伊藤亜紗のレビュー一覧

  • 「利他」とは何か
    荒木博之のbook cafeで紹介されたものを偶然拝聴し、「利他」の在り方を本書で触れてみたいなと思い、手に取ってみた。総じて、利己的な利他へ陥ることへの警鐘と。「うつわ」としての自己からさらに上位へと昇華したものとの関わりからの達観した感覚を受け取りました。

    第一章 「うつわ」的利他 - ケアの...続きを読む
  • 手の倫理
    今日の世の中を覆っている合理性や生産性という価値観は違う、ふれることを通じて得られる非合理で生々しい感覚に価値を見出そうとしている。今日に必要な思想だと思った。
  • きみの体は何者か ──なぜ思い通りにならないのか?
    中学生、高校生を対象にしたシリーズだが、大人が読んでも考えさせられる1冊。
    「自分の身体は思い通りにならない」ということを考える内容。前半では著者自身の経験を中心に、吃音について説明されている。同じ音を繰り返す「連発」、言葉が出てこない「難発」の状態について語りながら、そんな身体とどう付き合うのかと...続きを読む
  • 手の倫理
    人が人にさわる/ふれるときの交流、スポートや介助などさまざな関わりの場面で触覚がもたらす
    コミニュケーションや人間関係の可能性について綴られています。
    全体的に哲学的な内容ですがそもそもの「さわる」と「ふれる」、「道徳」と「倫理」の違いなど
    テーマに深入りするワードに関する説明がとてもわかりや...続きを読む
  • 手の倫理
    ーー信頼があるところにだけ、メッセージは伝わっていくのです(p.165)

    コミュニケーション論としても、教育論としても、演劇論としても読むことができる本。
    「手」という「距離ゼロ」のメディアを通じて、私たちは「生成モード」のコミュニケーションを行なっている。当たり前のことを改めて言葉におこしてもら...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    近代的な「主体」を前提とした「利他」は利己の変奏に過ぎない。では、利他がたちあがる場とはどのようなものか。そのことを5人の論者がそれぞれのフィールドに引きつけて読者にわかりやすく説いてくれている。5人話はどれも本当に面白い。
  • 手の倫理
    ふれる、と、さわる、にはじまり、手を介したコミュニケーションや、未だコトバに至らない思いがダイレクトに伝わる感覚などを、様々な事例や筆者自身の体験から、丁寧に言葉を連ね、分析されています。
    そのありありとした感触や、相手に委ね、相手からも委ねられる感じが、言葉による思考、分析、コミュニケーションとは...続きを読む
  • きみの体は何者か ──なぜ思い通りにならないのか?
    今までは、心には個性があった方がいいけど、体は平均値に近い方がよいと思っていた。

    “きみの体はきみの「こうありたい」には応えてくれない” p.62

    体には、どうがんばったって平均値にはなれない部分がある。それをネガティブに捉えるのではなく、あるいは白々しい前向きな言葉で語るのではなく、自分にぴっ...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    医師は患者さんのために働くし、産業医は働く人のために働くので、利他的な職業でありそうですが、そこで利己的な利他を発動しがちなのもまた真だと思うので、メタな視点ってやっぱ重要なんだなあ、と思いました。
  • 手の倫理
    親鸞会などのいう難度海よりも、小舟にすがる生き方のほうがいいと思っていた。つまり、道徳で安らぎを得るよりも、その場その場を悩み、オロオロする倫理がいいと改めて思わせてくれた。

    それから、する対されるの関係でなく、お互いにあるというのも、J哲学を超えて、西田幾多郎の主客不分離を思わせた。
  • 手の倫理
    筆者の論考の基になるのが視覚障害者との(触覚による)コミュニケーションなのだが、そこから触覚によるコミュケーションの要素をキーワード(伝達モードと生成モード、共鳴、などなど)として抽出していく様が鮮やかで、とても面白い。

    最終章では触覚の「不埒」で扇情的な側面(触覚のその素晴らしい特性から、思って...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    コロナ禍に「利他」が流行っているらしい。それを東京工大の「未来の人類研究センター」のメンバーで、この言葉の論考を集めた本。伊藤亜紗、中島岳志、国分功一郎、若松英輔、磯崎憲一郎と今はときめくかどうかは分からないが、私自身は共感を呼んでいる著者ばかり。それぞれの論考の切り口が興味深い。「利己」の反対は「...続きを読む
  • 手の倫理
    道徳と倫理の違いからはじまり、興味深い多彩な例示でわかりやすく論じられててよかった。
    どの項も面白かった。ロープを通じて伴走するときに感じる共鳴について、特に印象に残った。
    最初に道徳と倫理の違いについて知った時、だから私は道徳だとピンとこなかったけど倫理には興味が持てたんだと納得した。
    参考文献に...続きを読む
  • 手の倫理
    あまりのおもしろさで、一気に読めました。視覚上位の人間社会に、優しく物申す本でした。
    伝達モードと生成モードのことを一貫して言及していました。この動線の自覚は、仕事をしたり、作品を作ったり、人間関係を築く上で大事だなあと思いました(コミュニケーションが一方的だと、時として暴力となり得ると感じました)...続きを読む
  • 目の見えない人は世界をどう見ているのか

    Want to repeat!

    I really loved each stories in this book. I have a father who has been blind for long time and this noted me that how "I" should see his vision and hi...続きを読む
  • 目の見えない人は世界をどう見ているのか
    目が見えないということがどういうことか少し理解したように思う。

    聞かされて「そうだったのか」と思うこともあれば「やっぱりそうなんだな」と思うこともあった。

    例えば触覚に関して、点字を読むのは触覚ではないと言われていて、それは想像するとすぐに納得できた。
    ただ、目が見えない方の点字の識字率が13%...続きを読む
  • 体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉
    読みやすかったし面白かった。
    できないことができるようになる瞬間の「あ、こういうことか」をサポートするテクノロジーが書かれていた。
    ニューラリンクのように脳にインプラントを埋め込んで考えるだけで色々できる、みたいなのは正直言って少し怖い。
    でも、装着することでプロと同じ指の動きでピアノが弾ける器具だ...続きを読む
  • 目の見えない人は世界をどう見ているのか
    「目の見えない白鳥さんと…」の白鳥健二さんも登場します。あっちは感性鋭いノンフィクション作家、こっちは美学(芸術や感性的な認識について哲学的に探究する学問)の専門家による本。きっと違った視点で語られているのだろうなと手に取りました。

    不勉強で美学という学問分野そのものを全く知らなかったけれど、なか...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    うつわ的存在であることが大事

    今までは、「意思」という概念を使って帰責(その人に責任を押し付ける)ことが責任の概念のコアだと思っていたけど、國分功一郎さんは、中動態の概念を用いることにより、その「意思」を否定することで、神的因果性(人は運命に巻き込まれて行為させられる、あるいは、自らの行為かわ思っ...続きを読む
  • 体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉
    複数の理系研究者を現代アートの研究者がインタビューし、気づきを横展開しつつ「できるようになる」意義や醍醐味を取り戻す文脈に整理する