復讐の協奏曲

中山七里

私の仕事は無罪にすることで、
真相を明らかにすることではない。

30年前に少女を惨殺した過去を持つ弁護士・御子柴礼司。
事務所に〈この国のジャスティス〉と名乗る者の呼びかけに応じた800人以上からの懲戒請求書が届く。
処理に忙殺されるなか、事務員の洋子は、外資系コンサルタント・知原と夕食をともにした。がしかし、
翌朝、知原は遺体で見つかり、凶器に残った指紋から洋子が殺人容疑で逮捕された。
洋子の弁護を引き受けた御子柴は、洋子がみずからと同じ地域出身であることを知り…….。

一度心に巣くった獣は、簡単に消えはしない――
めぐる因縁そして〈復讐〉の結末は!？

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内ミステリー
• 出版社: 講談社
• 掲載誌・レーベル: 講談社文庫
• ページ数: 384ページ
• 電子版発売日: 2023年02月15日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 2MB

[ブクログ · ★★★★★]

御子柴先生が故郷に戻る。きっと動じないんだろうなと思いながらも、何か心の変化がありそうな感じが読んでいてワクワクする。

[ブクログ · ★★★★☆]

逮捕された事務員の洋子に「君が殺人を犯していようがいまいが必ずそこから出してやる」と告げる御子柴礼司。今回も手を抜くことなく徹底的に調査をします。人はそんなに簡単には変われないというのが定説ですが、彼を見ていると罪を犯した少年が優秀な弁護士に成長しています。本人の努力と周りの人達のサポートによって良い方向に可能性はあるかもしれません。

[ブクログ · ★★★★☆]

御子柴シリーズ。
唯一の事務員洋子さんが逮捕され、御子柴が弁護することに。調べていくうちに知らなかった事実が…
御子柴のもとで働くのは並の人では勤まらないのがわかったし、洋子はカッコイイと思った。いずれ2人の行方を描くことはあるのかな？でも想像に任せてもらえるのも楽しい気もする笑

[ブクログ · ★★★★☆]

御子柴弁護士シリーズ5作目。

事務員の洋子さんにかけられた殺人容疑、洋子さんの知られざる過去、大量に届いた懲戒請求書の黒幕。
今回も興味を引く内容で、あっという間に引き込まれていきました。
法廷シーンの緊張感、伏線回収もお見事で、タイトルに納得しました。

それにしても何というダークな主人公を作り上げたのでしょう…
どこまでも追いかけてくるあまりにも凄惨な過去。
シリーズを通して段々人間らしさを取り戻しているようで、ちょっとだけホッとします。

[ブクログ · ★★★★☆]

待ってましたのシリーズ5作目。今日も悪徳弁護士・御子柴の身辺には不穏が起きる。突然逮捕されてしまったたった1人の従業員、謎めいた事務員の洋子。

──君が殺人を犯していようがいまいが、必ずそこから出してやる─

くぅーッ！シビれる。カッコいいぜ…チクショウめ。ズルいぞ御子柴！（昭和がヒドイ）

さて、1作目から裁判員制度や介護DV、無戸籍日本人、弁護士懲戒請求など、一貫して時世を反映したテーマが組み込まれている。今回はSNS煽動。対する作者の姿勢は、まさに下のセリフから見てとれる。

── バカにバカを自覚させて何の得があるというのですか

くぅーッ！マジでクールすぎるぜ…。
バカの壁とかバカとは戦うなとか、こんなにも情報過多の時代になんでバカバカ言われるの？と思わずにいられない胸のモヤモヤをより一層煽り立てようとするワイドショー。この巨大な悪循環に中山七里が右ストレートを合わせる。もう井上尚弥なみ。観客総立ち。
としか思えない。

まあ、自分が中学時代に幼馴染を雰囲気とノリでいじめてしまった大バカなのには敢えて目をつぶって、SNS中傷で和解金150万円という判例は、この巨大なイジメ体質を誰かが改めようとしているからではないか。
いじめに加わる人間はみなからっぽの笑顔─
これも作中に出てくる峻烈な表現だ。

