装丁に惹かれて購入。爽やかな若草色の和紙風潮にデザインに達筆な業平の文字。シンプルながら非常に目を引くデザインだと思います。
本書は古典伊勢物語を筆者なりの解釈で時系列を整え、和歌になぞらえながら描かれた在原業平の物語。
語り口調は特徴的であるけれど、これが絶妙に平安の雅さを醸し出して良い雰囲気を作
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さて主人公の業平ですが非常に恋多き人物。物語の大半は彼の色恋話となっている。
ただしこの業平、己の色欲に歯止めが掛けられない人物な様で、好みとあればどれ程高貴な人物であれモーションを掛けていきます。
流石に政界随一の権力者の妹で次期天皇の后候補の姫に手を出すとか、後先考えないにも程があります。
結局彼の暴走は止まらず、最終的にこの高子姫を駆落ち同然で連れ出すという暴挙にまで出ます。結局未遂に終わり高子姫は連れ戻され、業平は怒りを買って京へ戻れなくなるのだけれど、高子を卑怯にも奪われたみたいな感じで非難し全く反省の色がありません。
京へ帰れない業平は共を引き連れて東国へと下って行くのですが、その道中で仲間と共に京を懐かしみ悲嘆に暮れるのだけれど共の者たちは完全に業平のせいだということをもう少し非難してもいいと思うな。
それから一年程で何事も無かった様に京へ戻れたのもびっくりですが、さすがの業平もしばらくは大人しくしております。
しかしその平穏も長くは続かず帝のお役目で伊勢の斎王の元に行く命が業平へ下ります。
斎王は彼女が幼い頃業平が妹の様に可愛がった女性。ぃまは伊勢神宮で帝に代わって天照大神へ仕える巫女として立派な務めを果たしています。
いやいや、まさか妹の様に思う女性、しかも神に仕える尊き巫女に手を出すような事は……と思いつつ、読者は嫌な予感しかしません。
そして紆余曲折の後まんまと斎王と共寝(今でいうアレですね)してしまう業平。この時斎王の母親は加減が悪く、京にも不穏な気配があったのですが、これを斎王に知らせてしまうと己の不浄な行為が神の怒りを買うことを恐れ逢瀬をやめてしまうことを危惧した業平はこの事実を隠します。何という自己中心的な考え、さすがにここはイラっとしました。
しかも一度共寝したことをいいことに、明日もあって欲しいと無茶な催促。本当に未練がましい男です。
結局その後斎王の母親は亡くなり京にも大きな政争か起きこの段になって、ようやくあの不浄な行為を斎王が悔いているのではと心配する業平。心配する資格ないと思うけどな。
しかも斎王はあの一夜で見事業平の子を身篭るというオマケつき。当然公然と育てられないので子供は人知れず引き取られることに……斎王は不憫だしなんと罰当たりなんでしょう。
その後も自分の腹違い兄の娘に手を出し孕ませてしまうどういうこれまた有り得ない行為もしでかすけど、もはや前科が凄すぎて驚きません。
ただこれだけ欲望のままに生きても、関わった女性達は業平に対して好意的なんですよね。今とは物の価値観も違うでしょうがそれだけ業平がその女性へ真剣に向き合い思いを伝えてきたということなのでしょうか。
晩年の描写何よりそれを現しているのかなと思いました。
色々書きましたが業平という人物はやはり魅力的で、平安の雅な雰囲気を存分に味あわせて頂いた筆者へ感謝をしたい。