金子薫のレビュー一覧

  • アルタッドに捧ぐ
    この小説に歓喜や恍惚が存在していないことを非常に残念に思う。カーヴァーの「大聖堂」のようなものを書けというのは非常に酷なことではあるのだが、それを期待させるような小説だった。
    とはいえ、体験的にではなく、技巧的に書こうとしていたように読めるので、「詩的」から離れたところで恍惚を描こうとする試みだった...続きを読む
  • 鳥打ちも夜更けには
    架空の街の架空の不幸
    現実ばなれしてるし、本編ではそれどころじゃないのに、巻末に補遺されたレシピは現実においしそう

    起こってることの非現実さと登場人物たちのそれに対する行動や考えの現実性、巻末のレシピまで含めて、1冊の中の架空とリアルのさじ加減が絶妙
  • アルタッドに捧ぐ
    献本企画にていただきました。
    突拍子のない始まりから続くリアルの物語。正直あらすじを読んだ時からこれはどういう意味だろうと思っていたのだけれど、本当にそのままの意味だった。作中で死ぬはずのなかった人物が死ぬという不可思議な事態に陥るのは面白い。現実にはありえない非現実性が逆に魅力に思えた。
    固有名詞...続きを読む
  • アルタッドに捧ぐ
    第51回文藝賞受賞作 刊行前サンプル版レビュー。

    理屈をこねるような文体なのだが、言葉選びは適確のようで、物語の終結点までの流れは淀みなく体に浸み透った。本質的にとまでは言わないまでも、作者の言わんとする恍惚や高揚が生に対して持つ意味、あるいは死に向かい合う緊密な距離のようなものを享受できた。そん...続きを読む
  • 道化むさぼる揚羽の夢の
    『発狂せずにはいられない』

    古本屋で直感で購入し満足と後悔が同時に
    やってきた本。
    いわゆるディストピア小説というもので、
    あらゆる方向から衝撃というかなんというかの
    連続。

    小説を読むとその中に入り込むような方は
    多くの場合発狂しそう…。(私はそうでした)
    全くもって現実とリンクしないような話...続きを読む
  • 道化むさぼる揚羽の夢の
    今の状況にめちゃくちゃ合っているようで合っていない
    ただの不思議な話って感じで読んじゃったけど、
    この作品に関してはこの読み方でいいんじゃないかと思うことにする
    意味なんて無くていいらしいから
  • 双子は驢馬に跨がって
    時代も場所も定かでない世界観は、おそらくあらゆる苦境にあてはまる。
    主人公も彼を解放しようとする者もそれを阻む者も、なんなら全て同一人物かもしれない。
    だから、自身は囚われたままでも、その原因に向けて分身を差し向ける彼を不甲斐ないとは思わない。
  • 双子は驢馬に跨がって
    岡上淑子さんの装画に惹かれた完全なジャケ借りで手にした初めての作家さんでした。
    面白かったです。不条理過ぎて内容が無い気がするお話だったのですが最後まで惹き付けられました。
    記憶も自らの名前も失い、理由もわからず監禁されている「君子危うきに近寄らず」と「君子」の親子と、彼らを救出するために驢馬と旅に...続きを読む
  • 鳥打ちも夜更けには
    it like a never ending story. if you're a bird hunter what should you do?
  • 壺中に天あり獣あり
    壺中という世界観,入れ子構造のホテルとかブリキの動物達など凝った舞台で漂う人々.出口のない迷宮は迷宮と言えるのか?登場人物も意味ありげな名前で,結局のところ創造主たるものの悲哀を感じさせながら,出口のないままで物語は閉じる.何を表現しようとしているのか、難解.言海の創る動物達を見てみたかった.
  • 鳥打ちも夜更けには
    架空の港町で毒矢で鳥を仕留める鳥打ちという仕事を三人が任されていたが、そのうち一人が10年経って鳥を殺せなくなる。観光源になるであろう蝶を守るため、それを狙う鳥を数多く殺すという世界観に、うっすらとした心地悪さを感じた。
  • 双子は驢馬に跨がって
    記憶を無くしたままどこかの一室に閉じ込められている父と息子。

    親子は互いに血の繋がりがあるのかどうかすら、記憶からない状態で、
    いつか双子が驢馬に跨って、自分たちを助けてくれるだろうと信じて励まし合う日々を送る。

    壁に書いた地図は、食事を運んでくる男たちによって真っ黒に塗りつぶされ、
    トイレの壁...続きを読む
  • 鳥打ちも夜更けには
    フランス文学のかおりがします(読んだことないけど)
    途中の三種類の動物のことが気になって、読み急いでしまいました。
    もっと味わって読むべきだったかな
    ラストのあっさり感は好きです
  • 鳥打ちも夜更けには
    架空の港町にいきる「鳥打ち」という仕事に就いた男たちの話。ストーリー自体は現実離れしているけれど、現実を思わせるような面白さがあった。何を大切に思い何を守るのか、何が規律でなにが正しいのか。誰が正義なのか。何が美しいのか。余韻の残る読後感で再び読みたくなりそうな作品。
  • 鳥打ちも夜更けには
    観光資源の蝶を守るために「鳥打ち」という職業についたが、海鳥を吹き矢で殺すことに嫌気がさした若者の物語。メルヘンタッチというか、ちょっと変わった雰囲気のなかで語られる物語。
  • アルタッドに捧ぐ
    勝手に死んでしまった小説の中の少年からトカゲとサボテンを託された作者。
    あらすじだけではさっぱり意味のわからない不条理小説のようなのに、内容はむしろ現実的であわあわとしている。
    小説を書かなければいけない、まだ書くべきではないとせめぎ合い、1年もの何者でもない期間を、トカゲとの生活に費やす。
    ひいて...続きを読む
  • アルタッドに捧ぐ
    架空のような村の民族の話しから始まり、現代社会へとそれがリンクしていく。実は村の民族の話しというのが小説の中での出来事だった……。
    普段知ることのないトカゲの習性、生態がわかった小説でした。
  • アルタッドに捧ぐ
    1ページ目でぐっと引き込んできて、あとはチョットしりすぼみだったかな。設定をそのまま書いているような説明的な文章、死生観も唐突だし、もうちょっとうまく書けたのではとどうしても思ってしまった。
  • アルタッドに捧ぐ
    なかなかおもしろかったよ。
    細かく分けられていて考える時間を与えられてる感(勝手に思ってるだけやけど)、よかったね。

    作者は慶應か。羨まし。
  • アルタッドに捧ぐ
    献本企画でいただきました。文藝賞受賞作です。 幻想と現実が入り混じった小説家の卵のお話。どこからが幻想でどこまでが現実なのかわからない。すべてが妄想なのかもしれない。きっとどちらでもよいのでしょう。哲学ぶって、理屈をこねくり回しているだけかもしれないけれど、無為に過ごす日々がいつか有為になるかもしれ...続きを読む