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“私の考えた最強の世界”が動き出す!『映像研には手を出すな!』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回はアニメーション制作に魂を燃やす女子高生たちの物語『映像研には手を出すな!』をレビューします。本作は小学館「月刊!スピリッツ」にて連載中の漫画で、本稿執筆時点で4巻まで刊行中。NHK総合テレビでTVアニメ化されることが発表されています。

著者は大童澄瞳(おおわら・すみと)さん。大童さんは、高校では映画部に所属、東洋美術学校絵画科を卒業後、独学でアニメーションを制作していたそうです。その後マンガを描き始め、コミティア出展中にスピリッツ編集部員から声をかけられ、本作で連載デビューを果たしています。

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TVアニメティザーPV

『映像研には手を出すな!』作品紹介

『映像研には手を出すな!』 1~4巻 大童澄瞳/小学館

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「入部がダメなら部を設立すればいい」

浅草みどりは、芝浜高校に入学したばかりの1年生。小学生のころからアニメが作りたくて、人物画ではなく設定画ばかりを描いてきた変わり者。心のスイッチが入ると、あっというまに設定画や背景画を描いてしまう、圧倒的行動力と自由すぎる発想の持ち主です。とにかく設定が命で、“私の考えた最強の世界”を描くために、絵を描いているのだと言います。ちなみに人物画は苦手です。

カリスマ読者モデルの水崎ツバメはアニメーター志望ですが、親が映画俳優で同じ道へ進むことを強要されています。

「アニメ研究部への入部を阻止せよ」

という指示を受けた黒メガネにスーツの怪しげな男(使用人)に追いかけられているところを、浅草と金森に救出されます。どうも財閥令嬢らしく、金銭感覚がちょっと(だいぶ)狂っています。“動き”に対するこだわりが強く、アニメではなくアニメーションを作りたいのだ、と言います。

金森さやかは、お金の話が大好き。おつかいの釣り銭を、手間賃として問答無用で接収したりします。なにかにつけては

「一儲けできないか?」

と考える、あまり他の作品では見かけないプロデューサー的存在です。その金森が

「入部がダメなら部を設立すればいい」

と水崎をたきつけ、浅草を鼓舞し、映像研を設立するのです。部ではなく、まだ同好会ですが。

映像作品の製作にあたっても、金森は「5分の動画2400枚」を描くには2人で「61日間24時間労働」が必要となるといった鋭い指摘や、工程管理、資材調達、生徒会へのプレゼン(屁理屈)、クリエイター気質の2人の動機付けなど、地味ですが重要な役回りを果たしていきます。こういう人がいないと、実務は回らないよな……という存在です。

水上に建てられたダンジョンのような高校……?

この作品世界を彩るのが「芝浜高校」という舞台です。なぜか水上に建てられ、度重なる増改築によってダンジョンのようになった校舎。朽ちかけた建物。敷地内を流れる川。この不思議な設定の芝浜高校が、浅草の脳内設定(妄想)とシームレスに繋がり、どこから現実でどこから設定なのかの境界が曖昧な不思議感覚を演出します。

……もしかしたらこの高校の光景も、彼女の脳内設定なのでしょうか? まさかねぇ。

また、吹き出しのセリフを含めた空間の描き方がユニークで、俯瞰視点の構図だと文字まで斜めになるという手法は、私はあまり見かけたことがありません。ときどき挿入される、見開きドンで描かれる設定画と解説文も、なんというか、オタク心を揺さぶります。映像化される前に読んでおいて、映像化されたあとにも読んでおきたい作品です。

『映像研には手を出すな!』 1~4巻 大童澄瞳/小学館

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