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無罪判決。その時、殺人者はニヤリと笑った――「テレビがうるさい」と近隣の5人を滅多刺しにした男が、泥酔し見知らぬ主婦を背後から殺傷した通り魔が、罪に問われず社会に戻ってくる!! 「心神喪失者の行為は罰しない」という法の下に――。ある殺人者は「やられたほうが悪い。自分は被害者」と開き直り、ある殺人者は「死んだ人間は運命だと思って諦めたほうがいい」と口にする……こうして彼らは、何度も何度も野に解き放たれる! 日本の無法ぶりを暴いた渾身の衝撃作。
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Posted by ブクログ
殺人を犯しても精神がやんでると思わせることができれば、刑が軽くなるどころか無罪放免となり何もなかったように生活することができる。被害者遺族無視の法律。
古本で購入。 「1.心神喪失者の行為は、罰しない。2.心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」(刑法39条) 「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処する」(同199条) この2つの法、特に前者の39条をもって著者が指摘するのは、 「日本は真の意味での近代的法治国家ではない」 とい...続きを読むう、恐るべき実態である。 精神鑑定という茶番により「責任能力なし」と見なされ起訴すらされない、つまり無罪放免となる凶悪事件が後を絶たない。 「事件当時にいかなる精神状態であったか」というフィクション、しかも犯人の「わけがわからなくなった」「殺せという声が聞こえた」などという戯言により、「精神障害」の免罪符を与えるのである。 仮に起訴されたところで、「心神喪失=責任能力なし=無罪」を訴える弁護側と、「正常=責任能力あり=有罪」を訴える検察側の折衷案として、「心神耗弱=減軽」の判決が下される。もちろん、弁護側の主張が通って無罪になることも頻繁に起きる。 精神鑑定を行う精神医学者も検察も弁護士も裁判官も、39条という時代錯誤の法令の前に思考停止し、ヒューマニズムの欠片もない、流れ作業の如き処理がなされる。そこには被害者とその遺族に対する配慮など毛ほどもない。 「犯人は事件当時、心神喪失であったため無罪」と結論付けられ、事件そのものが「なかったこと」にされる。結果、犯人に殺された者は“勝手に”死んだことにされるのだ。 そんな馬鹿げたことがあるだろうか。 世界一犯罪者に優しく量刑が最も軽い国、日本。 犯罪者人格の殺人者が何の治療処遇も受けぬまま、今日も野に放たれる。 これほど胸糞の悪くなる本は読んだことがない。 「国民感情」という(良くも悪くも)「常識」から著しく乖離した、司法関係者の感性に怒りを覚える。引用される精神鑑定人の文章など、そのあまりの愚かさに吐き気すら感じる。 理不尽極まりなく人の命を奪った者がのうのうと生きているとはどういうことだ。本当に死ぬべき人間はそいつらじゃないのか。 この著者の本は初めて読んだが、信頼できるルポライターだと感じた。 日本の抱えるひとつの問題点を知る上で、読んでおくべき本。
刑法第39条の「心神喪失」「心神耗弱」の乱発により、常人には理解できない犯罪が不起訴/無罪/減軽となり、犯罪者はすぐさま娑婆に帰ってくる。2人殺せば死刑だが、5人殺すのは「異常」だから「心神喪失」で「無罪」になる。 また、アルコールや覚醒剤の摂取後の犯罪も、なぜか「心神喪失(耗弱)」が適用され、減軽...続きを読むされる。常識的感覚では刑が重くなるはずなのに、日本では軽くなってしまう! この「異常」な「法治国家」日本の問題点を鋭く抉る日垣隆の秀逸なリポート。第3回新潮ドキュメント賞受賞作品。
