また一人、優れた才能を持つ漫画家に出会えた
嶽先生の才能を見出し、育て、一冊の本を世に出した編集者さんに感謝したい
さすがに、市川春子先生や九位諒子先生が現在いる次元には、まだ至っていない。けど、確実に、そこまで自力で登りつめられる、と断言できるだけの「何か」を、この『なんてことないふつうの夜に』か
...続きを読むら感じる
掌編集だけあって、内容は多岐に渡っている。恋愛になりかけているモノがあるかと思えば、ファンタジー感が微かに漂っているものまである。言い方こそ悪いだろうが、手あたり次第。嶽先生、描きたいモノを好きに描いてる。この、“ごった煮”感に、私は今後の期待を抱いているんだよな
ふつう、ってのは、ふつうじゃないからこそ、ふつうなのだ。普通は異常であり、異常は普通であり、境界線はなく、一皮剥けば、同じものがそこにある
訳わからない事を言っているのは承知だが、読めば、コイツが言いたい事は恋う事か、と漠然ながらも察してもらえると思う
確かに、これは夜に読みたくなる。体の良い睡眠導入剤になるって訳じゃ無いが、少なくとも、起きた時にモヤモヤするような夢は見ずに済みそう
キャラクターらの個性がこれでもかってくらい独特で、彼らの心情に共感できるシーンは何気に多い
夜は確かに、どっか淋しさも感じる。けど、その淋しさが、人生には必要だ。きっと、こんな夜を過ごしていく事で、人の心は少しずつ熟していくんだろうな
どの話もオチが読めちゃうんだけど、そこがイイっつーか、先が読めても、先が読めるからこそ、ますます面白い、と判る
正直なとこ、一番のお勧めを決めるのは難しい。節操がないな、と思われてしまうだろうが、リアルに一度目に読んだ時、二度目に読んだ時、そんで、この感想を書くのに読み返した時で面白さを感じるモノが変わってしまってるのだ
なので、どの作品が連載化して欲しいか、って変化球を投げてみた。そうしたところ、数秒の脳内会議で、第7夜「ハングリーガールの憂鬱」が挙がった。ストーリーのメインが女吸血鬼、生きている人間から血を吸うのが苦手ってキャラ、加えて、秘書さんとの関係が少し変わりそうなトコも良かった。秘書さんが吸血鬼って告白を、これまでの付き合いと直感から真実だ、と確信するまでの表情の変化が妙にリアルで、ここにも嶽先生の地力の高さを感じられる
この台詞を引用に選んだのは、やっぱ、良い歳の経方をしている老人の言葉には説得力があるな、と感じたので。自分の人生で何が大切か、っつーより、何がなかったらダメだ、と判っている人間は強いな。程度にもよるけど、それまで真っ当に生きてきたジイさん、バアさんは、残り少ない寿命が尽きる日まで、ちっとくらい我儘になってもいいよな。好きな事を好きなようにやらせてやるのも、祖父母孝行だろう