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乃木希典と児玉源太郎。戦乱の幕末・明治を疾走した両将の人生の軌跡と友情。 乃木は愚将に非ず-歴史小説の巨匠の集大成、入魂のライフワーク。
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Posted by ブクログ
「自敬に徹したこの最後のサムライにとって、世上の毀誉褒貶は無縁のざわめきでしかなかった。」 古川さんの昨年出版された最近刊。 乃木希典を描いた小説かと思い読み始めましたが、評伝のような作品でした。 明治を生きた性格と境遇の対照的な二人の軍人、乃木希典と児玉源太郎を多くの史資料を参考にして読み解いて...続きを読むいます。 乃木希典を描いた『軍神』、児玉源太郎を描いた『天辺の椅子』の著書をもつ古川さんにとっては得意分野です。 司馬遼太郎氏の『殉死』を読み ―これでは乃木さんがあまりにも可哀そうだ。 という衝動から出発し、乃木に関する記事の誤謬をただそうとこの作品を書き上げられたそうです。 「長州ぎらい」といわれる司馬さんと長州に生まれ育った「長州びいき」の古川さんは 生前交流があり、直接そのことを聞いたりもしたそうです。 このあたりのやりとりも面白かったのですが、端的にいえば山縣に代表される長州閥主導で作り上げられた陸軍嫌いから始まっているようでした。 乃木「愚将論」に対し史料を駆使して反駁する古川さん。 特に日露戦争での二○三高地の戦いに紙面をさいており、当時の陸海軍の対立や薩長派閥の反目などの影響がとてもよくわかりました。 全国に「乃木神社」があるのに、なんで「愚将」?と思うことはありましたが、これまた歴史でよく見られるようにスケープ・ゴートにされていたのですね。 その時々の国の政策方針に利用するため、その主義主張を捻じ曲げて上げたり下げたりうまいこと使われるのは他の偉人でもよくあることです。 そして繰り返し書かれている、『殉死』ではこれらの史料が無視されている点。 古川さんでなくとも、やはり底辺には「長州嫌い」があるのかと疑ってしまいたくなります。 「小説だから」と言ってしまえばそれまでですが。 作中に引用されている福田恆存氏の『乃木将軍と旅順攻略戦』より。 「歴史家が最も自戒せねばならぬ事は過去に対する現在の優位である。 我々は二つの道を同時に辿ることは出来ない。 それを現在の見える目で裁いてはならぬ。 歴史家は当事者と同じ見えぬ目を先ず持たねばならない」 古川さんの作品が好きなのは、まさにこの目を通して作品が描かれているからです。 「愚将の烙印を押された乃木希典の復権が、この作品と取り組む動機の一つだった」 冒頭に引用したむすびのことばと共に、深く感銘を受けた作品でした。
読んだきっかけ:興味があって買いました。 かかった時間:11/1-11/21(21日くらい) 内容: 「凱旋後、希典は学校などに招かれて講演することがよくあったが、演壇に立った彼は、『私が乃木であります。みなさんのお父さん、お兄さんを殺した乃木であります』と、まず深々と頭を下げるのだった。…...続きを読む」 乃木希典将軍が、一般にあまりに不遇に認知されすぎていると感じる古川氏が中立と考える視点で描いた、希典像。 文章の方々に、乃木氏への間違った解釈を正す愚痴のような記述がみられる。ここまで多くの司馬氏の作品を読んできた自分にはとても面白く読めた。 ただし、これを単体での乃木氏伝として読むのは間違いになるかも。できるだけ、「坂の上の雲」「殉死」の読後に読みたい一冊。 戦争(特に戦術や戦略)を後の歴史で評価することがいかに難しいことか。
途中なんどか毎日新聞で連載も読んでいたのですが、ふと気づくと本になっていたので早速手に取りました。 古川氏がこの本の中でとても意識されていた、司馬遼太郎の「殉死」を以前読みました。 たしかに、乃木大将は「愚将」として書かれていたように思え、そのように私の中でも印象付けられました。 その汚名をは...続きを読むらしたい、という古川氏の想いがあり、この作品を書かれたそうです。 この作品で汚名をはらすことができたのか、それははっきり分かりません。ただ読んでいて、乃木大将が 軍人というよりは、非常に人間味のある一人の血の通った人間であることをとても感じられました。 そして、常に激変する時代を、そして派閥争いに巻き込まれた被害者なのかと思いました。 個人の選択の自由もなく、常に流れに流されてしまい、そこで自分を発揮できなかったことの不幸 であったのか。一緒に書かれている同郷の児玉源太郎と比較すると、そう思えてなりません。 殉死を読んだ時も不思議だったのですが、乃木さん(大将と呼ぶより、乃木さんという方がしっくりきます、、) と明治帝を結びつけたものは、一体なんだったのでしょう?
乃木と児玉中心の小説。私は新聞連載で読んでいました。 司馬先生の「殉死」のイメージに引きずられている乃木ですが、この本は彼の悲劇を暖かい眼差しで描いていますね。
愚将と言われる乃木希典の物語。 同郷の作者により、愚将というレッテルを覆すような内容。 でも、難しかった。 読むのに苦労した。
司馬遼太郎が乃木希典を貶している由だが,本書はそれに対する反論だ.同郷であることもあって,著者の論説に共感する所が多い.日露戦争で確かに多くの兵士を殺した将官であるのは事実だが,大本営の無策もある.児玉源太郎については希典との出世競争の形で書いている.全般的に淡々と進む記述に好感が持てた.
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