ドキュメンタリー風の小説。作者自身の体験がベースになっている。自分が最後に整備し、
メッセージを残した練習機が特攻に使われたことを知り、本作がなかばライフワークの
ような存在になったというが、たしかに行間に作者の気迫のようなものがが感じられた。
ちょっとした偶然や行き違いがもとで、運命的な出会
...続きを読むいや別れを体験するというのは
よくある話。まして戦時中ともなれば、ワンタッチの差で生死が分かれてしまうことだ
ってざらにある。生き残れるかどうかはまさに運次第。
前途ある若者が、上層部の理不尽な命令一本で出撃を命じられ、あっけなく散っていく。
一方で無謀な作戦を立案し、大勢の若者を死なせた指揮官がなんの責任もとらずに戦後も
のうのうと生き残り、天寿を全うする、というのは全く合点がいかない。どうして人生は
かくも不平等なのか。いざというとき、本来なら責任をとるべき人間が、全く責任をとら
ず、全くお咎めなしというのは日本人の特性なのか?
太平洋戦争しかり、原発事故しかり、そして今回のコロナ禍しかり。一部の人間のエゴや
保身のために無実の国民が犠牲になるのはもういい加減にしてほしい。