下川裕治が仏教に関心があるとは知らなかったが、三蔵法師こと玄奘がたどったとされる行路を鉄道、バス、乗合タクシーなどを使って、相変わらずの貧乏旅行をした旅行記。
玄奘の時代も旅のリスクは大きかっただろうが、現代も国境問題があってアフガニスタンに入れず一部行程を断念したり、中国のウイグル地区では中国政府
...続きを読むによるやたらと厳しい検問や外国人のホテル利用制限に苦労したりした。特に、新疆ウイグル自治区におけるウイグル族への監視は、最近も世界各国から批判されているが、相当厳しく抑圧的であったようで、著者も「魔王がいる」かのようだと言っている。
それに比べると、キルギスやウズベクあたりはかなり自由な感じらしい。そもそも、キルギスもウズベクも縁遠いので、どんなところかあまりイメージもないが、豊富に挿入されている写真を見ると、そのエキゾチックな感じに興味が湧き、よい季節に訪れてみたいと思う。
道中、様々なトラブルが押し寄せるが、必死の努力と幸運で乗り切っていく。中国語のできるカメラマンの同行という要素も大きいが、やはり、著者のバイタリティと世界各地を自力で廻った旅の経験値の賜物なのだろう。簡単そうに見えて、ちょっと真似ができそうもない。