常におかしいと思っていながら、一般人にはどうにもならない問題である、「重罪を犯した人間が、『心神喪失』あるいは『心神耗弱』を認められ、刑が減軽されたり、無罪になったりすること」について、多くの事例を挙げながら具体的に踏み込んで検証している、日本のタブーに挑戦した快著。 本書を読んで初めて知ったの...続きを読むだが、検察は起訴前に被疑者の精神鑑定(本来は違法であるそうだ)を行い、心神喪失が認められそうだと判断した場合、被疑者を不起訴とするそうで、その数は年間数百例に上るという。しかも、中にはきわめて残忍で凶悪な殺人犯も多く含まれているというのである。このような事態が起こる理由は、なんと起訴した事件について無罪判決が出たとき、担当検事の出世に響くから、ということだというからあきれる。そのようなくだらない理由で犯罪被害者の人権を踏みにじり、時には命までも奪った者を何のお咎めもなしで世の中に返しているのである。この点で司法は社会秩序を守るためのその機能をまったく果たしておらず、また、加害者の「裁判を受ける権利」すら認めていないことを著者は激しく指弾する。 さて、心神喪失、心神耗弱と認められる状態についてであるが、知的障害、精神障害等が当てはまるものであるということは一般に認知されているところである。ところが驚くべきことに、日本においては心神喪失状態を、加害者自らが招くような積極的な行為、覚せい剤の使用や飲酒による酩酊状態についても認めているというのである。さらに、例えば5人を殺した殺人者について、裁判所が「5人も殺す合理的理由が考えられない」と判断すると「理解不能な犯罪を犯したのであるから、犯行当時は心神喪失状態であった可能性が否定できない」などという、その言こそ理解不能な判断をされるという。まったく恐ろしい国に生まれたものだと、背筋が寒くなる思いがする。 著者はこうした問題を、犯罪加害者の処遇施設が刑務所しかないところに帰結させて考えている。つまり、責任能力がないと判断され、しかし重大な犯罪を犯した者を例えば医療福祉的なアプローチから矯正、処遇できる施設がないということである。そのために、「殺人者は野に放たれ」てしまうのであると。 殺人とは被害者の人権を最大限に踏みにじる行為であるから、人を殺した人間には、基本的に人権はないと私は考えている。昨今増えている言われる老老介護や認認介護などといったような特別な事情がない限り、人を殺す人間は障害があろうとなかろうと、社会において危険分子にほかならない。重罰主義が一部の人権派知識人によって非難される風潮もあるが、彼ら知識人が、例えば通り魔殺人の被害者家族となったら同じことが言えるだろうか。 著者は精神障害者を兄に持ち、弟は少年事件によって不条理に殺害されている。まさに、この点においてただのインテリではなく、精神障害者家族として、また犯罪被害者家族としての当事者そのものなのである。当事者の言葉は重い。本書中でも紹介されているように、世界的にみても異質な日本の刑法は、即刻改められるべきであろう。もちろん、多角的な議論は必要となる。別の角度から障害者の犯罪について考えられている『累犯障害者―獄の中の不条理』(山本譲司著)なども合わせて読まれたい。 私も一国民として、また人の親として、安心・安全に暮らせる国を願う一人である。
重い刑法ってどうなってるの?難しそう、よくわからない…という方に!! 提起された問題を通じて、殺人や強姦などの刑罰の仕組みについて、知ることができます。 …悲しいことに、それらがどれほどアバウトなものであるかということを!
ズシリ、と重たい。 それは著者の思いだけでなく、取材を重ねた中で得た事実にある当事者の現実や歴史があるからだ。 感情的にならずに淡々と書いて欲しいとは思わない。 冷静に整理しても僕には理解できないかもしれないから。 そんな冷静さは出来損ないの法律で十分だ。 被害者の悲痛な思いよりも、加害者の息づ...続きを読むかいが静かに伝わってくる。それは何よりも知っておくべき現実なのだ。
心神喪失者および心神耗弱者の責任能力について規定された刑法第39条。よく精神障害者は罪を問われないとかって聞くけど、これほどまでとは。。。 この本は、精神障害犯罪者が罪を問われず、すぐにシャバに解放され、そして犯罪を繰り返す、という日本法曹界の闇の部分を明白にした筆者の執念のリポートだ。 正直...続きを読むなところ、精神障害犯罪者は病院で服役するみといった間違った知識を自分は持っていた。場所が精神病院というだけで、あくまでも服役しているのだと。ところが、この本を読んで分かったのは、入院は純粋に治療のためであり、服役でも何でもない。だから数ヶ月もすれば退院(釈放でない)して、普通に社会に戻ってくる。そもそも無罪なので刑に服す必要もないし、もっとすごいのは犯罪事態がなかったも同然に扱われることすらあるという。これには本当に驚いた。 加害者側が手厚く扱われる一方で、被害者側が全く救われていない理不尽さは、『心にナイフをしのばせて』とかぶるものがある。こちらは加害者が精神障害者ではなく未成年者という違いはあるが理不尽さは類似する。
