デジタルマンガ キャンパス・マッチ2015 BookLive賞発表!田中圭一が受賞者にインタビュー!
文部科学省事業の産学官連携の体制をもとに、漫画家や出版社、関連産業と、マンガの学校が協力して、学校・学生と、プロのビジネスをマッチングする「デジタルマンガ キャンパス・マッチ2015」。2年目を迎えた今年は、募集対象を大学院・大学・専門学校生に加えて高校生や海外学生にも拡大し、新たな才能が多数集まりました。
そんな中、BookLiveでは、ギャグマンガの巨匠、田中圭一先生とBookLiveが、「ギャグマンガ部門」へ応募された作品の中から優秀作品を選出する「BookLive賞」で協賛しました。
今回は、見事「BookLive賞」を受賞された応募者の方へ、田中圭一先生がインタビュー! 「BookLive特別賞」受賞者の皆さんのコメントもご紹介します。受賞した全5作品はBookLive! で無料配信中。ぜひご覧ください。
田中圭一先生 プロフィール |
手塚治虫タッチのパロディーマンガ『神罰』がヒット。著名作家の絵柄を真似た下ネタギャグを得意とする。また、デビュー当時からサラリーマンを兼業する「二足のわらじ漫画家」としても有名。現在は京都精華大学 マンガ学部 マンガ学科 ギャグマンガコースで専任准教授を務めながら、株式会社BookLiveにも勤務。 |
田中圭一先生絶賛!BookLive賞 受賞作品『イケ女姉貴の恋愛相談』作者・東野いつき さんにインタビュー!
『イケ女姉貴の恋愛相談』(東野いつき)
「じつはクリーチャーを書くのが好きなんです……(笑)」comico投稿の課題でマンガにチャレンジ!
田中 まずは、受賞おめでとうございます。ギャグマンガとしてはかなり画力が高く、ぶっ壊れたキャラクターたちが織り成すクレイジーな展開がサイコーでした!
東野 ありがとうございます! おっしゃる通りのクレイジーなマンガですが、自分の変な感性を評価していただけてうれしいです(笑)。
田中 応募のきっかけは?
東野 専門学校の授業で、「comico(コミコ)」に投稿する作品を作る課題があり、それをデジタルマンガ キャンパス・マッチにも応募することにしました。タテ読みが基本なので、コマ割りもそれを意識しています。
田中 なるほど。学校でもギャグを描いてるんですか?
東野 いえ、実は、ギャグマンガはもちろん、マンガを描いたこともあまりなかったんです。先生にすすめられてマンガにチャレンジしたのですが、イラストと違って、ストーリーとして完成させないといけないのが大変でした。それまでも、マンガにチャレンジしたことはあったのですが、ちゃんと「形」にすることができていなかったので。
田中 今回は学園モノというか、高校生が主人公なんだけど、こういうキャラとかが好きなんですか?
東野 それが、ロボットとかクリーチャーとかが好きで……(笑)。普段はそういうのを書いているんです。あとは、「時代モノ」とか「和モノ」とか。
田中 それは意外!!
ホラーの名作が大好き!「古い」ってよく言われるけれど……
東野 今回の『イケ女姉貴~』は、自分でも「変なマンガだな」とは思ってます。世界観などは得意分野ではないですが、私自身の趣味を反映しているところはありますね。
田中 この「頭おかしい感じ」こそ、今のマンガ界に求められてるものだと思いますよ。ちなみに、影響を受けたマンガといういと、どのあたりになるの?
東野 楳図かずお先生が大好きです。『漂流教室』や『おろち』『猫目小僧』とか。あと、伊藤潤二先生も。ホラー、怪奇系や時代モノが好きですね。
田中 東野さんは思いっきり平成生まれなわけだけれど、そういう意味では、けっこうシブいところが好きなんですね。
東野 そうなんです(笑)。これまで作品を持ち込んだことのある編集の方からも、「古い」ってよく言われます。
田中 でもね、僕はその方向、すごくいいと思いますよ。だって、みんなと同じ事やってもつまらないでしょ? 影響を受けているホラー作品の影響もあるのかもしれないけれど、このくらい「ぶっ飛んでる」世界観のギャグって、そろそろ来るんじゃないかと思ってますよ。
「ホラーの方法論は、ギャグや感動モノにも通じる。尖ったところを先鋭化していってほしい」(田中)
田中 では最後に、今後の目標を教えてください!
東野 今回の作品も、自分の感性で「これ面白い!」と思ったものなので、ぜひ活かしていきたいと思います。
田中 ホラーがお好きだとおっしゃったけど、ホラーや感動、ギャグって、同じロジックだったりするんですよね。「この展開だと次はこうなるんでしょ?」と読者に思わせておいて、まったく違うものをポーンと投げ込んでいく。いったん読者をミスリードさせるんですよね。東野さんは画力が高くて、キャラクターでこれだけ面白く持っていけるんだから、自分の感性を信じて、思いっきり伸ばしていってほしいです。
東野 ありがとうございます!
