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Posted by ブクログ
1943年発表だが、いささかも古臭さを感じさせない。
本作は、ファンが泣いて喜ぶ名台詞も、マーロウ自身のロマンスも、魅力溢れる脇役やシビれるシーンも、チャンドラーマニアからの人気もあまりなく、いうならば地味な作品に位置する。
けれども、警察権力に傷め付けられながらもストイックに謎を追うマーロウの姿は、ストレートな私立探偵小説の基礎となるスタイルを幾つも提示しており、読まずにおくのは勿体無い。
マーロウの冷徹な視点を通した登場人物たちの造形と、湖畔などの自然や様々な情景での描写力はハードボイルドならずとも、秀れた小説技巧の手本となるべきものだ。すでに完成されていたスタイルはさらに磨き上げられており、硬質な清水俊二の翻訳によって輝きを増す。
情感を抑えた狂言回しとしてのマーロウ。物語的にも、後のロス・マクを想起させる。
Posted by ブクログ
裏で糸を引く意味だと考えても、「湖中の女」が確かに中心人物だと言えると思った。
また、マーロウの「私」視点で書かれてはいるが、地の文からマーロウが考えていることがわかるわけではなく、マーロウが見たものやしたことしかわからないし、そのほかに書かれていることもマーロウとその相手の会話文であるため、読者にわかることはマーロウの隣でマーロウの言動を眺めている場合と同じである。マーロウが気づかないことには読者も気づけないし、マーロウにしかわからないことは読者が知ることはできない。
主観というのは、自分にだけ都合が良いものだということがよくわかる物語である。客観とは、それこそマーロウの顧客がマーロウから得られるものでしかないこともよくわかるいきさつだった。
だが、読者がマーロウについて想像できることはあった。たとえば、「私」は、部屋が長い時間ずっと静かなことを「時が足音を忍ばせ」と表現し、実際にその後の場面で、自分と他人の足音に敏感なことがわかるため、探偵という職業に必要な繊細さを確かに持っていそうだと思える。また、時が足音を忍ばせた直後には、時間の経過を「三十分とタバコが三、四本たってから」と表していることから、「待つ」ことが日常のよくあるできごとであり、たとえ「待たされる」という望まない状況だったとしても、時計を見るのはだいたい30分間隔くらいという、気持ちに余裕がありそうな性格なのかもしれないとも思える。やはり探偵に向いている主人公だと思った。
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