作品一覧 2015/11/25更新 インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 試し読み フォロー 盗まれた最高機密 原爆・スパイ戦の真実 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> 山崎啓明の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 盗まれた最高機密 原爆・スパイ戦の真実 山崎啓明 『インテリジェンス1941』と同じ山崎啓明の著作。相変わらずスパイ活動を興味深く描いている。科学者を大きく描いているのが知的流暢性か高くて好き。あの時代の核物理学者は多士済々だから。 『インテリジェンス1941』では国と国の化かし合いに重点を置いたのに対し、今作ではスパイ活動でみる科学者の戦争と言...続きを読むえるであろう。オッペンハイマー、フォン・ブラウン、プランク、ボーア、アインシュタイン、ハイゼンベルクなど、物理という銀河で綺羅星のような顔ぶれが出てきて興奮する。当時の人間が敵国の科学技術を類推する様は、後世からみたある程度客観的な歴史とは違った面白さがある。 アメリカ人のファーマンの目的はナチスドイツの核技術の把握である。ドイツの核技術の論文を中立国経由で手に入れ、その著作者を把握し、1942年から核技術の論文が増えていることを確認。その著者をメモり、ドイツから亡命してきたオッペンハイマーに相談する。オッペンハイマーはそれらの著者と面識があり、「核実験に必須の重水とウランの集まるところで開発されているのではないか」と助言した。少しずつではあるが敵国のことがわかっていくプロセスが読み応えある。 狂気から逃げたアインシュタインと、「ユダヤ人にも大変貴重な人間がいる」と言いヒトラーの逆鱗を買ったプランク、ユダヤ人を弁護し「白いユダヤ人」と呼ばれ拷問寸前で堕ちたハイゼンベルク。 イギリスの『フリッシュ=パイエルスメモ』で、核兵器の実現が示唆され、チャーチルがドイツより先に作るべきとアメリカに情報を提供し、マンハッタン計画が始動した。なんと従来のアインシュタインによる働きかけはあまり大きな影響はなかったという。これは驚きだった。 アメリカ諜報部アルソスが、ついにハイゼンベルクの片腕、フライシュマンを見つける。場所はストラスブール市民病院。なんと、病院を隠れ蓑にしてウラン原爆を研究していた! ハイゼンベルク暗殺作戦もあったのか!? もしハイゼンベルクを失えば人類史の一大汚点になるだろうが。非戦闘員の殺害であり、国際法国内法ともにもとる行為である。ヒトラーが悪いとはいえ戦時下ではノーベル賞受賞者すら暗殺の対象になるとは。と思ったら、どうもハイゼンベルク暗殺計画をマンハッタン計画の科学者が提案したらしい。二重に驚き。 「ドイツの核開発が先行することを恐れているなら、代表的な科学者を殺すことで優位を覆すことができる」 ノルマンディー上陸作戦からアルソスの諜報活動が再開し、アメリカはついにハイゼンベルクを見つける。しかし、なんと、ドイツの核技術は子どものそれとしか言いようがなかった。集めたウランは単に原子力エネルギーの研究であり、平和的活用だった。アメリカ政府、科学者のパラノイアはイラク戦争のそれを思い起こさせる。イラクの60年前に同じ失敗を起こしていた。 ハイゼンベルク暗殺計画は未遂に終わって良かった。刺客モー・バーグは何故か暗殺を行わなかった。もしやっていれば現代アメリカ史にもう一つ汚点が染み付いたことだろう。 そして、ドイツ核開発の心配がなくなった今、マンハッタン計画はソ連の牽制という意味合いを持つようになる。ソ連スパイが優秀である以上、原爆の機密は遅かれ早かれ失われる。故にウランをソ連に渡さないことが肝要だ。ウランのある街を猛爆したり諜報員自ら強奪したりとやりたい放題。ついでにユダヤ人科学者が離反しないように「ドイツが原爆開発に失敗」の情報は伏せられている。 こんどはソビエトの頭脳争奪戦。オーストリア、ドイツの科学者がソビエトに連れ去られる。アメリカの刃から(何故か)難を逃れたハイゼンベルクは今度はソビエトの鎌と槌に狙われる羽目に。3ヶ月前にドイツの敗戦を予期していたハイゼンベルクは疎開していたが、アメリカに捕まり、イギリスで監視される。原爆投下時にはありえないとして認めようとしなかったらしい。 ソ連の原爆に関わるスパイ活動には目をみはる者がある。頭脳明晰な科学者が何人か、ソビエトに情報を売っているのだ。セオドア・ホールはマンハッタン計画に参加したものの、原爆の威力を恐れ、ソ連に情報を流した。核抑止で本当に世界が平和になったか議論すべきではあるが。 Posted by ブクログ インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 山崎啓明 日本がなぜ、戦争に突き進んだか。諜報戦争の面から覗く、第二次世界大戦。ゾルゲ程度しか二次大戦のスパイは知らなかったので非常に興味深かった。 日本が英米との情報戦争で大きく差をつけられ敗北の原因になったというのは有名な話ではあるが、本書を読むと、日本も日本なりに努力していたことがうかがえる。コードネ...続きを読むーム、ニイカワことラットランドによるスパイ活動は読んでいて膝を打つ。まさかイギリス人をアメリカに、日本のスパイとしてリクルートしているとは。まあラットランドも結局アメリカに寝返るのですが。 イギリスのスパイシンシア。ワインとベッド、社交性を武器に情報を奪い取る様は非常に恐ろしい。国家で重要なポジションにいるならば、舞踏会などで会った人間と軽々しくセックスするのはやめようと強く感じた。 そして、ブレッチリー・パーク。