中勘助のレビュー一覧

  • 銀の匙
    前篇で特におもしろかったのは「お蕙ちゃん」との顛末で、後篇では伯母との再会や、友人の「姉様」との経緯が心惹かれた。
  • 銀の匙
    幼少期から思春期までよくこんな細密な描写ができるなと感嘆ばかり。内容は、子供の遊びひとつとっても、現代と比べなんと豊かなことか。まだまだ自然とたくさん接点のあった時代かな。
  • 銀の匙
    病弱で祖母にかじりつきの中勘助の幼少期から青年までの自伝的エッセイということになるのかな。

    本当に小さな頃からの話を事細かに、その時の自身の気持ちを主軸に書かれているんだが、それがすごいのなんの。
    記憶をその時その時にわけて真空パックにでもしているのかというほどありありと書かれてらっしゃる。

    ...続きを読む
  • 銀の匙
    ただ、起承転結なストーリーではなく、少年の日常がかかれてるだけですが、惹き込まれていきました!心理描写、情景描写を綺麗に表現されてて、ずっと読んでいたい気持ちにさせられました。
  • 銀の匙
    記憶力の化け物か感受性の化け物かその両方っていう本。

    27歳の成人がこれだけ細かい描写で子供の心情を語れるというのが凄まじい。




    p. 153あはれな人よ。なにかの縁あつて地獄の道づれとなつたこの人を 兄さん と呼ぶやうに、子供の憧憬が空をめぐる冷たい石を お星さん と呼ぶのがそんなに悪いこ...続きを読む
  • 銀の匙
     美しすぎる日本語。
     主人公が子供の頃から大切にしている小箱。

    (抜粋)
    なにもとりたてて美しいのではないけれど、木の色合いがくすんで手ざわりの柔らかいこと、ふたをするとき ぱん とふっくらした音のすることなどのために今でもお気に入りのもののひとつになっている。なかには子安貝や、椿の実や小さいと...続きを読む
  • 銀の匙
    美しい日本語に触れられる作品。「一つの表現に感動する」という体験が出来る。女の子との友情が芽生えていく様子を、牡丹のつぼみのほころびに例えた文章が、美し過ぎて、個人的に忘れられない。

    明治時代の主人公の幼少期の何気ない日常の一コマ一コマなんだけど、時代を超えて現代にも通ずる懐かしさをも感じた。読み...続きを読む
  • 銀の匙
    何が起こると言うわけでもなく、確かに変化していく少年の日々が描かれている。
    流れる水を見ているようにぼんやり読んだ。
  • 銀の匙
    読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。
    いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。

    私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなかったのでその留守のま...続きを読む
  • 銀の匙
    子供の頃の思い出を子供そのままの瑞々しい感性で綴った私小説。病弱な幼少時代の前編と就学後の後編からなるが、いずれも人見知りで感受性豊かな筆者の体験は何処か懐かしい。毎年読み返すたびに「すべてのものはみな若く楽しくいきいきとして、憎むべきものはひとつもない。」そんな風景が当たり前であった過去を思い出し...続きを読む
  • 銀の匙
    この世界観が大好きで何度も読み返す。

    昭和をまったく知らない世代にはなかなか想像し難いかもしれないけれど、こんなふうに育てられた子供が豊かな情緒をもち、味のある大人になるのだなと思う。

    このような幼少期を過ごしたからこそ、『蜜蜂』他数々の名随筆が生まれたのだと思うと、中勘助を育ててくれた伯母さん...続きを読む
  • 銀の匙
    2020.7.22
    体が弱いことからこの時代にしては甘やかされて(実際にしょっちゅうお菓子やらおもちゃやらを買ってもらえているのでそれなりにお金がある家と思われる)育ったのに、そんなに傲慢にならず感受性豊かに育った主人公の話。
    前半は子どものころ面倒を見てくれた伯母とのやりとりがほとんどだが、文...続きを読む
  • 銀の匙
    銀の匙は中勘助が書いた小説。中勘助の自伝的小説だそうだ。
    明治43年に前編が執筆され後編は大正2年1913年に執筆された。
    文章が美しく、当時をしらない自分にも郷愁を抱かせる描写がすばらしい。

    東京の神田で生まれた主人公は、やがて緑豊かな小石川に引っ越す。
    その土地でであった子どもたちとの交流や、...続きを読む
  • 銀の匙

    私は平成生まれで、当然この物語で
    描かれている時代については無知である。
    しかし、懐かしい。
    描かれる人々、風景、モノ、会話、その全てに
    懐かしさを感じた。
    おそらく、強く日本を感じるのであろうと
    思われる。

    自伝的な内容で、主人公の幼少から青年期までが
    描かれている。
    自分に重ね合わせながら、...続きを読む
  • 銀の匙
    素晴らしかった。大正時代の終わりに書かれた本。知ってはいましたが初めて読みました。日本語が美しい。描写が沁みる。描かれている世界に心温まる…現代と比べてなんと豊かな世界が広がっているのだろうと、胸が詰まりました。”美しい国”とはこういうことを言うのですよ、偽造、捏造しか術のない醜い安倍晋三さんとその...続きを読む
  • 銀の匙
    体の弱い主人公と世話役の伯母とのやりとり
    近所の女の子の友だちとの遊び、学校での出来事などの日々が
    淡々と綴られている、私は存在していない時代なのに
    なぜかとても懐かしく思える。文章がとても美しい。日本語の良さが詰まった小説。
  • 銀の匙
    著者が幼少の頃の思い出が書き綴られている。本書はストーリー性、哀愁、教訓といったものを期待して読むものではなく、美しいものを鑑賞するように読むべきものである。
    解説でも書かれているように、本書に描かれているのは著者が幼少の頃の視点の記憶でもなく、大人が想像した少年の視点でもない、少年の視点そのもので...続きを読む
  • 銀の匙
    明治時代の東京の下町を舞台に、病弱な少年の成長していく日常を描いた自伝的作品。

    夏目漱石が「きれいだ、描写が細かく、独創がある」と称した、まさにそのままの作品。ほんとうに優しい文体で、少年の心情の表現が細かく為されている。数人の同年代の女子との交流が、章の区切りのような役割を果たしていて、それぞれ...続きを読む
  • 銀の匙
    大人になっても捨てられない銀の匙
    虚弱な赤ん坊だった彼は
    それを用いて漢方薬を飲まされていた
    母から聞いたその頃のエピソードをとっかかりに
    幸福な少年時代が回想される
    虚弱だったもんで伯母さんに甘やかされており
    乱暴な男の子たちのことは憎んでいた
    それで、よその遊び相手といえば専ら女の子であった
    ...続きを読む
  • 銀の匙
     前篇が1911(明治44)年、後篇が1913(大正2)年の作。
     当時夏目漱石がいたく賞賛した作品とのこと。確かに子どもの心、子どもの世界をよくとらえており、自分とは全く違う環境・違う経験のプロセスにいるのに、読んでいるとどこか懐かしい感じに囚われるのは、やはり「子ども」の普遍を掴んでいるからだろ...続きを読む