文學界新人賞の受賞作が芥川賞を受賞ということで、公募においてのかつては定番コースだったがこの頃聞かず、久しぶりの王道だなと思って、さて、どんなものだろうか、と特に前評判を聞かずに読んでみたがなかなか良い短篇集だったと思う。
地の文中心の密度の高い文章で紡がれているが、そう重々しさはない。もっと会
...続きを読む話文を増やせば軽妙さも出るだろうと思ったが、このスタイルもこの頃の作家にはあまりないタイプであると思えるから貫いても良いかもしれない。
作品の八分辺りに山を持ってきて、弛緩して字を追ってきた読み手に張り手を食らわしてシャキッと覚醒させてから余韻を残して終わる、という構成は収録三篇に共通していて、これがまた良かった。
もちろん別パターンも読んでみたいし、長篇を書くとしたらどうするだろうか、と興味が尽きない。良い作家を知ったものだ、と個人的には満足している。