● 感想
有栖川有栖の「必読!Selecrtion」として選出されている笹沢左保のミステリのシリーズ第1弾。笹沢左保のデビュー作でもある。
そのテイストは、本格ミステリっぽくはなく、社会派ミステリ的な雰囲気。その社会派ミステリっぽい体裁の中に、本格ミステリ要素が入っている。
いくつかのプロット
...続きを読むが入り組んでいるが、根っこにあるのは意外な動機。第1の被害者の鶴飼の恋人で、被害者側の人物だと思われた細川マミ子は、「子ども」に強い執着を持っており、堕胎させられたことから、鶴飼に殺意を抱いていた。「おなかの子の父親である鶴飼を殺害するわけがない」という動機のなさと、妊娠をしているのであれば、急な勾配の非常階段の上で殺害をすることは不可能という2つの点を、「おなかの子の堕胎を強いられたことが動機」に代え、そもそも妊娠していなかったので、鶴飼の殺害は可能にひっくりかえる。この意外性が、この作品のプロットの根っこの部分である。
続いて、2つ目の殺人である二階堂殺し。こちらも、細川マミ子には動機がない。凶器がない。アリバイがある。という3つの謎がある。動機は、妊娠していないと気付かれたから。凶器はドライアイス。アリバイは、アリバイ証言をしていた貝塚という男を酔わせ、日時を誤信させ、嘘のアリバイ証言をさせていたというもの
こちらは、どのトリックも弱め。それぞれ、1本のミステリを書けるほどのデキではないので、まとめて使ったという感じだろう。
暗号も、郵便局の局番を利用した都道府県をいろはによませるという暗号が仕込まれている。これも、1本の作品にするほどのものではないので、デビュー作のサブトリックに盛り込んだのだろう。
第1部が捜査資料であり、第2部が探偵役の倉田警部補の捜査という構成もそれなりに面白い。終盤は、探偵役の倉田警部補と、完全犯罪をなした細川マミ子の対決的な雰囲気まである。多数の本格ミステリ的な味付けを盛り込んだ秀作という雰囲気か。★3で。
● メモ
組合を崩壊に追い込んだスパイとして、鶴飼範夫が殺害される。殺害現場は、商産省という勤め先の非常階段の上。その後、鶴飼の内縁の妻である細川マミ子と同室に住んでいた二階堂という女性が殺害される
容疑者とされていたのは組合の執行委員でもあった亀田克之助という人物この人物は、自殺とも、事故ともとれる形で死ぬ。
第1部では、この事件について、なるべく主観が入らないように、関係資料が収録されている。
第2部は、倉田警部補という人物による捜査が記されている。倉田警部補は、容疑者である亀田にアリバイがないことを証言した亀田の元恋人が幸せそうな結婚をしている写真を偶然に見て、嘘の証言をしていることを疑ったことから、事件が進んでいく。
倉田警部補は、亀田のスーツがラーメン屋でラーメン代のツケとして受け取られていることを割り出し、その背広から日記を見つけ出す。
倉田警部補は、鶴飼が逃亡していた旅館を見つけ出し、暗号が書いてあった名刺が送られていたことを知る。名詞の暗号の解読。鶴飼と細川がかつて郵便局につとめていたことから、局番を利用した暗号を解読
細川の二階堂殺しの凶器はドライアイス。これで消えた凶器の謎が解ける。
二階堂殺しの際の細川のアリバイ。貝塚という男を酔わせ時間を誤信させ、嘘のアリバイ証言をさせた。
「招かれざる客」というタイトルの意味。これは望まれないで生まれた子という意味。細川の鶴飼殺しの動機は、子供を堕ろさせられたから。
細川マミ子が妊娠していれば、非常階段を上ることも困難であり、鶴飼殺しの犯行は不可能。しかし、堕胎しており、妊娠していないのであれば犯行は可能
二階堂殺しの動機は、妊娠していないことがバレたため。