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六十歳を前に、離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。わが身を振り返り「人間愚行(フォリーズ)の書」を書く事を思いついたが、街の古本屋で甥のトムと再会してから思いもかけない冒険と幸福な出来事が起こり始める。そして一人の女性と出会って……物語の名手がニューヨークに生きる人間の悲喜劇を温かくウィットに富んだ文章で描いた家族再生の物語。
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Posted by ブクログ
突然のポール・オースターの訃報を聞き、長年積読状態だった本書を手に取りました。難解と思い込み本棚で眠っていましたが、オースターってこんなに面白かった?と思わせる小説。10ページ弱のエピソードが怒涛に展開してとても読みやすい。「アメリカ文学」って高尚に構えるのではなく、日本の小説ではないアメリカ的な...続きを読む「物語」を読んでいる、引き込まれて行く感覚。 結局、人は一人では生きられない。誰かとの繋がりを求めている。オースターの小説の登場人物は、高度資本主義かつ大量消費社会に馴染めないインテリの男が多い。本書もしかり。人間は愚かな生き物だけれども、だからこそ魅力的でもあり愛すべき存在。 もちろん読みやすいのは柴田元幸氏の翻訳のおかげ。感謝したい。出版されて12年も経ってからの初読。是非多くの人に読んでもらいたいオースターの物語の魅力が満載の傑作。
お気に入りの本になった! 波瀾万丈あるけど、喜劇的な要素が多く、悲しいシーンでも文章にユーモアがあり面白いから楽しく読めた。 主人公ネイサンは基本的には他の登場人物たちを手助けするような立ち回りだったけど本人もしっかり作中で成長していて、人生の明るい部分を思い出させてくれるかのようなお話だと思った。...続きを読む ポールオースターを読んだのは冬の日誌/内面からの報告書に次いで2回目。なのでまだ多くを語れる立場ではないけどこの人の書く文章や感性が好きだなと思う。
人生そのものの価値を改めて感じさせる物語。 ストーリーも愉しいけれどどこを読んでも面白い語り口が気持ちいい。
すごく面白かった。ウディ・アレンの映画みたいだなあと思いながら読んでいました。 最後の方で出てくる「本の力をあなどってはならない。」がすごく沁みた。そして死について考えてしまった。 これを機にオースター作品で未読のものを全部読もう。
会社を休み、休んだことを家族に伝え忘れたものの家にいても家事をするだけになりそうなので、この本を持って家を飛び出して読みはじめた。 六十歳手前で離婚し、静かにこれまでの人生の「愚行録」を記して暮らそうとするネイサン、甥っ子のトムとトムの上司に偶然出会ったことで、人生が不思議で豊かに動き出していく。...続きを読む ユーモアに溢れて、それでいて切ない。 生活をする中、これまで生きてきた中で突然出会った「物語」の断片、さらにその日々の中でトムと一緒に巻き込まれた出来事が描かれる。 Twitterで日々の下らない事件を呟く自分も、質は違えど同じようなことをしている気分になる。ちょうどこの本を書店のベンチで読みつつ、本屋のあるコーナーで手に取った本にも「物語に突然出会うこと」について触れられていた。昨日と同じようで違うちょっとしたことで日常の繰り返しから抜け出し、物語を見出そうとする。 (このあたりで奇跡でも起きたのかも?とか出会った本を買う口実にしようとする…) どちらかと言うと、そういう物語にしか興味が湧かない。たとえそれが消費者に対するビジネスの付加価値として利用されるようなものであっても、そういう物語を見つけたり知りたいと思ってしまう。 作者がどの様な意識で作品に臨んでいたのか少しだけ解説で触れられているが、まったく前知識なしで読んでいたのは正解でした。 読んでいて笑ってしまうこともあったし、その分心に残った「切ない」という言葉だけでは言い表せない。 出会えて良かった本です。 読んでから数日後も、例の件のことを思い出して「ブルックリンフォリーズ」は本当はもっとたくさんのヒト一人一人にあったんだろうな…と考えてしまいました。
