岩井秀一郎のレビュー一覧

  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~
     多田駿の名前は参謀次長として聞いたことはあるが、ぞの前後での活躍は見た覚えがなく、どのような人なのか気にはなっていたが知りようがなかった。
     だからこの新鋭の作家によって、まさに伝記が発刊されたのを知り、喜ぶと同時に地味なこの人の伝記におもしろいところはあるのだろうか、と余計な心配もした。
     この...続きを読む
  • 渡辺錠太郎伝 ~二・二六事件で暗殺された「学者将軍」の非戦思想~
    二・二六事件で暗殺された陸軍教育総監渡辺錠太郎。貧しい境遇から士官学校、陸軍屈指の読書家で独自の非戦思想。歴史の狭間に埋もれた人物の実像に迫る傑作評伝。

    本書の主役渡辺錠太郎の二女の名は渡辺和子。あの「置かれた場所で咲きなさい」の筆者。二・二六事件、青年将校の凶弾に父が倒れた時、8歳の娘は正に同じ...続きを読む
  • 渡辺錠太郎伝 ~二・二六事件で暗殺された「学者将軍」の非戦思想~
    「渡辺錠太郎伝:二・二六事件で暗殺された学者将軍の非戦思想」(岩井秀一郎)を読んだ。
    これは力作です。
    見事!
    渡辺の言葉で印象に残ったのが、
    『それから少数の者が実権を掌握して久しきに溺れば必ずその内容が腐敗して来る』(本文より)
    いつの時代においても権力が腐敗していくのは同じか。
  • 渡辺錠太郎伝 ~二・二六事件で暗殺された「学者将軍」の非戦思想~
    渡辺錠太郎は2.26事件で非業の最期を遂げました。学者将軍と言われていた渡辺錠太郎。そんな彼は非戦思想を持っていました。

     そんな渡辺錠太郎と、同じ日に殺害された高橋是清が、もし生き延びていたら、と思います。


     「もしもあの時、父が青年将校たちの手で殺されていなかったら、後年キリスト教の洗礼を...続きを読む
  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~
     対中不拡大派の多田駿氏の評伝。近衛内閣が蒋介石率いる国民政府に対し、相手とせずという声明を出す前、陸海両相、外相を相手に、閣議で交渉継続を訴えた中国通の軍人。
     本書を読むと、対中国については、陸軍と海軍というよりも参謀本部の不拡大派(主に作戦実務を司る二課)に対して、拡大派が陸軍その他ならびに海...続きを読む
  • 永田鉄山と昭和陸軍
    永田鉄山という人物は、いろんな風説が流れやすい人物であるが、改めて整理すると理論家で現実主義者で、天才肌でありながらも理知的で交渉も上手な切れ者という、ぐうの音も出ないほどの人材であったのが分かる。

    昭和の陸軍は、かなりいろいろな問題を起こしているが、そんな中で永田鉄山は「総力戦」に備えながらも陸...続きを読む
  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~
    1937年の盧溝橋事件後も戦争の不拡大を主張した中国通で知られた陸軍中将・多田駿参謀次長の名前を覚えている人はそう多くない。結局,不拡大の方針は採られず,近衛文麿は「国民政府を対手とせず」の声明をだしてしまったからだ。また東條英機とも対立し,太平洋戦争前には予備役に編入されたことも関係するのかもしれ...続きを読む
  • 永田鉄山と昭和陸軍
    永田鉄山について書かれた書籍は多数あるが、歴史研究家が事実に重きを置いて記載してきた物とくらべると、本書は歴史のifに触れる珍しい内容である。そこに面白さがあると言って良い。
    永田鉄山は言わずと知れた昭和陸軍における最高峰の頭脳の持ち主で、「永田の前に永田なく、永田の後に永田なし」というフレーズを聞...続きを読む
  • 今村 均 敗戦日本の不敗の司令官
    今村均という人物は大東亜戦争(海軍的な視点で見た太平洋戦争ではなくアジアで繰り広げられてた意味で使用)に於いて優れた指揮官として書籍にも多く取り上げられている。私が初めて深く知る事になったのは角田房子氏の「責任 ラバウルの将軍今村均」であった。以来、ビジネスマン・リーダーとしての在り方は正に今村均の...続きを読む
  • 永田鉄山と昭和陸軍
     この作者は、主人公の遺族に会って見せてもらった写真や聞いた話を紹介するので、仕事以外の主人公の姿も見えてきて多少なりとも親近感が湧いてしまうという特徴がある。
     この手法は好きである。人物を描くからには私的な面があって当然で本当の姿がそこにはあるし、また調査を行って書くということは空想小説ではない...続きを読む
  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~
    よく調査されており、戦時中の歴史に残る傑物を発掘されたことは大変なお仕事をされたと敬意を表したいと思います。
    ただ如何せん表現や構成に稚拙な点もあり、ノンフィクションの読み物としては今一つと感じました。ただ対象を見つめる視点は鋭いものがあると思いますので、ぜひ次回作に期待しております。
  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~
    戦前・戦中の海軍=善玉、陸軍=悪玉の印象公式が揺らぎます。と云うのも著者があとがきでも綴って居た通り。
    こんなにマトモな人が中央に居乍ら、日中関係硬化・悪化の後の太平洋戦争だったのなら、それこそ何かの見えざる手だとか、時代の気風の魔力としか言いようが無い。
    禅僧の様な佇まいに日本古来からの武将の様な...続きを読む
  • 多田駿伝~「日中和平」を模索し続けた陸軍大将の無念~

    読み応えある評伝

    名前こそ知っていたが漸く評伝が出た。日中戦争を扱った戦史研究は数あれど近衛第一次声明からの近衛改造内閣と参謀本部の動向についてはあっさりと済まされることが多く、多田駿という人物とその内面は良く知られていなかったと思う。
    僧侶が何故か高級軍人になってしまった人である。書簡にある日本や日本人への諫言が...続きを読む
  • 服部卓四郎と昭和陸軍 大東亜戦争を敗北に至らしめたものは何か
    処世術とはいつの時代も人を救ける。無論本人の持った生きていくうえで必要な能力である。世の中をうまく渡り歩くというのは難しいもので時代も環境も周囲の人間も全て自分の思い通りでは無いから、如何に状況に合わせて上手く立ち振る舞えるか、それも本人の実力の一つである事は間違いない。世のには上からも下からもウケ...続きを読む