にとても共感した。
    文章は読みづらくできていて、そのおかげで登場人物をより身近に感じられた。文章の技術よ、あっぱれ。

    老いることは避けられない。それでも死に向かい生きていく。最後の彼女の独白には、大切なものを抱きしめているような感覚を抱いた。それは思い出かもしれないし、自分の命...続きを読む
  • 私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない
    著者の書き方が優しくて胸が張り裂けそうな想いで読みました。女性やその他のマイノリティの属性がある方には共感できることが多いと思います。
    委員長は男、副委員長は女 と決められている時代に生まれたので、これは当たり前と思って生きて知らないうちに諦めていたんだなと気付きました。

    なんか失礼だけど指摘する...続きを読む
  • 破果
    一気読み。一文がやたら長かったり、体言止めを多用したり、そんな読みにくさが普通とはちがう生き方をしている人たちの一種異様な世界観を醸成している。爽やかなラストも心地よい。
  • 破果
    キャリア45年の殺し屋(65歳女性)
    純文学といえる文章の美しさがある、一筋縄では行かないエンタメ作品
    女で高齢者だとナメられることが多い世界だが、それさえも抱えてなおかつ若い男性への愛も描いている
    みごとな小説だった


    ク・ビョンモ作品がもっと邦訳されたらいいのにと思う
  • 破果
    65歳。女性。なめられがちな属性を、二つも重ねもつ、プロの殺し屋。物語の面白さって、自分ではないものの視線を借りることでもあると思うから、こんなふうに今まで見かけなかった人物設定、どんどん世に出てほしい。自分自身、昔はできていたのに…と思うことが増えているので、爪角の動揺が、レベルは違えど、よくわか...続きを読む
  • 彼女の名前は
    60名余りの女性の話。どの話もわたしの話か?とおもった。グループカウンセリングみたい。わたしたちの世代が、もやもやや違和感を言葉にして心の中から外に取り出して、共有する作業が、次の世代の勇気になると信じて。
  • ペイント
    ヤングアダルト向けの作品。
    何もわからず読んでいて、何となく中学生くらいの子向けに書かれている作品かな?って思っていたらあとがきに"韓国では中学校で必読書になっている"と書かれていました。
    教訓じみた事は書かれていなくて、「理想の親子関係」であったり「差別」のことについて考えさせられる1冊でした。
    ...続きを読む
  • 破果
    タイトルの「破果」は韓国語では「傷んでしまった果実」と「女性の年齢の十六才」を意味すると言う。
    65才の女殺し屋爪角の壮絶な人生を、現代の体力的に衰えだした中での死闘の中に、そこへ行きついた彼女の生涯を散りばめながら進む。
    同じ年の自分には、彼女や周りが「おばあちゃん」として卑下するのが気になるが、...続きを読む
  • 私たちが記したもの
    "人にはどうにもできない領域が確かにある。そんなときにできることは、待つこと、備えること、すっかり絶望してしまわないこと、かすかな運がめぐってきたときに受け入れ、感謝し、そのすべてが自分の努力の結果であるかのように装わないこと。涙が止まった。"(p.169『オーロラの夜』)