ある人の人生から誰かが去り、新たな誰かが現れ、そしてまた去っていく。誰にとっても人生は出会いと別れのつづら折りであり、本人を含めそこに登場し退場していく人物の大半が、名もなき人間たちだ。 2005年に発刊された、2000年のブルックリンを舞台に始まるこの小説は、その舞台設定から予想されるゴールに確か...続きを読むに到達してしまうが、それでも、あるいはだからこそ、名もなき人間たちの、ジェットコースターめいた涙と笑いの日々を描く朗らかで彩度の高い作品となっている。人生の終着点を探すつもりで生まれ故郷のブルックリンに戻ってきた60歳目前の男・ネイサン。彼がふとしたことで再会する、失意の中にいる甥にして元・秀才文学研究者、トム。強烈な個性と訳アリの過去を持つ、トムが勤める古書店のオーナー・ハリー。トムが毎朝あこがれを持って見つめるBPM(ビューティフル・パーフェクト・マザー)ことナンシー。一つの出会いが新たな一つの出会いを呼び寄せ、時折そこから抜け落ち消えていく人たちもありながら、いつしかネイサンを起点に、鎖のように人の輪が繋がっていく。あたたかな居場所を生み出す出会いは偶然か、運命か。少なくとも、一歩を踏み出すことでしかつかめないものではあり、人生の終末に備えるつもりでありながら、終末までは「生きなくては」「何かしなくては」と腰を上げたネイサンだからこそたどれた道筋だと思う。 ネイサンが始めたものとは、『人類愚行の書』プロジェクト。過去から現在にわたる、自分、知人、知人の知人、歴史上の人物等々の失態や恥ずべきドジなど『愚行(フォーリーズ)』を記録し、編纂するという計画だった。名もなき人間たちの、伝記や公的記録には決して残らない小さな、けれどその瞬間には強烈なインパクトを残した人生の断片。そこに目を向けた時から、ネイサンはすでに人の輪の中に、未知の人々に繋がる鎖の一端に結び付けられていて、そこから物語は季節と共に場所や登場人物の顔ぶれを変えながら、進んでいく。 名もなき人間たちの、記録に残されるほどでもない人生たち。 笑い、泣き、困難に立ち向かい、挫折し、悲しみに沈み、それでも予想外なタイミングで喜びが舞い込むこともある。一言で言えば、「平凡だけど幸せだった」と表現できるであろう、あまたの人生。 記録に残されなくても、無数の中の一つに過ぎなくても、その一つ一つの生にどれだけの感情が、人の輪が繋がっていることか。 アップダウンの激しい、けれど最終的に明るく幸福な、テンポの良いこの作品を読み通したラストページ、ラストセンテンスに、そのことが万感の思いをもって胸に迫ってくる。
四半世紀前とはいえ 様々なルーツ、嗜好、職業や考え方をもつ アメリカの、リアルな、普通のひと達の描写がとても魅力的でした。 名前削除、のバッサリ感や オーロラのご主人のイッてる感じにも笑える。 こういう、笑ってる場合じゃない場面で楽しませるのがエンターテイナーですね。
ブルックリン・フォーリーズ訳すとニューヨークブルックリンの愚行。オースターの本は始めて読んだ。450頁ほどの本だけど最初本の世界に入っていくのは難儀でした。 60過ぎて癌を患い、離婚して昔住んだ町ブルックリンでひとり余生を隠居しようとした町での、様々な人たちとの遭遇で色々な経験をしていく主人公を描い...続きを読むている、中高年の本です。
ブルックリンで晩年を過ごそうと引っ越してきた、失意の男性。だけど…? ユーモラスに、成り行きが描かれます。 60歳のネイサンは癌にかかって会社を辞め、妻とは離婚。娘とはうまくいかず、親戚ともほぼ音信不通。 いくらか思い出があるブルックリンを終の棲家に選び、自分のこれまでの愚行を書き記して過ごそうか...続きを読む、などと考えていました。 街の古本屋で、甥のトムにばったり再会。これが親族では一番気が合う甥だった。 トムから繋がってご縁が転がっていき、トムの妹や娘や母、古本屋の主人など、思わぬ出会いと楽しみが増えていくのです。 やや上手く行き過ぎ?だったり、中年?男の身勝手さが垣間見えたり、というところも、ユーモアに包まれてます。 熟年同士の恋愛まで恵まれて‥ 意を決した時の、彼女の余裕の反応が傑作。 ポール・オースターは何となくもっと難しい作家のような印象があったのですが。 レビューを見て面白そうと読んでみた、これは読みやすい。 それもだいぶ前だけど、おススメしておきたくて。 ポール・オースターは他に何を読んだのかは、いまだに思い出せません(笑)
魅力的でカラフルな人物たちが登場する。語り手がいるが、群像劇と言ってしまってもいいかもしれない。 特に楽しみもなく暇をつぶしながら老後を過ごすつもりだった高齢男性が、甥に久しぶりに再開したことをきっかけに突如人間関係が広がり、さまざまな事件が起こり、考え方がポジティブに切り替わっていく。まあ、楽しみ...続きを読むながら読める。 フォリーズ(Follies)とは「愚行」という意味で、たしかに登場人物は愚かなことばかりしているように見えるが、愚かな行為は悪いことというわけではないよね。 多様性に肯定的だが、唯一カルト宗教に関しては強い否定的な書き方をしている。
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