昨今、尋常ではない殺人事件や犯罪の加害者が心神喪失や責任能力の皆無、などと言った精神鑑定の名できちんと法に罰せられず社会に復帰してしまう、と言う問題が色々な場で問題提起されていることは良く知ってはおりました。ただ、こんな現状なのか。びっくりしたし、背筋が寒くなる思いでした。 誰でも知っているハム...続きを読むラビ法典の『目には目を、歯には歯を』と言う一文があります。これを教わったとき、目には目をだから目の被害者は加害者に対して目を攻撃できる。けれども目以外の例えば歯を攻撃することはしてはいけない。そういう法律なのだと教えていただきそうだよなあ〜と感心した思い出があります。人を殺した人は自分も法によって殺される、とそう言う報復があるのだと言う事を覚悟したほうがよいのではないかな、と思うのです。重たい問題です。こんな一文ではとても言い切れない問題ですが自分はそう、思うのです。だって人を殺したのだから。自分も殺されたって仕方が無いのではないかな、と。ただ加害者の側に立った場合そんなに簡単に言い切れるのか。薬や諸事情で犯行に及んだのではないか。そう思うだろうなあ。難しい問題です。 ただ精神鑑定と言う鑑定にそんなにお金がかかっているとは思いませんでした。これも税金ですよね… 鑑定ってもう少し科学的なものかと思ってました。各個人で鑑定結果に開きが出てしまうのは精神と言う難しい問題だから仕方が無いのかもしれませんがもう少しきちんとした指針等は無いのでしょうか。 著者も提案している通り、心神喪失の犯罪者にはその犯罪者を受け止める司法施設が必要なのだと思います。そして責任能力が認められたら改めてその罪を償う。そういう形にしたほうがよいのではないか、と言う案に賛同します。自分が知らないうちに犯罪を行ってしまった犯罪者が居るとして、その犯行を本人が自覚しなくては又同じことを繰り返してしまう恐れがあるのですから。きちんとした治療もせず病院に閉じ込めてしまうのも問題ですし、罪の自覚がないまま世間に戻ってしまうのも問題があると思うのです。 この頃の状況は変わってきたのでしょうか。そう願いたいです。死刑執行が大臣が変わると執行されたりされなかったりするという状況もおかしいですよね。死刑が執行されることに対しておかしい、と言うのであれば死刑制度撤廃の運動を行うべきだと思うのです。死刑判決はそのまま報道して、いざ執行されると通例より早いとか執行された人数が多いなどと言う報道もどうなのかなあと思います。 陰惨な事件はあまり覚えておきたくないし忘れてしまいたいのが本音ですが事件が起こった時だけではなく、報道を受け取る側もきちんと判決まで事件を追いかけなくてはいけないのだな、と思うのです。 読み終わって暗くなりましたが読んでよかったと思います。色々と考えさせられました。
「心身喪失的事件のうち八割が不起訴、二割が裁判で心身耗弱が認められて刑の減刑が図られる日本の不条理」 ミステリ小説やドラマでは冷血な殺人犯が警察に捕まると一件落着あぁよかった、である。しかし実際には日本では、凶悪な殺人が、その犯罪が異常であればあるほど心身耗弱のせいにされ、不起訴となったり減刑された...続きを読むりし、収容施設もないため野放しにされ……そして再犯を犯している。レクター博士は日本に来たらやりたい放題である。しかもその事実はマスコミも報道を自粛するため、国民に知られないまま。最近は被害者・遺族の声により状況は少しずつ変わってきているようだが…。読んでいてホラー以上に怖くてつらい本だが、裁判員制度も導入されようという今、必読の一冊だと思う。
刑法39条という司法システムの穴、精神鑑定という証拠としてはただ曖昧に過去を推定下に過ぎない不十分と思われるものによって、凶悪犯罪が不起訴に終わっている、もしくは無罪、軽罪で済んでいる事実について、徹底して被害者サイドから書き進めたリポート。
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日垣隆
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