高利貸しの主人、占い師の夫人、一人娘の3人が住む
マンションの一室の中で繰り広げられる星さんの戯曲。
家族3人に客のふりをして訪れた相談者、詐欺師、強盗、それぞれ
一人一人の背後についている白およびブルーの濃淡の霊魂。
バラバラでまとまりのない家の中で陽気で勝手な人々。
辛い、悲しい、退屈と嘆き
...続きを読むをつぶやきながら
人間にぴったりと付き添う新入り、ベテラン、とり揃った霊たち。
死んで愛を実らせる人、死後の世界に絶望を感じ、
死んでなお死にたいとぼやく老人。
手を奇妙にふりふり「信仰なさい」と説く婦人。
登場人物が増えるたび、今度はどんな霊が!と楽しみになる。
生者は未来を知りたがり、現世を永遠のごとき永き時間をかけて
眺めてきた死者は、今この瞬間を楽しむ。
死者は現実の世界に手を出すことはできないけれど、
とばっちりもくうことがない。決定的な傍観者。
死後の世界があると説いた宗教たちが崩れ、
限りある命と知った後には信賞必罰のルールはぼやけ、
正義は目減りした。
目に見えないものを大切にし、枠なき場所に生きる"生"無き者と、
目に見えるものだけを大切にし、枠に囚われて生きる"生"ある者。
"吉ですけれど、ご用心
凶ですけれど、希望あり。"
ものは言い用、キモチも待ち方次第。
裏返してみてはじめて表の良さが分かる。
会話の1つ1つが欲にまみれて生きゆく心理をつき想像を誘発させられる。
人間の心理を弄ぶかのように、それぞれの物事を巧みに扱い
相反するすべてがユーモラスにお話全体に散りばめられ見事に構成され
完結されていて感動した。
生と死の境界線。
真鍋博さんの挿絵がより柔軟にパラレルで楽しい世界を
想像させ、脳内に構築してくれる。
終始相反する視点が面白い。