それなりに売れている作家さんの、業界で生き延びる知恵。
三人の著者なのだが、各々がそれぞれの十のテーマについて書いていて、対談みたいになっているのは最後の章だけだった。
業界の裏っぽいところとか、死ぬほどサバイバルな荒野で、新人賞取ったって、ライバルがアマチュアからプロになるだけで、ほぼ絶滅してい
...続きを読むくとか、この世界で生きていきたい人にも、単に小説が好きな人たちにも、面白く読めると思う。
が。
どなたかも書かれていたが、結局生き残っている人たちの「生存者のバイアス」からは逃れられない。
生き残っている人たちが自分たちの体験を振り返っても、その何がポイントだったのか、生き残れなかった人たちと何が違ったのか、全然わかんないのだ。
思い込み以外には。
ギャブルの必勝法を語るギャンブラーみたいな感じもしたな。
三人が三様、違うタイプを持って来て、それぞれ言ってることが違ってそこも面白いのだが、共通してるのは。
兎に角沢山書け。
心折るな。
早く自分のスタイルを見つけろ。
それだけだ。あと、思い上がるな、かな。
昔は漫画家になりたい人向けにこういう本いっぱいあったな。
今はむしろ漫画家になる方が簡単かもしれない。発表の場が増えたし、普通に、上手い人が増えた。漫画は、まず絵が描けないと漫画家になろうとも思わないだろうが、「文章」だけなら、日本人なら取り敢えず誰でも書けるのが違いかなと思う。それで、漫画と違って、読む方にも「読解力」がそれなりに必要だし。
まあ色々感心したりそうかなあと思ったりしながら読んだが、絶対に間違ってるのは、当選の確率を上げるのは、宝くじをたくさん買うこと、って言ったとこだな。
確率はあがんない。買えば買うほど、損をする確率が上がる。
要は、平均を狙いたいのか、大きく当てたいのか。大きく当てたければ、大損する確率も上がる。コツコツやれば大損しないが、絶対勝てない。
小説家としても、小説を書きたいのか、商業ベースで食って行きたいのか、超ベストセラー当てたいのかで、戦略も変わるのだろうが、例え悪すぎ。
基本的には、デビュー直後の作家さん向けの内容なのだが、この業界ってどれだけ才能があろうが、いい作品が出ようが、購入者の資金が限られていると考えれば、一定以上パイは広がらないんではないか。
業界が萎縮すると食えなくなるが、自分たちの足元脅かされても食えなくなるのはないかね。
新人は生かさず殺さず。
そんな本だと考えれば、怖い。
編集者と出版社と読者は、新しい才能がどんどん出て来てほしいところだろうが、作家自身は微妙だなあ。
もっとも1番の大問題は、この三人の作家さんの誰一人も知らないし、どの作品も知らないし、挙げられてる大家先生の誰も面白いと思わないことかもしれない。