芳川泰久のレビュー一覧

  • ボヴァリー夫人
    『ボヴァリー夫人』

    「そろそろやばいかな」とかこの若妻は思いません。
    元祖ゴーイングマイウェイな”ボヴァリー夫人”。

    若い時の夢見がちな空想って、
    いつしか現実と向き合う時間が増えるにつれ
    にこやかに送り出せるものだと思うのですが、
    (と言うかサヨナラせざるを得ない…?)

    この妻、諦めない。...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    最初は冗長に感じたが、読み進むうちに繊細な情景描写や感情表現にぐいぐいと引き込まれた。文学史上に残る傑作だと思う。翻訳も丁寧で読みやすい。
  • ボヴァリー夫人
    冷静で緻密な描写に終始圧巻される。
    ストーリー自体は現代ではありふれた転落劇だが、これでもかと積み重ねられた情景描写が雄弁で士気迫ってくるものがある。
    農業共進会でのロドルフとの逢引シーンが素晴らしい。
    役者あとがきまでボリューム満点で満足度が高かった。
    シャルルは何も悪いことはしていないし一貫して...続きを読む
  • 謎とき『失われた時を求めて』
    はじめにとおわりにはマグマが吹き出す熱量だ。小説読みの面目躍如だ。微差、石の摩滅、重ね合わせは卓見すぎてクラクラする。失われた時を求めてを読んで、さらに本書に出会えて、生まれてきた甲斐もあったよ。
  • ボヴァリー夫人
    どうしようもない女性の話。真っ当で愛情深い夫を退屈で凡庸だと軽蔑。夫は安定した稼ぎがあるのに、この人でなければ自分はもっと裕福な暮らしができたはず、と自惚れ。そんな女性の話でも一応の格調を保っている。文章の美しさもさることながら、女性の一途さ故に。ただ物語のような恋愛をひたすら求める様は、哀れだけど...続きを読む
  • 新潮モダン・クラシックス 失われた時を求めて 全一冊
    原本は対訳が全14巻、とても読み通せるものではなく、興味はあるものの、でしたが、本書そのタイトル通り、「失われた時を求めて」を全1巻に纏めてものです。訳者の芳川泰久さん角田光代さんのお力で自分的にはスリリングな読書体験させて頂きました。特に45章「不揃いな舗石」以降の主人公の哲学的思弁と導かれる解。...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    でたらめな父親と、気位の高い母親にふりまわされて
    シャルル・ボヴァリー氏は自分では何もできない男だった
    親の言うまま勉強して医者になり
    親の言うまま資産ある中年女を嫁にとった
    しかし患者の家で出会った若い娘と恋におち
    初めて自らの意思を持ったシャルルは
    熱愛のさなか妻が急死する幸運?にも恵まれ、これ...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    配偶者や恋人以外の男女に心が傾くことを浮気と呼ぶのは実に言い得て妙だ。足が地につかず、まさに気持ちがフワフワと浮き立つ如きその感覚は、恥ずかしながら私自身にも経験がある。以前読んだ桐野夏生著「柔らかな頬」のなかで、不倫相手と密会する主人公が「このまま彼と生きていけるなら子供を捨ててもいい」と考えるの...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    初夜のあとシャルルがむしろ処女だったみたいでエンマはスンとしてたのウケる
    「彼女が知らない場所で寝るのはこれで四度目だった。(中略)そして、そのどれもが自分の人生に新たな段階の幕開けをもたらしてきた。場所が違うので、同じことがまたしても起こるかもしれないなどとは思えず、これまで体験してきた部分がなに...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    19世紀フランス文学の名作。モームの世界十大小説のひとつ。原文に忠実な訳文を目指したという日本語最新訳。

    恋愛小説のような情熱的な恋に憧れていた少女が、うっかり平凡な結婚をしてしまった反動で引き起こしてしまう壮絶な不倫劇。不倫にまつわる情動の燃え上がりや苦悩の激しさをあますことなく描き切り、恋愛と...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    装丁が水色で夫人の後ろ姿の後毛まで。
    フローベールの文章に忠実に訳してあるそう。


    ルルー氏のとりたてが執拗で、上乗せしてたんじゃないかなどど思った。378
    エンマは、いいようにおだてられてしまったけど、このルルーの悪党ぶりには天罰でも降らないかと思ってしまう。
  • 謎とき『失われた時を求めて』
    (よい意味で)大学の講義みたい。『失われた時を求めて』のいろんなところを、場合によっては原文まで参照して、その含みや成り立ち、背景などを解説してくれる。例として挙げられる訳が生硬なのもやはり講義っぽい。確かに、一文の中で時制がかわっていて、それぞれにこんな意味がある、というのはなかなか日本語訳には反...続きを読む
  • 新潮モダン・クラシックス 失われた時を求めて 全一冊
    大著の縮約版。
    とは言え、ボリュームあり。
    母への想い、祖母の死、そしてアルベルチーヌへの尽きぬ想い。
    死と愛と嫉妬と欲望。およそ人間が苦悩する様々なものが連綿と綴られる。
    角田さんの訳じゃなかったら、読めたんだろうか。
  • ボヴァリー夫人
    吉田健一の『文学人生案内』第一章「文学に現われた男性像」に小説には女性が華やかに、かつ悲惨に焦点を当てられ中心になって描かれているのが多い、男性には光が当てられてない、 という記事にはわたしは目をひらかれる思いだった。

    吉田氏はこの本の中で「フローベルの『ボヴァリー夫人』」という章で詳しく、文学論...続きを読む
  • 新潮モダン・クラシックス 失われた時を求めて 全一冊
    本当は、ちゃんと原文に即したものを読むべきなのだろうが、複数回挫折している自分にとっては1冊でまとまっているものがあるというのは非常にありがたかった。
    これを足がかりに改めて読み進めるというのはありなのではなかろうか。
  • 先生の夢十夜
    初出の記載なく書き下ろしか

     死後の 猫の"我輩"の夢枕に死後の漱石が立ち、『それから』の三千代がどうなっているのかを、"我輩"の思念が映像化することで調べさせると、物語の登場人物たちは、その後もそれぞれの人生を歩んでいた、というお話。

     三千代と結婚した代助は失踪し、福島の川で梅花藻の上に身を...続きを読む
  • 先生の夢十夜
    こんな夢をみた。
    『夢十夜』を含め、『吾輩は猫である』『こころ』『それから』も登場人物の名前や特徴は憶えていても物語の詳細は忘れてしまっていて、また読み返してみたくなりました。
    猫好きなので、『吾輩』が大活躍で楽しめました。
    主人(夏目漱石)に対して「語り手が死ねば小説が終わるという根性が小説家とし...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
     主人公エンマは自分が既に持っているもの、手を伸ばせば届くものには幸せを見出さず、だから遠くにあるもの、かけ離れたもの、失ったもの、身分不相応のものを追い求める。その気質は奇しくも彼女の忌み嫌う市民的な平凡さそのものとして描かれているように感じた。おそらくフローベールもそのように意図して書いているの...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    足るを知らない人間の破滅劇。

    夫の鈍感さ(なにも気づいていないふりをしていたのか?)も相まって、救われない。
  • ボヴァリー夫人
    田舎の退屈さに倦む恋多きエンマの破滅への道。つけ入るロドルフ、レオンはやがては退いてしまう。狡猾なルルーに莫大な借金を負わされ服毒する。献身的な夫シャルルが哀れ。推敲を重ねた文体からの翻訳が馴染まないのか読み終えるのに随分かかったが満足。2023.3.21