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高校に入学したての相原太陽は、オリエンテーションで独自の「桃太郎」を演出、上演し、絶賛されたことによって脚本を書きたいと思い始める。そのため演劇部に入るのだが、すでに3年生のチームが独占している。そこで太陽は演劇部の「のっとり」を企てて……。演劇部を軸に、絡み合う恋愛、自意識との葛藤、モテない男子のリアルな会話。誰もが自分の高校時代を思い出さずにはいられない、がんじがらめの青春小説!
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Posted by ブクログ
『「あたしは、前に、あんたがやったあの、クラス合宿の、あれとか面白かったな」 「あ、ほんとに」 太陽は嬉しかったので、嬉しくなさそうに言った。』 『判った、よい戯曲は一回読んだくらいでは理解できないのだ。悪い戯曲は説明的なセリフが多いから、一回読んだだけで簡単に理解できちゃうのだ。 俺の戯曲は、た...続きを読むだ読んだだけじゃあ判らないのだ。よい戯曲だから。』 『太陽がマリを天才かも知れないと思ったのは、もちろん、クラス合宿での出し物のこともあるけど、それよりも一緒に芝居をしてみての感想だった。 その駄目出しに対する反応のよさ、掛け合いでの反射神経のよさ、反射の正確さ、間に対する感性、芝居の空気を支配する力。そういったものに対してだ。 ただ、そういう事は今の太陽には正確に分析できないから「すげえ」と思うのみだけど。』 『駄目出しの途中で笑い取るのは簡単で「あのシーンの渡井面白かったね」とか笑いながら言えば、大抵みんな釣られて笑ってくれるのだ。 笑いといっても面白いから笑うのではなく、お互い「信頼してますよ」とか「大丈夫だよ」とか言うメッセージを伝えるための笑いだ。 太陽はそれを多用した。 結果、稽古場には笑いが多く、いい雰囲気になっていると思う。』 『信じるためには疑わないといけないが、疑うのが目的になってはいけない。疑った結果がどうであろうと、最終的には信じるのではなくては駄目だ。』 『皆の芝居も精彩を欠いて見える。 セリフに含みがない。ただ言葉の意味内容しか伝わってこない。 セリフは言葉の意味内容のみを伝えるためのものじゃないと太陽は直感している。意味内容は実は二の次なのだ。セリフが意味内容を伝えるためだけにあるのであれば演劇は要らない。紙にセリフを書いて配ればいいのだ。 意味内容とは別の次元のコミュニケーションがあるから芝居は面白いのだ。』 「それが、なんか、考えてても自転車には乗れない、って言うの。有名なセリフなんだけど」 「あ、知らないですけど」 「そうだから、あのさ、考えてさ、どの筋肉をどうやって動かして、なんか、どういうあれで、どこをどう動かせば、ペダルが漕げるとか、頭で考えてもできないでしょ?」 「ああ、はいはい」 「芝居もそうなんじゃない?」 「でも、じゃあ、なんで自転車に乗れるんですかね?」 「え?」 「考えもしないで、どうやって乗るんですかね?」 「もちろん考えるのも大事だと思うけどね」 「そうですね。でも、やっぱ、考えは端に置いといて、後はもっと考えとは違う体とか感情とかそういうのでやらないと駄目なのかなあ」 「うん、そう思う」 「、、、、でも、まず最初に自転車に乗りたいって思わないと乗れないんだよな」 『不安は去らなかったが、不安を取り除こうとしてくれているという意思は通じたので鈴は少し安心した。』 『「なんか、、、オッパイあるじゃん」 「は?」 「オッパイ」 「あるよ、そんなの、なんだよ」 「超見せてって言った」 「、、、」 「超見せてってなに?」 「、、、だから、、、、しつこく、見せてって言ったら、、、、泣いた」 「おまえ、、ふざけんなよ」 太陽は泣きそうだった。』 『ふざけるな。太陽は自分の目に涙がたまって来たことに気付き、すぐに拭うとばれるので頭を抱えるような仕草をして拭った。 俺だって見たいのに。俺の方が見たいのに。』 『随分いろんなことがあったような気がするけど、楽しかったことしか思い出せない。 泣けと言われれば泣けるけど、泣かない。 泣くのはまた今度にしよう、今は楽しみたい。』 『「そうよあなたなら、あなた服のセンス最悪な上にルックスもあまり良くないけど、脳味噌もツルツルじゃない。もし、運が良ければモテるかも知れないわ」 マリは励ますような語調で、悪口を言う。』 「でも、僕は、ちょっと、多分、本当のことを、本当のことが判りました。結局、自分を評価できるのは自分だけなんだと思います ー 僕は、今回の芝居を最高に評価します」
気が付いたら私もこの演劇部の一員のような感覚でのめり込んで読んでいました。最後にかけての盛り上がり、まさに1つの演劇を見ているようでした。
うひゃー、ゾクゾクした。 劇中劇もしっかり書いてあるので臨場感がありました。 皆と同じで、終わって欲しくない、と思ってしまった。 気が向いたら続きを書いて欲しい。
戯曲を書いてコンクールに出場する太陽くん達。作者が高校生の時に本当に演った戯曲が載っていて、その戯曲の内容はちょっとショボかった。でも男子高校生っぽくてヨイかもw
一体感が増してきた演劇部員。その中で起きる摩擦。舞台は上手くいくのか。太陽を含め、すべての登場人物に感情移入しやすく、最後まで面白く読み進めることが出来た。
自伝的青春小説×演劇論 演劇、ってそもそも恥ずかしいという著者の持論と思春期の過剰なまでの自意識と『モテ』への執着が、論理的にリアルに表現されている傑作。 演劇が苦手な人にこそお薦めの一冊。 記念すべき初戯曲『犬は去ぬ』が読めるのも楽しみ。
この書き方に上巻で慣れたら、下巻は最初から快調に読み進むことができて、おもしろかった。舞台を作り上げるうえでのキモとか、演出家と役者の心の揺れとか、演じるうえで大切なこととか、興味深かった。 ただ、作者が高校時代に書いたという戯曲(作中、みんなが演じる)は、いまひとつおもしろさが分からなかった。実際...続きを読むに動いてこそ…なのかな。
演劇をやっていた著者の文章だからか、この台本みたいな文章は。でもやはりしっくりこない…という気持ちで読み進めたけれど、後半は物語も盛り上がってきて、文章を抜いたら楽しく読めました。戯曲のストーリーを追いかけるのは少し辛かったです。
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濡れた太陽 高校演劇の話
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前田司郎
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