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世界中の子どもと大人が読む18世紀の英国の名作を、実力と人気を兼ね備えた柴田元幸が、見事に翻訳し注釈する。小人国、巨人国、空飛ぶ島ラプータ、馬たちが暮らす理想郷。次々と起きる出来事、たっぷりの諷刺、理屈ぬきの面白さ! 朝日新聞好評連載の書籍化。
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Posted by ブクログ
『脚注14)したがって「普通」の人間とリリパット人との身長の比は、約十二対一ということになる。容積・体重で較べれば一七二八対一。ちなみに「ガリバー旅行記」刊行の一七二六年に書いたある手紙で、スウィフトはイングランドとアイルランドの富の格差を十二対一と見積もっている。イングランドによるアイルランド抑圧...続きを読む、というテーマは「ガリバー旅行記」全篇を通じて見隠れしており、ここにもその気配を見てもいいかもしれない』―『第1部・リリパット国渡航記』 昔、岩波文庫版で読んだ記憶が微かに残っているけれど、子供向けに構成された物語に比べてひどく読み難い(日本語が、という意味ではないです)本だなと思った覚えがある。小学生の頃には「ほら男爵の冒険」とか「十五少年漂流記」とか「ロビンソン・クルーソー」とか、子供向けに書き直された本は随分楽しんだが、後年「ガリバー旅行記」で味わった違和感のせいか、この類の本をきちんと読んだことはないなあ、と妙なことを考える。そう言えば「ガリバー旅行記」を読み直そうと思ったのは沼正三の「家畜人ヤプー」を読んでのことだったけど(なので、ませた思春期の頃の話)、こちらも強烈に読み難かった印象だけが残っている。 そんな本を柴田さんが翻訳? 米国文学じゃないのに? と思いつつ、本棚に並ぶ本書を眺めてちょっと驚いたのだった。 まずは当然のことながら、とても読み易い(日本語が、という意味です)。そしてそれにも増して、少し多めの脚注が大変ためになる。というか、300年前の日本が鎖国をしていた頃の英吉利人の常識や考えなんて判る訳ないので(但し解説にある通り文章自体は明快)、こういう翻訳者の囁きのようなものは必須なのだな。変な話だけれど、この脚注の頻度の適度な事といい、語り口といい柴田さんの個性が出ていて、ツアーガイドを伴って見知らぬ場所を旅するような感覚を味わえるのも本書のよいところ。そして最後の解説は長旅を終えた後に読むと沁みること間違いなし。 『詐欺は窃盗より重い罪と見られており、死刑にならないことはめったにありません。しかるべく手を尽くし、目を光らせ、常識をはたらかせれば、財産を泥棒から守ることはできるかもしれないが、たちの悪い狡猾さを敵に回したら、正直さなど何の防御にもならない、と彼らは言うのです。売り買いや信用取引が日々為されることは必要だが、その際、詐欺が許容され、黙認されて罰則もなければ、正直な商人はかならずや破滅し、悪党が得をすることになってしまう、と。私は一度、主人から仕事で預けられた大金を持ち逃げした罪人を、帝に向かって弁護しようとしたことがあります。情状酌量になるかと、要するに信頼を裏切っただけではありませんか、と申し上げてみたところ、何より重い罪を擁護するとは何事か、と帝は甚だしく憤慨なさいました』―『第1部・リリパット国渡航記』 ともすると、アイロニーというか反語的というか、如何にも著者ジョナサン・スウィフトの厭世的な視点での物言いが印象に残りがちで、こちらもそれに釣られてつい自分自身のことを棚に上げて人間の嫌な本性のことをあげつらいそうになるけれど、意外にも(正に意外にも)スウィフトは人間嫌いではなかったとか、実は聖職の座に執着していたとか、その辺りの事情を判った上で抱く印象というのも案外と悪くはない。同時代人にとってどんな風に受け止められていたのかがほんの少し気になるけれど、300年近く前に書かれた本であるのに「解説」にある通り、少しも古臭さを感じることが無い。むしろ描かれた人間の本質が余りに変わらないというか、現代にもほぼそのまま当てはまるのを実感して、著者の慧眼に感じ入るばかりだ。人類は啓蒙思想だの社会契約論だのと立派なことを言いながら、産業革命(この著作はそれ以前の作)経て多くの人が豊かさを享受するようになっても、何百年も精神面ではちっとも進歩らしい進歩はしてこなかったのだなあと、どうしても思わずにはいられないだが、そういう業を背負ったものとして物事の善悪を判断するというのはどういうことか改めて考えておかなければいけないね。 全くの余談だけれど、昔バイナリーデータを扱っていた頃、IBM系(観測データに多いタイプだった)とIntel系(データの処理ではこちら)で二分割したデータサイズ(例えば16ビットデータなら1バイトずつ)の前後の順が逆になっているっていうのを知ってちょっと衝撃(マジかよ、よくこれで間違いが起きないもんだな(起きてるのかも知れんけど)、という衝撃)を覚えたのだった。それをエンディアンの違いと言って区別し、IBM系を「ビッグ・エンディアン」Intel系を「リトル・エンディアン」と呼ぶんだけど、それがリリパット国の人々がゆで卵を「頭から割る(リトル・エンディアン)」か「お尻から割る(ビッグ・エンディアン)」で争ったという故事から取られているというのを知って更にびっくりした覚えがある。なので例えばMatlabのバイナリー読み書きのオプションは「b」と「l」なのだなと判ってみると面白いのだ。因みに本書では「尻(割派)」と「頭」とに訳出されている。
