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美しいばかりでなく朗らかで怜悧、文学的才能もゆたか、類まれな女主人・定子中宮に仕えての宮中ぐらしは、家にひきこもり、渇き喘いでいた清少納言の心をいっきに潤して余りあった。男も女も、粋も不粋も、典雅も俗悪も、すべてがあった。小さな身のまわりの品、事象を捉えて書きつけた『枕草子』。平安の才女・清少納言の綴った随想を、千年の時を経て、今清少納言・田辺聖子が物語る、愛の大長編小説。
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Posted by ブクログ
清少納言の生涯を描いた傑作。 なめらかで自然な文章で、すっかり引き込まれました。 歌人として評価されていた家系で、清原元輔の娘。 本名は不明だけど、この作品では海松子(みるこ)。 父親っ子で当時の女性としてはレベルの高い教育を受けていた。 橘則光と結婚。 この作品では、他の妻が産んだ子供を育てる...続きを読むことになっています。 (当時は複数の女性との関係は普通で、正妻は一番身分の高い女性になる) なさぬ仲の子を育てるのは史実ではなく、作者自身の経験に引き寄せたもののよう。 ただ当時のことは正確な資料が残っていないので、絶対になかったとも言いきれないですね。 10年則光に捧げたから、この後の10年は自分のために使いたいと宣言し、則光がそれを受け入れることに。 田辺聖子さん自身は結婚前から作家だから、そんなにきっぱり分かれる人生ではなかったろうと思いますが、清少納言の場合は‥と思い巡らせたのでしょうか。 武骨で風流を解さない夫とは合わない部分があったが、宮中に上がっても意外に縁は続くことになる。 則光は何かと心にかけ、清少納言がほめられると嬉しかったと伝えに来るのだ。 離婚したのではないのかとからかう周囲に、則光は兄妹のようなものなのだと答え、それが通るように。古い表現では妹背というと夫婦になるから、微妙なところ? 宮中で中宮定子に女房として仕えることとなり、美しい盛りで教養があり朗らかな定子に魅了され、自身もお気に入りとなって楽しい生活を送ります。 定子の実母は藤原家の正妻になるにしては身分は普通な受領階級の出だが、個人的に教養が名高かったため、気さくで知的なのは育ち方だったようだと。 定子の一家を見守る描写、いわば敵方である道長の人物を冷静に認めるあたりも。 とっさに機転が利く性格の清少納言は、貴族の男性とも丁々発止とやり取りがあり、恋愛もいくらかはあったよう。 時には誤解されつつも、水を得た魚のようにいきいきと宮廷生活を泳いでいきます。 はたして、後半は。 定子の実家が没落し、道長の世になっていくので、辛そうですが‥? 「枕草子」はそんな状況の定子を慰めたい気持ちもあって書き続けられたもの。 主従のつながり、一途な思いは感動的でしょう。
今まで生きてきた中で感じてきたことがあるであろう、言葉にならない感情をうまく言葉に表し、読み手であるわたしに感動を与えてくれました。 まるで目の前で起こっているかのような宮中の出来事の描写が本当に素晴らしいです。 清少納言や彼女を取り巻く周りの存在がますます大好きになります。 下巻も楽しみ。
久々に再読。やはり面白く、胸を打つ。 細やかな感性を写しとると同時に、別れの物語でもある。実際の清少納言がどんな人物だったのか、そんなことは些細な問題で、作者の枕草子への愛が伝わってくる。 (2013.2)
清少納言は殆ど知らなかったのだけれど、この小説によって大好きな古典人になった。なんと生き生きと描かれていることか!そして主人と女房との強い信頼関係も深く知ることが出来た。
高校生の頃の愛読書の一つでした。清少納言がすごく生き生きと魅力的に描かれていて、1000年の時の隔たりがあっても、感性・感情が共通するものがあるんだということが驚きでした。源氏物語の恋愛の面倒くささのない、さっぱりしたところが、高校生の自分にフィットしていました。
一千年前のワーキングウーマン&エッセイスト・清少納言。彼女の生きていた王朝時代と現代は、感覚的にかなり近いのに驚きさえ感じます。コレを読めば、古文がもっともっと身近になること請け合い。
古典「枕草子」を現代風な語り口に。どうやら田辺さんと清少納言は共通点が多くあるようで(よそ腹の子供を育てた事とか)田辺さんの一面も垣間見られる気がします。その感覚は、現代とちっとも違ってなくて、共感する部分が多くて驚きます。それから、藤原道隆(道長の兄)一家の栄華物語でもあります。同時に読みたい本→...続きを読む永井路子「この世をば」
古典強化お薦め品その4。 日本三大随筆に数えられる枕草子を、大胆にも小説として翻案。筆者である清少納言をこれほどまでに生き生きと魅力的に描ける作家もちょっといないのではないでしょうか。文字通りに1000年の時を越えて、 「好きと嫌いをはっきり言える、自我の強いヤなおばさん。だけど自分の憧れであっ...続きを読むた定子中宮に対しては、純真に真心を捧げつくした」 清少納言の生きざまが、欠点も長所も含めて鮮やかによみがえってきます。
懐かしいです。 何年ぶりに読んだのやら。 清少納言が生き生きしています。 こんな世界、いいなぁ~と思わせてくれる。
『枕草子』を長編小説化したものだそう。 『枕草子』自体を読んでいないので、 どこまでが田辺聖子さんの解釈・創作なのかわからないけど、 清少納言の考えていることは共感できたしとても面白かった。 『枕草子』自体でも、清少納言がこのような考え方を 述べているんだったら、こんなに時代を経ているのにすごいなっ...続きを読むて思う。 小説の書き出しや、途中途中にわざわざおどけて口語で表現してみた、 というような筆致が、好みではなかったけれども、 それが気にならないほどに内容は充分読み応えがあった。 清少納言は、自分の考えや好みなどに精神的な繋がりを、 他人との間に見いだせた時、とても嬉しそうに輝いている。
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