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「後期大江文学の臨界点」――いとうせいこう急進派による無差別テロ計画を知り、実行を阻止するためにテレビで「すべては冗談でした」と棄教を宣言した新興教団の指導者・師匠(パトロン)と案内人(ガイド)――10年後、ふたりは若い協力者とともに活動を再開する。だがその矢先、案内人が元急進派に殺され、事態は急変する。 希求する魂のドラマを描く、感動の長篇小説。
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Posted by ブクログ
長かった。長い道のりだった。しかし、大江健三郎はこのくらいの、ある程度の長さがなければ醸し出されないものがある気がする。だから、この長さは半ば必然的な長さだったのだと思う。途中、面白くて面白くて、一回休憩入れないと駄目だ、勿体無いわ、と思って、休憩入れてまた読んで、というのを繰り返しながら。大江作品...続きを読むには本質的に悲嘆に暮れている人間がいないように感じる。みんな、どこかしら明るい。リジョイス!と叫びたくなる、そういう明るさがある。これでレイトワークは読みきったので、ここからはもうちょっと自由に年代を考えないで読んでいこうか、それとも順番にできるだけ沿って、次は「燃えあがる緑の木」三部作に手を付けるべきか、ちょっと悩む。しかし、一方ではいったん大江を休憩して、他のものをがっつり読みたいっていう欲求もまたある。(10/7/5)
個性を持ったキャラクターがしっかりと配置されていて、ストーリーも飽きさせない。20世紀末の漠然とした不安を顕在化させてやる!と思った人がいてもおかしくないのではないか、と訴えるよう。 おそらくオウム真理教を下敷きに、いやきっかけにこのような集団は本当にいたんではないかと思わされる。それぞれのキャラク...続きを読むターとそれにまつわるストーリーがどのように統合されるか、下巻に期待。
大江健三郎を語りたくって読んでみた。初期からはじまり晩年へとつづく大江作品は多数出版されていて、過去に短編集を読んだ程度だったので、今回は晩年作品の長編『宙返り』に挑戦してみた。レビューは下巻で
"上下巻合わせての感想です。 ある少年(育男)と少女(踊り子(ダンサー))が、奇妙で劇的な出会いをする場面から始まる。その場に居合わせた国際的に活動する画家木津と、少年と少女の3人が15年後に再会し、踊り子(ダンサー)がある教団の指導者(師匠(パトロン)と案内人(ガイド))の住み込みの秘...続きを読む書をしていたことから、木津と育男はその教団に関わることになる。その教団は、十年前、急進派による無差別テロ計画の実行を阻止するために、師匠(パトロン)がテレビで「すべては冗談でした」と棄教を宣言し、活動を停止していた。案内人(ガイド)が元急進派に殺されたことから、物語は教団の活動再開へと急展開する。。。 旧約聖書のヨナ書が大きなモチーフとなっている。ヨナ書では、結局神は異教徒の都市ニネベを滅ぼさず、ヨナもそれに納得するように書かれているが、「宙返り」の育男はそれに疑問を感じている。ヨナ書には続きがあるのではないか?神に納得しなかったヨナの行動を考えたい。。。 主要な登場人物の木津が画家であり、ヨナの絵の描写など、芸術的、特に絵画的な感じがする。最初の出会い、ニューヨークの雪の場面、新幹線の車窓、最後の桜など、印象に残る絵画的、映像的なシーンは多い。 木津、師匠(パトロン)、案内人(ガイド)、踊り子(ダンサー)、育男、荻青年(普通の青年の役割?)を中心として、他にも、心に傷を負い、様々な個性を持った人物が登場し、主に信仰について語りあう。それぞれがとても饒舌。 師匠(パトロン)と案内人(ガイド)、木津と育男2組の相棒関係(この表現は妥当でないかもしれないが)もインパクトがある。 私はこの本を読んでいくうち、特に木津と師匠(パトロン)とたくさん話したような感覚で、結末がとても悲しかった。 この本は、1999年に刊行された。さすがは大江さん、「1Q84」よりも「教団X」よりも誰よりも早くあの教団をモチーフにした小説を書きあげたのです。
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