子供の頃に絵本で読んだ一部分から、浅はかな想像をしていたが、良い意味で裏切ってくれた小説だった。 ファンタジーではあるが、著者スウィフトの政治や人に関する思想が色濃く反映されている。注釈・解説を見ればそれがより顕著。 人間とは姿形や思想の異なる様々な生き物が支配する摩訶不思議な国に流れ着くガリバー...続きを読む。そういった、実在しない、奇想天外の国への旅行記と見せつつ、当時の英国に関するさまざまなリアルが散りばめられている。
何より面白かった 訳者のセンスある注釈で説明される皮肉とか暗喩が楽しくて楽しくて 人にフォーカスしてその感情描写を精緻にするみたいな文学感をいい意味で感じなかったので勢いで読めた
朝日新聞で連載されていた翻訳の単行本化。連載で読むのはもったいなくて、書籍になるのを待っていた。 注釈が多いので、読むのが大変だなと連載時には思ったが、世相や権力への皮肉が込められている内容が多く、注釈がなければ意味が分からないところも多い。この本には、青空文庫では得られない喜びがある。 ガリバ...続きを読むーはどの国に行っても王、帝から寵愛を受ける。まあ、そうしないと生き抜いていけないわけで、ストーリー上困るからだろうが。 しかし、何度も難破したりして訳の分からないところに流れ着いて、その度えらい目にあうのに、まったく家に居つけないガリバーは異常だ。こんな亭主を持ったら、大変である。 最後は嘘をついたり人を騙したりするという概念のない馬が高い知能で統治する(というか我々人間のように君臨する)「猿の惑星」の馬版みたいな国で、その馬に感化されてしまう。イギリスに戻ってもヤフー(馬の国にいた野蛮な人類、イギリスの家族もこれに含まれてしまった)と席を同じくできなくなってしまい、こんな亭主追い出したらいいのにとも思ってしまった。 第3の国で開陳される、奇妙奇天烈な研究描がやたらおかしい。数学院でウエハースに命題と証明が書かれ、これを消化して命題が頭に上る、という研究が出てくるが、これって「暗記パン」じゃないかと驚いた。 そして、ヤフーは沼正三『家畜人ヤプー』と繋がる。翻訳者柴田元幸は「正当な末裔」と解説で書いている。 日本で言うと江戸時代より前に書かれた書ということを忘れてしまう、素晴らしい小説である。
当時のスウィフトや時代の考え方、物の見方が感じられて面白かった。やはりこのような古い名作を読んでいかないとと思った。
ガリバー旅行記は、子供のころの 絵本でしか読んだことがなかったです。 小人の国だけの話ではなかったのが 驚きました。 ただ、少し読みづらいというか、何がいいたいのか わからない感じの内容です。 最後の馬の国はなかなか面白かったです。
思ってたより書かれた時代が前。今では異世界転生めちゃくちゃあるけど、そういうお決まり一切ない時代にできた異世界生活の話。目次見てまずびっくりした。大体書いてあるじゃん! 解説が充実してる。痒いところに手が届くって感じで無かったら得られる情報半分以下になってたかも。黒後家蜘蛛の会読んでからアイザックア...続きを読むシモフを知り合いだと思ってるので、アシモフの注釈を引用してくれるの嬉しい。一緒に読んでる気分になる。 どこの国行ってもイギリスの腐敗した政治を人間代表みたいに語るのやめてほしい。他に漂着する人滅多にいなさそうだから、多分今でもめちゃくちゃな世界として伝えられてると思う。流石に仕組みはもうちょっと進化してる。 日本に来るくだり短いけど面白かった。この本自体が古すぎて日本がまだ江戸時代っていうので既に面白い。やっぱ踏み絵嫌なんだ。 どの国行っても影響されすぎじゃないかと思うけどそういうギャグ助かる。最後、完全に自分をフウイヌム側だと思って、妻子まで汚らしいヤフー呼ばわりしてた。こんな分厚い本なのに終わらせ方そんな感じ?笑
期待通りの面白さ! 旅行記なので物語というより、不思議な国に行った記録のような書き方。当時の習慣や歴史的背景の知識について、ページの端っこに補足があるのがうれしい。それも事細かではなくて、知ってると面白くなる程度の軽い内容で書かれているのでストーリーを読むときの邪魔にはならない。 当時の常識なので...続きを読む今さら批判しても仕方ないけれど、妻の社会的地位は圧倒的に夫より低かったんだなあと分かる。好きな時にフラッと妻子を置き去りにして数年間旅行にでかけて、帰ってきても再会を喜ぶどころか頭がおかしくなってる旦那を、それでも献身的に出迎えないと生きていけない妻。金持ちの旦那でお金には不自由してないみたいだから、当時の女性としては良い暮らしだったのかな?他にも他国民への偏見もかなり痛烈に書かれている。そのあたりは物語の本質ではないので、当時はそんな感じだったんだ〜と雑学的知識として興味深く読んだ。 複数の不思議な国を旅して、最初は道徳心や愛国心あふれる男だったけど、最後は人間嫌いになって終わったのは意外だった。他の世界を見て自分の視野を広げていくほど、人間という生き物の醜さが際立つ、ということかな。 それとも多くの世界を知れば知るだけ、周りよりも卓越した視野を持ってしまうから、それまで満足していた世界が急に物足りないちっぽけな存在に見えて大切に出来なくなってしまうということ?
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