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その時、夫は妻を抱きしめるしかなかった――歌人永田和宏の妻であり、戦後を代表する女流歌人・河野裕子が、突然、乳がんの宣告を受けた。闘病生活を家族で支え合い、恢復に向いつつも、妻は過剰な服薬のため精神的に不安定になってゆく。凄絶な日々に懊悩し葛藤する夫。そして、がんの再発……。発病から最期の日まで、限りある命と向き合いながら歌を詠み続けた夫婦の愛の物語。
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Posted by ブクログ
歌人・永田和宏が、同じく著名な歌人で配偶者の河野裕子の生と死を見つめる一冊。乳がん発症と闘病、その間の苦悩、再発後、晩年に至るまで、まさに、生と死を見つめ、悲嘆から再生への道行きが綴られた一冊。最後の一首、「手をのべて」のくだりは心が揺さぶられます。 悲嘆が恐怖に近しいということがほんとうだと感じ...続きを読むられるかもしれない。 寂しい人間にとっては、身を分けたと思える、孤独を癒し続けた伴侶と引き剥がされることが、そして1人残されることが、死ぬほど寂しいのだと思う。それを思うと、恐怖以外の何ものでもない。
本書の副題は、「妻・河野裕子 闘病の十年」である。筆者の永田和宏と妻・河野裕子は、いずれも有名な歌人である。河野裕子の場合には、歌人で「あった」というのが正しい。河野裕子は、2000年に乳がんが見つかり手術。それが2008年に再発、そして2010年に亡くなられている。副題にある「闘病の十年」は、乳が...続きを読むんの発見から河野裕子が亡くなるまでの10年間のことである。本書は、「波」という雑誌に、永田和宏が2011年6月号から2012年5月号にかけての1年間連載したものを書籍化したものだ。河野裕子が亡くなったのは2010年の8月のことなので、妻が亡くなってから、おおよそ1年後から、更に1年間をかけて書かれたものである。 永田和宏と河野裕子は、愛情の通い合っていた夫婦であったが、それでも、この闘病記は、愛情と悲しみだけで構成されている訳ではない。もっと生々しい。乳がんの手術後、河野裕子は、過剰な睡眠導入剤の服用により、時々、精神の平衡を崩すようになる。実際には、平衡を崩すというような生やさしいものではなく、毎日毎日、夫の永田和宏を罵倒し続ける。それは、永田和宏にとって、ほとんど恐怖の日々であったことが、本書に書かれている。しかし、幸いなことに、良い精神科の医師に診てもらうことが出来、また、再発を告げられてからの河野裕子は、逆に精神の平衡を取り戻す。そのような凄絶な日々でもあったことが、記されている。 2008年に再発し、その後、抗がん剤治療を続けるが、病状は良くならない。ある時点で(というか、実際には再発を医師に告げられた時点で)、2人ともに、残された日はさほど多くないことについての覚悟を持つ。そのような、「最後の日々」の中でも河野裕子は短歌の創作を続ける。 書名にも引用されている永田和宏の短歌は、そのような日々の中で生まれたものだ。 歌は遺り(のこり)歌に私は泣くだらういつか来る日のいつかを怖る 妻の河野裕子は、日に日に重くなっていく病状の中で必死に短歌を作り続ける。やがて妻が亡くなっても、それらの歌は残る。そして、自分(永田和宏)は、妻が亡くなった後、その歌を詠んで泣いてしまうだろう。それは、いつか来る日であるが、その日が来るのが怖い。強烈なインパクトのある短歌だ。
★5.0 2021.02.09 歌人であり科学者でもある永田和宏氏とその妻の歌人河野裕子氏の最期の10年を綴ったエッセイと短歌の数々。 壮絶と静謐という両極端を夫婦だけでなく家族で過ごす日々が書かれている。 夫婦の深い愛が惜しげも無く描かれており、激しく心を掴まれるものだった。 ↓↓↓内容↓↓...続きを読む↓ その時、夫は妻を抱きしめるしかなかった――歌人永田和宏の妻であり、戦後を代表する女流歌人・河野裕子が、突然、乳がんの宣告を受けた。闘病生活を家族で支え合い、恢復に向いつつも、妻は過剰な服薬のため精神的に不安定になってゆく。 凄絶な日々に懊悩し葛藤する夫。そして、がんの再発……。発病から最期の日まで、限りある命と向き合いながら歌を詠み続けた夫婦の愛の物語。
歌人である妻の乳がんの宣告、手術と恢復に向けた日々、そして転移・再発を経た死去に至るまでを、同じく歌人・科学者である著者が綴ったエッセイ集。 随所で妻及び本人の歌が挿入されるが、その中には自身が病苦を抱える中で、自分の痛みを理解してくれないと映った家族をなじるような歌も多い。 例えば、乳がんの宣...続きを読む告を受けた時期に、夫の表情を描く次のような歌。 「何といふ顔してわれを見るものか私はここよ吊り橋ぢやない」(本書p15) 著者自ら「私のそれまでの人生で、この一首ほど辛い一首はなかったと言ってもいいかもしれない」と言わしめる31文字に込められた重さ。 夫婦の愛の物語と呼ぶのは陳腐すぎるけれども、それでもそうとしか言いようがなく、かつ娘・息子も含めた4人家族の愛の物語としか言えない痛切さに満ちており、読みながら落涙を避けられなかった。
