・「データや常識と整合性のある道理だけじゃなくて、個人的な動機で判断してしまう時が、人間にはあると思うんです。
人の数だけ個人的な動機があって、それが複雑に絡み合っているのが社会なんです。
IDMC委員も30人の人間だと考えることも重要なのではと」
・「IDMC委員たちの動機って、恨みとか理想とかじ
...続きを読むゃなくて…上下関係ってないですかね?
働いている場所も仕事も違う30人が一致する動機を探してましたけど、もう理由とか事情とかないのかも」
・「医学界って医学部から徹底して年功序列世界ですから…他業種から見たら異常なくらい。
その状態を常識だと思って疑わないから、中熊先生伝ての脅しが効くと思ってる」
・「…笑うわ。上に阿って30人が同じ意見ってこと」
「治験を止めさせるような意思もないから、延々と治験を先延ばしにさせてる…?」
「IDMC委員の選考事態に誰かの意図が働いているってことか」
・「…老いだ。小さくまとまってしまったもんだな、丸山君も。
彼らはなぜこうなってしまったと思う?間瀬君」
「…僭越ながら10年後の未来を見るより、目の前を過ぎていく数日間に価値を感じてしまうのでしょう。患者のように。
だが医者と患者は違います。目を失った医者を救う術はありません」
・「ははん、こいつは政治家タイプだな。丸山は自分の発言に縛られてんのよ。
自分がクサしたJS1が治験でどんどん性能を証明して、自分が言ってしまったこととのギャップがどんどん広がっていく。
元東都大病院長様のプライドが、間違いを認められねえんだ。真っ赤にしている顔が見えるぜ。
現実を捻じ曲げてでも恥をかきたくねえんだ。この先生、ガキだな」
「…これが悪党か」
「違うよ、岸先生。こいつはどこにでもいるような人間だ。この世に確信犯的な大悪党なんかいねえのよ。
そこには無数の保身があるだけなんだ。ひとりまたひとりと連鎖して、でたらめな結果に行きついちまう」
・「僕の頭の中には中熊先生がいてさあ、稲垣先生も、高柴先生も、若乱会も、比日野もいる。
みんなから、お前はそんなものかと突きつけられてる。IDMCのやつらの頭の中には誰もいないんだろうな」