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何が愛で何が青春か?そして旅立つと言っても一体どこへ?主人公の「僕」は大学に通い、さしあたって大きな悩みもなく、健康で何不自由のない生活を送っている。しかし一体なんだこの得体の知れない恐怖は。焦燥感はどこから来るのか。寂しさは?東京生まれ東京育ちの著者による初めての青春小説。
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Posted by ブクログ
何年ぶりかで読み直したけれどやっぱりおもしろい。 私が主人公と同じ大学生だったのは遥か昔だけれど、彼の世界をみつめるちょっと意地悪な視線には共感してしまうし、それをとらえる作者の自意識の記述にはうならされる。 『恋愛の解体…』の方がまとまりは良い。でもオススメ。
感情の表現が生々しい。 現実の延長線上のような夢が出てきたり、夢みたいな少し不思議な現実があったりする。 それでも(それだから?)感情はそういう不安定な不思議さを含めて生々しくて繊細だった。背伸びしない姿勢を感じて、それが素直でよかった。
夢もなく目標もなく確固たる趣味も主張もない。そんなとっても「今風」な大学生の独白。いわゆる「意識の流れ」で読ませる小説。 内面描写はとても上手。実に臨場感がある。 主人公が見た、感じたとおり、読み手にも感じさせる文章力には感嘆させられる。 ふと目にしたものから、考えが飛びに飛んでいつの間にか妙に壮...続きを読む大なことを考えていたり、結局結論が出なかったりするような物思いって、よくあるよなあ。と同感できる。 さてじゃあ、話が面白かったかというと微妙。 これは年代が近い自分からすると、実に「ふつう」な日常すぎて・・・。 いや、最後の美術館のくだりはあり得ないけど、それ以外は実にふつう。 ふつう、ふつうで来て、最後に美術館は意味がよく分からないし、夢に出てくる少女にも答えはない。 何か隠されているのかどうか。ただ読書体験としては面白かった。
「僕は変わる。僕を貫いている確固たるものはなんだ。刹那刹那の僕を数珠のようにつなぐ糸はなんだ。記憶だろうか。人格なんてものが便宜上の言葉に過ぎないことはとうの昔に知っている。(略)僕はあの時元宮ユキとセックスをした自分と、今こうしてセックスをしたときのことを考えている自分が同じ人間だとは思えない。単...続きを読むに数珠をつないでいた糸がぶつぶつと切れて、刹那刹那の僕がころころと分離したにすぎないのかもしれない、いやもとから数珠をつなぐ糸などないのだ。きっと。」 みずからの無意識の世界までさらけ出して、自我の同一性や存在理由についての懊悩とそんな思弁を圧倒してしまう身体的な欲動とのたたかいが生々しく言語化されている。 そして、おのれ自身は変わっていなくても、世界のほうはすっかり変わっていたり、自分が思い描いていたものとは異なっていたりするかもしれない、という無気味さ。 「清潔で落ち着ける場所だと思っていた部屋のじゅうたんをめくって見たら裏にびっしり小さい虫がいたような、それまで何も気付かずに暮らしていただけで、この世界のじゅうたんの下にはびっしり小さな虫がいて、それを知る前も知った後も状況にはなんら変化がないのに、世界は無気味に変わってしまったように見える。」 ビジュアルイメージをまざまざと追体験させる描写力と、そのイメージと欲望との連想がすばらしく、圧巻のラストまで一挙に読み切ってしまった。
前田司郎のデビュー作。現実と夢が入り交じった圧倒的な世界観の中で、くだらなくも切ない青春が繰り広げられる。最初から最後まで衝撃でした。
意味はよく分からんけど嫌いじゃない。 大学生のうちに読んどいて良かったかなと思う。 学内の様子とか和光生にとってはほんともう眼に浮かぶようなので不思議な気分です。
小説なんかによく出てくる、どこにも行き場のないような閉塞感のある学生生活を描いた作品。文体は結構好き。何でもかんでもエロに紐づけて考えてしまう主人公にも結構共感が持てたりして。もうちょっとボリュームがあればなぁ。
青春が永遠に去らない、話。 男女の微妙なもつれとか 桃太郎の描写にあわせた男女の情事とか みんなに知られず絵を描いていた元彼女の個展で見たアレとか ソレが誰のアレで俺のじゃないとか 青くさい話。 五反田団という劇団の主宰がはじめて書いた小説らしいです。 わりと好き。
大学生が読んで感銘を受けるのか? モラトリアムを過ぎ去って久しい大人が読んで思い出す程度じゃないのか? それは定かではありませんが、読んでいるあいだに、大学の友人たちが瞬く間に目の前を通り過ぎていったような気がします。ぐにゃりぐにゃりと泳ぐ魚たち。 大学1,2年生くらいの人たちに読ませて、「ねぇ、...続きを読む自分たちてこんな感じ?どう?」と聞いてはみたい。でも、言葉にされて「えぐられた!」と思うには、いまひとつパンチ不足のような。
愛でもない青春でもない旅立たないのなら 一体なんなんだろう。 でも確かに、この物語では以上のものはすべて否定されている。 そこに残されていたものは、空虚というには 少々グロテスクな自意識の視線と、 それを跳ね除けてあまりある馬鹿馬鹿しいほど神々しい人生だと 言わんばかりのラストだが、これも正直ポー...続きを読むズだ。 その地点に至ってなお、視線は冷めている。 むしろ、それでもなお他者がいるということの 恩寵の方が際立っているが、そこへは旅立たない。 それは不条理な殺人よりも一層タチがわるい気もする。 それは作品の価値に対する評価ではない。 よくこんな物語にしづらい部分を取り上げたものだと感心さえする。 まぎれもなく人生の忘れ去られた裏路地のような物語である。
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愛でもない青春でもない旅立たない
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前田司郎
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