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Posted by ブクログ
女流文学賞
今さらながら有吉佐和子の不朽の名作というものを読むが、さすが素晴らしかった。
一文一文、練り上げられたであろう文章。
なのに!新潮文庫がそれを台無しに!
巻末に17ページにもわたって注解というものがついているのだが、それを無視すればいいのに、いちいち巻末を見てしまう私。
稽古事、刑死体、側室、仁術、写本、小姑、十八番、などなど、読者を馬鹿にしているのかっ!と思うような単語にまでいちいち解説しているのである。
そのたびに流麗な文章が中断してしまう。
途中で、数ページまとめて読む方法に切り替え、少しましになったが、これは国語の教科書なのか!
その割に、最後の方で出てくる、華岡青洲が書いた漢文や、杉田玄白の書いた候文の書状などは注釈が殆どなく、古文が苦手な私は、これこそ訳してほしかった。
さて、内容であるが、絶世の美女である、外科医華岡青洲の母と、幼少の頃からその人に憧れて嫁入りした妻との闘いを描く。
華岡青洲といえば、世界最初の全身麻酔による乳癌手術に成功した紀州の外科医。
愛する息子または夫の麻酔剤の完成のため、自分こそが麻酔剤の人体実験に挑むべき、というところまで行きつくのだった。
表面的には、相手を慮って、自分が犠牲になって麻酔剤を飲むと言い張っているように他人からは見える美しい光景なのだが、心の中はドロドロ。
救いは華岡青洲がそういったバトルに無関心で、優しかったことかな。
札幌に子孫が経営する華岡青洲記念病院があるのは意外だった。
Posted by ブクログ
華岡流医術の生みの親としてその名を馳せる華岡青洲の妻、加恵のお話。
加恵は天明2年、華岡家へ嫁ぐ。(21歳前後)
京都へ遊学している夫に代わって迎え入れてくれたのが、青洲の母である於継(おつぎ)だった。
於継は美人で賢く、何をしても髪の毛1本すら乱れない完璧な人だった。
加恵はそんな於継を羨望の眼差しで見ていた。
義娘である加恵に対しても、実の娘のように接してくれた。
しかし、夫(於継の息子)の帰郷と同時に、於継の態度に陰りが出始める。
青洲の愛を巡って、2人の間で繰り広げられる女の戦い。
静かな軋轢は日を追うごとにエスカレートする。
遂には体を張って…
この時代に「嫁ぐ」ということが、全く血の繋がりのない人間が一家で暮らすということが、どれだけ孤独で、過酷な事なのか物語っている。
於継も同じ道を通り、耐えてきたのだろう。
常に緊張感をもって生きてきたのだろう。
だからこそ、最愛の長男だけは誰にも取られたくなかったのかもしれない。
最後に、医学の発展に関与した人々に心から感謝したいと思った。多くの人間や動物たちの犠牲の元、現代医療があるのだと考えさせられた。
Posted by ブクログ
有吉佐和子さんの小説は外れがないです。
今回は姑と嫁という普遍のライバル関係を描きながらも、息子が医術の学びから帰京した瞬間に母の嫁に対する態度が変化したり、息子が母よりも嫁に尽くす態度に嫉妬の炎を燃やしたりと、姑目線、嫁目線で感情が変わって行くさまを、リアルに描いているところが秀逸です。
この時代ならではの家を守る、後継を産むという「家」の繁栄が全てだったからこそ、逃げ場のない空間の中で、女には女のシビアな戦いがあったのでしょう。
しかし、麻酔のない時代、こんな大変な想いをして、今の医学の礎を築いてこられたのですね。そこを学ぶことができただけで、価値のある本です。
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