田中 尖ったところは先鋭化させていってほしいね。丸くなるな! 絶対抵抗しろ!(笑) 今回は、おめでとうございました!
選考をふりかえって(田中圭一先生)
昨今、ギャグマンガの世界でなかなか「突き抜けた」表現が出ない時代になっています。今回の投稿では、東野さんの作品は一番ぶっ飛んでいたんですね。僕自身は、時代的に「そろそろ突き抜けたものが評価される時代が来そう」と思っているところもあります。お笑いの世界でも、ちょっとエキセントリックな芸が出てきたりしていますよね。
彼女のような感性は、ブレずにこのまま突っ走ってほしいと思います。販売冊数が重視される世界で、ギャグ漫画がコミックから出てくるのが難しい時代ではありますが、デジタルマンガは「ネット」という非常に潜在能力が高いメディアで大きく飛躍する可能性があります。
私もギャグマンガ作家として、デジタルの可能性には非常に期待しています!
受賞作品はBookLive! で読めます!
『イケ女姉貴の恋愛相談』(東野いつき)は、BookLive! で無料配信中! ぜひチェックを!
BookLive特別賞 選考結果
ここからは、「BookLive特別賞」を受賞した4作品を、田中圭一先生コメント&受賞者コメントと共にご紹介します。こちらも、BookLive! で無料配信中です!
『魔法少女つむぐデストロイヤ』(うさとる)
【田中先生コメント】
キャラクターの魅力で引っ張る秀作です。魔法少女もののパロディーとしての魅力も存分に発揮されていて、なにより作者が楽しんで描いているのが伝わってきました。
【うさとるさんコメント】
まさか賞をいただけるとは思っていなかったので本当にうれしいです。筋肉質な男性キャラが好きなので、そういう主人公が描きたいなあ、と思い、気が付いたらストーリーが完成していました。〆切直前でかなり追い詰められていた記憶があります。キャラクターが全員気に入っていたので、描くのがとても楽しかったです。〆切に追われるのは大変でしたが、だからこそ描ききったときの達成感と満足感はひとしおでした。
『期待ハズレ!』(焼き鳥)
【田中先生コメント】
若手お笑い芸人のショートコントを見ているような感じを受けました。RPGゲームや童話のパロディーが多く出品されている中で、日常に潜む笑いと人の心理をえぐったような内容が光りました。
【焼き鳥さんコメント】
この話は、僕が中学生のときに実際に体験した話に脚色を加えてできたものです。『こんなことをするやつもいるんだな』と思ったことを今でも覚えており、変わった作品が作れそうだと思い立ち、マンガにしました。話のほとんどが会話劇なので、台詞回しや顔芸に力を入れて描きました。特に表情にはこだわって描いたので、楽しんでもらえればうれしいです。
『今すぐ抱きしめてください!!』(Nevica)
【田中先生コメント】
絵も達者でキャラクターも魅力的、なによりも主人公に感情移入できる秀作です。コメディーとしての完成度も高く、作者の才能を感じました。読んでみて、ややおとなしい印象がありますが、それも個性なのかな、と思いました。
【Nevicaさんコメント】
とても嬉しいです!フランス人のアマチュア漫画家として喜ばしいです。ストーリーのベースは、自分の体験です。家に帰っていた時、怖い男の人が私をストーカーし始めました。その時、かっこよくて若い男の人を見つけて、「彼氏のふりをしてくれない」と聞きました。ストーカーは偽の彼氏を見た時、諦めました。「まるでマンガみたい」と思い、アイデアが生まれていました。
『「ザ」』(山口ヒカル)
【田中先生コメント】
シュールでクレイジー、アナーキーで破天荒、BookLive賞には至らなかったのですが、他に類を見ない個性的なギャグマンガでした。一般受けするかどうか気になるところですが、個人的にはすごく作者の将来性を買いたいです。
【山口ヒカルさんコメント】
驚愕しましたが、田中圭一先生にコメントをいただき感激の極みです!自分の中にあるものを爆発させようと思い爆発させた結果です。誰でも気軽に読めて最高に面白い、笑いたい時や「なんか疲れたな」って時に何気なく読める、そんな漫画を作りたいと思います。連載作家になって単行本を出し、田中圭一先生に飲みに誘っていただけるくらいビッグになります!!
最後に
今回の「デジタルマンガ キャンパス・マッチ2015」は、若い才能のエネルギーと、デジタルマンガの可能性を強く感じさせるものでした。今後、新たな名作がここから誕生するかも!? 非常に楽しみです!