歌人河野裕子さんを私はこの本で初めて知りました。 著者の妻である河野さんが胸のしこりに気づいた夜から亡くなるまでの記録。その闘病の過程にはあまりにも生々しい著者との葛藤もあり、読んでいて辛い部分もありました。それでもだんだんと自らの死を受け入れて心の均衡を取り戻していく河野さんの姿の美しいこと。 最...続きを読む後の数日間は鉛筆を持つ力すらないながらも河野さんが口にする歌を、ご家族が口述筆記されたそうです。 河野さんの最後の一首は 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が 妻として母として娘として、そしてなにより歌人として、最後までほとばしるように歌を詠みながら生きた河野さんの姿に心を打たれます。
歌人であり細胞生物学者である永田和弘氏が、同じく歌人であり妻である河野裕子氏の闘病と死を看取った記録である。乳がんであることが分かった後、妻が夫を責めるところは読んでいても辛くなる。恐らく、河野さんも死を受け入れることが出来なくてどうしようもなかったのだろう。しかし、再発の時には覚悟して、最後まで歌...続きを読むを詠み続ける態度を貫き、家族もそれを支えた。一時期の嵐がなければ、その境地には至らなかったのかもしれないと思うと、必要な試練だったのだろう。そうしたことも含めて、生きるとは、死ぬとは、家族とは、考えさせてくれる良著である。
「歌は遺(のこ)り歌に私は泣くだらういつか来る日のいつかを怖る」 泣いちゃうね。またいつか必ず開く本。いまはいっぱい。ありがとうございました。
久しぶりに歌集を手にとった。言葉の持つ深さに驚く。わずかな言葉でも、こんなにも想いは届くもんなんですね。 永田さん河野さん夫婦の愛情の深さに心温まりました。 #読書 #読書倶楽部 #読書記録 #歌に私は泣くだらう #永田和宏 #歌集 #2016年65冊目
河野裕子と永田和宏。 歌人というのはすごい。短い言葉で日々の気持ちや出来事を切り取って保存していく。 死が近づいて来る日々を、これまでの営みを、夫婦それぞれの目線で振り返る。 当たり前の日常がありがたく感じられ、涙ぐみながら読んだ。
今思えば私は、子どもの頃から短歌には興味があったんだと思う。最初に覚えたのは、菅原道真か崇徳院のものだったか? (覚えたきっかけは『いちご新聞』や『はいからさんが通る』ではあったが・・。) 短歌はふとした時、心にそっと寄り添って、自分ですら言葉にできない思いを気づかせてくれることが度々ある。 いつ...続きを読むからか、新聞の『折々の歌』や毎週月曜日の短歌のページには目を通すようになっていた。 その選者である永田和宏氏(講評が特に好き!)を先に知ったのか、河野裕子氏を先に知ったのか今では思い出せないが、恐らく彼女の闘病が語られるようになってからは、双方ともに注目するようになった。 新聞にも特集が載り、TVでも取り上げられ症状も思わしくない様子が淡々と語られていた。 その河野氏の最期の一首。 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が 永田氏の口述筆記によるものという。 また、永田氏も彼女が亡くなる前に妻亡き後の日々を思って読んだ。 歌は遺こり歌に私は泣くだらういつか来る日のいつかを怖る 詳しく知らなかった私は、長く連れ添った夫婦の間に流れる2人の時間が、歌人としてお互いを尊び、穏やかに労わりあうものだと安易に考えていた。 しかし本書を読めば、それはものを作らぬ自分の、勝手な想像でしかなかったことがわかる。名人と呼ばれる人は様々な経験を経て、無心でものに相対するような枯れた味わいを持っているのではないかと都合よく思い描くのと似ていた。 河野氏が乳がんの診断を受け亡くなるまでの10年間の闘病生活を夫・永田氏の回想と短歌によって語られていく。 ものを作らず、物書きでもない私には想像つかない日常。診断を受けたその日、衝撃を受け打ちのめされた自分を客観視する自分がいて、それを歌に詠む。 先に夫がその状況を知り、本人は淡々としているつもりでも、普段との様子の違いからすべてを悟ったと詠んでいる。 また、手術は成功を収めながらも再発の不安を抱え、家族との均衡が崩れていくことにナーバスになっていき、また、睡眠薬の副作用か、精神のバランスも破たんをきたしていく。 それでも、読む。ときに前後不覚に見えても、どこか冴え冴えとし自分を客観視して。 辛く哀しいきっかけさえも歌に化学変化をもたらし、歌は至高に向かって研ぎ澄まされていく。 もちろん永田氏の歌も、妻の闘病の中で、自らの弱さをさらけ出し、変化を余儀なくされる。 創作する人、アーティストはどれほど身を削って、傷跡から赤い血が流れ出しても止めもせずつくり続けるのか? 誰にも止めることはできず、むしろそうすることでしか生きていかれない。 我々から見たら、破たんとしか思えないほどだ。 今までゴッホや太宰に対して特別だと思っていたことが、当然のことのように思われる。 それほどに、辛く厳しい作業が何か自分を奮い立たせ、人には見えない景色を見せてくれることを彼らは知っているに違いない。 河野氏と、やはり歌人の息子・淳さんや娘・紅さんと関係についても書かれており、この10年間の家族の記録にもなっている。 読み始めたら、本を閉じるのが惜しくて、一気に読んだ。短歌に興味がなくても、一家で病と闘った記録として読むこともできるだろう。それでも、知ってほしい。 歌人・河野裕子を。 いや、読めば気にならないはずはないか・・・。
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