こんなスカッとをもらっただけでもシリーズを追ってきた甲斐があった。
世の中なんでこうなったんだろね。自分にできることはなんだろう。
そろそろ次あたりでは政治家を追い込んで欲しいな。
…いやそれもバカの責任転嫁かもしれないな。

[ブクログ · ★★★★☆]

事務員の洋子を弁護すると知って、思わず歓喜してしまった。
これは御子柴の新たな一面が見られるはず、と期待して読めば予想通りでニヤリとしてしまう。
洋子の無罪を勝ち取るべく彼女の過去を調査するが、その過程で意外な事実が判明する。
くせ者揃いの登場人物が物語を面白くしている。
一方で、どんどん人間臭くなっていく御子柴の描写がホントに良い。
もっといろんな人と交流して欲しいとすら思う。

[ブクログ · ★★★★☆]

御子柴礼司シリーズの主人公弁護士を陰で支える事務員、日下部洋子の過去に迫る話。
殺人を犯した過去のある弁護士に何故仕え続けるか、その真相に辿り着いた時は視界が広がる感覚に陥った。
人を信じるとか疑うとか以前に、どのような角度で人を見るかが前向きに生きる為に必要かもしれない。

[ブクログ · ★★★★☆]

軽快なテンポでサクサク読めるシリーズ。

御子柴先生の犯した罪は残虐非道だったにもかかわらず、なぜか応援したくなってしまう。

怨念ともいえる復讐心を持つ者が悪の化身となり、純粋な殺人者だったものが人間の心を取り戻し？

このシリーズは御子柴先生の自業自得によるところが大きいなという結論…笑。最高のエンタメ作品。

[ブクログ · ★★★★☆]

弁護士、御子柴礼司シリーズの第五弾!!!

今回は事務員である日下部洋子が殺人容疑で逮捕され、その弁護を担う。

プロローグから洋子の過去がみえ、読み進めるごとに過去が明かされていく。読み手としては興味深く読み進めることができる。

御子柴の悪辣ぶりは健在だが、今回は表面的でなく、うちに秘めたる悪辣ぶりといった感じだろうか。兎にも角にも安定の中山七里の面白さだ。

[ブクログ · ★★★★☆]

お久し振りに御子柴礼司シリーズ、５作目。

過去の御子柴の事件が掘り返されるプロローグから、その所業を理由にした大量の懲戒請求が事務所に届き、カウンターとしての損害賠償請求を行おうとするさなか、事務処理を任されていた事務員の日下部洋子が殺人容疑で逮捕される…、いやはや、忙しい展開だ。
洋子の弁護を引き受けた御子柴だが、一緒に仕事をしながら彼女の素性について何ひとつ知ることがなかったことに今更ながら気がつき（これまで４作を読んできた読者も同じく）、“日下部洋子とは何者か？”を探りながら、無罪に向けた調査が進む。
その過程での、『御子柴礼司として生きると決めた際、奥底に封印した園部信一郎の存在』に揺れる御子柴の心理状況は興味深く、それでも止めぬ執拗な仕事ぶりは面目躍如といったところ。
洋子が冒頭に描かれた事件とつながりがあることは容易に察することは出来る一方、それがなぜ御子柴の事務所で働いているのかという点についてはさしもの御子柴でも及びつかない中、サプライズな答があるのかと思っていたが、そこについては至極まっとうな答だったので、この作者さんにしてはと、やや拍子抜け（サプライズを求め過ぎ？）。
それでも、これまで当たり前に事務所にいた洋子の心情が明らかになったのは新鮮ではあったし、裁判の場面はケレン味たっぷり見せ場たっぷりで、その後日談も含めてとても面白く読めた。

いつも司法制度の色々な課題を浮き彫りにするこのシリーズだが、今回は誰もが出来る弁護士に対する懲戒請求に対してと言うよりも、匿名を盾に軽々に行動すると痛い目にあうぞという、付和雷同しがちな一般市民に対する警告みたいなところのほうを強く感じた。