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Posted by ブクログ
シーボルトと長崎丸山の遊女お滝との間に生まれたイネの生涯を描いた幕末期の歴史小説。
上巻はシーボルトとお滝の馴初めから、イネが単身、学問を捨てきれず、シーボルトの弟子であった宇和島藩の医師二宮敬作を訪ねるところまで。
江戸時代の長崎、出島の様子、また、そこに過ごすオランダ人の生活、遊女との関係等が詳細に描かれ、史実を理解する上でも一読の価値あり。
シーボルトはヨーロッパに日本を広めた貢献者でもあるが、その原動力が飽くなき好奇心であることが読み解ける。
また、それはイネにも引き継がれ、親から女性は学問が却って邪魔になる旨を言われながらも、学問を続けることの意志の強さを持ち続ける。
Posted by ブクログ
シーボルトと言えば、日本に西洋医学を広めたことと、シーボルト事件という歴史の授業習った程度しか知らなかったのだけど、この壮大な歴史ドラマにただただ感動するばかりでした。しかし1400ページの大作に読むのはかなり難儀(笑)。大河ドラマにでもしてほしいくらいだけど。
シーボルトが日本に来たのは1823年、文政六年。長崎で裕福なこんにゃく屋を営んでいた家の娘・お滝は、雇いの者が店の金に手を付け商売が立ちいかなくなったために、遊女として売られてしまいます。もともと美しかったお滝は、出島でシーボルトの遊女となり、2人の間にお稲が生まれますが、シーボルトは日本地図を国外に持ち出そうとする罪で国外永久追放になってしまいます。
残されたお滝とその子お稲は、縁あって時治郎に嫁入りするのが、1831年、天保2年(つまり米屋を営んでいた米五が味噌を手掛けるようになった年でもあります)。
お稲は聡明で寺子屋でも中心的存在になっていましたが、女子にもかかわらず学問をしたいとお滝を困らせます。そのうち、お滝と時治郎の間に男の子が生まれることで、お稲は家を出てシーボルトの弟子であった二宮敬作のところに学問を習いに行くことになります。天保11年、坂本龍馬が5歳のころです。
吉村昭らしい作風
ドライで淡々としかも詳細に記述する。いわゆる記録文学の典型とも言える作風の作品である。この上巻で多くのページを費やして描かれているのは、フォン.シーボルトその人である。当時の典型的な知識人として、進歩が遅れている日本へ、進んだ医学を伝えると同時に、帝国主義.植民地主義の尖兵として地理的情報 風物情報を入手しようとする。一口に善悪を言い難い彼の言動を詳細に記述している。
Posted by ブクログ
江戸末期に長崎の出島にやってきたドイツ人医師シーボルト。当時の鎖国政策を掻い潜るため、オランダ人と偽って入国活動する。医師として、日本の医術の発展に貢献する一方で、オランダからの指示で日本の国情、地理、経済などを報告するいわば産業スパイのような一面もあった。これが元で日本を追放になる。出島に出入りさせていた遊女を妊娠させ、女児をもうけるわけだが、本書は妻となった女性と、その娘の物語。当時、外国人の子を産んだ女性やハーフの女子がどんな目で見られていたかを想像するととても切ない。男尊女卑の時勢であったとはいえ、この二人の女性のたどった運命を読み進めると、男の身勝手な行動に憤りを感じる。いつの世も、他者に対する配慮、思いやりを持ちたいと思う。
Posted by ブクログ
てっきり「フィクション」だと思って不勉強なままで読み始めたんですが、基本はノンフィクション。随所に著書の創作も盛り込まれているんだと思いますが、登場人物はほぼ100%、Wikipediaで検索したら出てきます。幕末の動乱期における歴史を追いつつ、シーボルトの私生児であった「お稲」の人生を辿る、というのが、この作品への正しい接し方なんだと思います。
上巻は、シーボルトが出島でお稲の母であるお滝(遊女としての名前は其扇)に出会って子を成し、一方で鳴滝塾で蘭学を教えて多くの門下生を育て、その後いわゆるシーボルト事件で彼が国外追放される…といった場面を中心に展開していきます。娘であるお稲の活躍はほとんど見られず、その意味では下巻に向けた壮大な「仕込み」と言えるでしょう。
こういう小説を高校時代とかに読んでおけば、もう少し日本史の授業が面白いものになったかもしれません。そう考えると出会うのがちょっと遅かったなーという感じ。
上下巻合わせて1,300ページぐらいに及ぶ大作ですが、歴史ものに対してアレルギーがないなら、面白く読める作品だと思います。
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