当時のイギリスは暗号解読の先進国。まさかここまで多くの情報を得ているとは。例えば独ソ戦。日本の外務省が独ソ戦に対してオロオロ時間を無駄にしているのに対しイギリスの対応は早かった。先んずれば人を制すを地で行く。南仏進駐も予め知り尽くしており、アメリカ参戦に一役買っている。 意外にも、日本の暗号もそこそこ強かった旨が書いてあり驚嘆した。暗号機パープルはエニグマよりも解読に時間がかかり(それでも41年2月には解読されたが)、陸軍暗号解読班は優秀だったそうだ。 横山一郎大佐が有能。アメリカでのスパイマスターであり、日米戦争回避のために、アメリカから「満州国承認」すら引き出した日米諒解案を得た。まあ松岡洋右が蔑ろにして幻に終わったが。アメリカで必死に構築した諜報網が崩れていく様はなかなか見どころが多い。 アメリカの孤立主義に対するソ連、イギリスの苦闘が見て取れる。孤立主義のカリスマ、トマス・デューイを止めるためにウィルキーを支援、他候補者のスキャンダルをバラまき、いざ共和党候補にウィルキーが選出されると用済みとして放る。恐ろしい。 最初は日本、次に英国と来てNKVD。さすがロシアなだけあって闇が深い。日本をアメリカと戦わせるために経済的に日本を絞め殺そうとしたユーリストや、ゾルゲ以上に日本社会に溶け込んでいたエコノミスト。 インテリジェンス1941 ジェームズ・ボンドの元ネタとされるユーゴスラビア出身のドゥシュコ・ポポフ。ドイツとイギリスの二重スパイ。コードネームはトライシクル。彼が真珠湾攻撃を誤った情報から予測し、アメリカに伝える。しかし、その情報が信じられず(そもそも二重スパイという人種が信頼に値しないと判断され、また日本の諜報網を潰したはずなのに真珠湾にスパイがいるはずないという思い込みで)捨てられた。 一方で、アメリカの暗号解読班は人員がとんでもなく欠乏している中、かろうじて日本の「真珠湾に関する情報」を仕入れることに成功する。 最初は日本、次に英国と来てNKVD。さすがロシアなだけあって闇が深い。日本をアメリカと戦わせるために経済的に日本を絞め殺そうとしたユーリストや、ゾルゲ以上に日本社会に溶け込んでいたエコノミスト。 ユーリストに対するソ連スパイの渡したメモ。それが後のハル・ノート。ハル・ノートはソ連製だった!? というのも、ハル・ノートの原案のホワイト案を出した、ハリー・デクスター・ホワイトはソ連のスパイだった。この内容はある程度穏健的でアメとムチ両方あったが、国務省次官のウェルズや、極東問題顧問のホーンベックが対日強硬派でアメを削ったのだ。 アメリカは日本に対しての暫定協定案で、インドシナ北部の25000人までの兵員を認める方針でいた。しかし日本軍は交渉が決裂したときのために、インドシナへの日本軍が16隻の輸送船を送り、兵員を増員しようとした。それがイギリスのスパイに「10-30隻の輸送船」と報告され、その情報をアメリカにリークし、アメリカ担当者は「30-50隻」と大統領に報告した。明らかに協定案を尊重していないとして、ハル・ノートが渡され、日米戦争が不可避になる。情報を持っていたイギリスが、ほとんど表に出ずに日米を動かす様は「紳士の国」としか言いようがない。 Posted by ブクログ インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 山崎啓明 【この瞬間,世界を動かしていたのは,物理的な力ではなく,情報の力だった】(本文より引用) 真珠湾攻撃に至る前の数ヶ月間に列強間で行われた諜報戦に焦点を当てた作品。日本を始めとする各国のスパイたちが,戦争回避や自国の利益のためにいかに動いたかを丹念に追っていきます。著者は,「NHKスペシャル」等の番...続きを読む組を担当した山崎啓明。 新たに公文書の公開がなされた英国の動きも交えながら諜報戦の行方を描いたことにより,日本にとってのあの戦争が,言わずもがなの「世界」大戦であったことが改めてよくわかりました。まだまだ表に出てきていないこともあると思いますが,情報を扱うというのはどういうことかを考える上でも最適な作品です。 前知識があまりなくても読みやすい☆5つ Posted by ブクログ インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 山崎啓明 ・イギリスが保管する「ウルトラ文書」が、日本の戦争直前の諜報活動を物語ってくれる。 ・アメリカ国内に築かれた日本の諜報機関といえば、「東機関」が有名。 ・ロンドンやワシントン軍縮条約で日本は追い込められた、とする向きもあるが、実際は、アメリカやイギリスの戦艦保有量も制限されたのであり、国力の差からす...続きを読むれば、むしろ日本に有利だった。 ・ハリー・ホワイトというアメリカ財務省の経済学者がいたが、実はソ連のスパイだった。しかも彼が、いわゆるハル・ノートの原案になるものを書いた。 ・同じ時期に、ソ連は”エコノミスト”と呼ばれるスパイを日本に花っていたが、これが誰かは今もって不明。 ・アメリカのスパイマスターだった横山一郎は、戦艦ミズーリの上での降伏文書調印式の時に艦上にいた。 Posted by ブクログ インテリジェンス1941 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 山崎啓明 ・1941年当時の情報を活かせない日本型組織の問題―既定路線にしがみつき、状況の変化に応じて、柔軟に判断を変えることができない ・「暫定協定案」への中国の激烈な拒否反応→アメリカを対戦へ引きづり出すべくチャーチル英首相の策謀→インドシナへ南下する日本の兵力をアメリカへ過大に報告→「ハルノート」の提示 Posted by ブクログ 山崎啓明のレビューをもっと見る