【感想・ネタバレ】天子蒙塵 4のレビュー

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Posted by ブクログ

めくって最初の章のタイトルが「ひといろの青」
蒼穹の昴も一つの大きな節目にきたんだなと思いました。そして語られるのは中国の創世神話。

" 森羅万象はこうして調いました。しかしそれだけでは、人間の住まう世界にはなりません。
 天に代わって人の世を統ぶる帝。天命を奉じて政を行う、中華皇帝がいなければ。そのみしるしとして、盤古の心臓は大きなダイアモンドに変わりました。
 どれほどすぐれた人間であろうと、神々の目から見れば乙甲の獣にすぎません。選ばれた唯一の人間が皇帝として龍玉を抱いてこそ、世界は定まるのです。"

創世神話を思い起こしながら日光浴をする溥儀。「私の過去には全き幸福の時間などかたときもなかったらしい」と振り返る。しかし、幼い頃春児が話してくれた物語は好きだったと。未来の私のためにたくさんの宝石を献じてくれたのだと話す。

"どうして私が
なにゆえこんなにも、高貴な不幸を背負わねばならぬ"
と振り返りながらも。

映画スターになるべく満州にきた田宮少年を見て、「満州に渡った日本人は誰もがみな多かれ少なかれ芝居を打っているのではないか」と考え始める。この「満州」は本来どこにもないのではないかという疑問が頭をもたせかける。人はみんな懸命に生きているが、どこか空回りを続ける空気感だった。

日本にいる吉永はいよいよかの急進派、「危険」と言った石原に会う。石原はいずれ白人世界とアジアで戦争が起きる。そのために満州が必要なんだと話す。

"「いいか、石原。貴様は天才でもなければ英雄でもない。みずからを天才と信じ、みずから英雄たらんとする、皮肉屋で臍曲がりの宗教家にすぎん。宗教家ではなく軍人だと言うのなら、もう一度繰り返すーー恥を知れ」"

どんな理由であれ侵略はいけない。その土地はその土地に生きる者たちのもの。しかしどんどん悪い方に転がっていく中での群像劇だった。

"執政溥儀という人物が、他人のように思えない(中略)しかしその苦悩は、凡下の人々の及ぶところではない。貧しさとは無縁でこそあれ、生きながら地獄をさまようほどの不幸であろう。"

志津は「満州はひどいところだ」と士官学校の同期に話す。ひどいところの満州に、夢を見る者、人生を賭ける者もいる。『満州』とはなんだったのか。このシリーズはどんな結論を出すのか、最後まで追いかけたいと思う。

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2023年05月16日

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2023.11.16~11.26

ラストエンペラーの本当の悲劇が始まる。
史実として、学校で学んだことが、いかに大雑把であやふやであったのか。「嘘」ではなかったが、「黙」ではあった。

で、正太はどうなる?修は?
誰が龍玉を手にするのか?
創作の中で、歳を重ねていく人、新しく登場する人。彼らの人生がどう転がされるのか楽しみ。

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2023年11月26日

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蒼穹の昴から読んでるものにとって、まさにこのチクルスが最終巻でよいかも。梁文秀と春児と玲玲の終着点。満州国皇帝溥儀を廻り、万感の想いで締めくくられるラスト。彼らをずっと読んできた読者にとってはもうこれ以上の物語はいらない最高の締めくくりだった。
只、歴史はここからが面白くなるところ。
次の兵諫は、226事件と西安事件。
シリーズがこの先どうなるかわからないけど、毛沢東、周恩来が中心となるわけで、我々と同じ時代を生きた人たちの物語がどうなるのか、興味は尽きない。
本流シリーズがいつ出るか情報を知らないけど、行けるところまで読み継いでいきたい。

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2022年10月16日

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中国近代史の不幸は阿片戦争に端を発する。阿片は依存性が高く、一度使うと止められない。多くの清国人が阿片中毒になった。阿片の需要が高まり、価格が高騰して阿片業者達は大儲けをした。「阿片=悪」の図式が成立する。
阿片の乱用を防ぐため、清朝は阿片の使用を禁止した。阿片を販売し、侵略戦争の口実とした英国の反倫理性は明らかである。これは日本も同じである。日本の傀儡国家の満州国も阿片を財源にしていた。
浅田次郎『天子蒙塵』では関東軍の中にも阿片を財源とすることに抵抗する意見もあったが、結局、阿片を財源にしたと語られる。それどころか、熱河作戦も阿片の栽培地確保が目的の軍事作戦とみている。
「一部の者が、阿片の専売を目論んでおります。禁制の麻薬を国家の財源にしようなど、あってはならぬ話であります」(浅田次郎『天子蒙塵 3』講談社、2018年、96頁)
「むろん阿片はご禁制だが、医療用として政府が管理し、専売としているわけだ。そんな話、誰が信じる。この阿片まみれの満人たちを見れば、れっきとした財政収入であることは明らかだろう」(浅田次郎『天子蒙塵 4』講談社、2018年、245頁)

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2022年06月13日

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天子蒙塵。

天子とは、宣統帝溥儀のことだろうが、天子が蒙塵することなどあるのだろうか?

天子は行幸するものではないのだろうか。

悲痛な気持ちでこの小説を読むことになった。

蒼穹の昴シリーズから続く、この物語はどこに着地するのだろうか。

宣統帝溥儀の破滅への道筋は遂に始まった。

春児等の運命はどこにいくのだろうか?

最新作に期待したい。

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2022年05月01日

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ネタバレ

蒼穹の昴からシリーズ中に登場してきた多くの人物の視線から描かれるストーリーが、同時並行的に進んでどのようにラストを迎えるのか、まだ先は見えない。

この天子蒙塵シリーズの最後のシーンは、さすが泣かせの浅田の本領発揮。

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2021年09月19日

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張学良は遂にイギリスから中国への帰還を決める。一方、東三省に建国された満州国は帝政へと移行し、溥儀が満州国皇帝に即位する。
新しく生まれ変わる中国の胎動と、古い勢力である旧清国の復辟、それに乗ずる日本の帝国主義。様々な思いが錯綜する中国情勢に翻弄される人々。
帰還した張学良はどうなるのか?
満州国と戦い続ける馬占山は?
溥儀の即位後の満州国は?
龍玉の行方は誰の手に?

これらは、次巻以降に。

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2021年08月08日

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全体の印象としてはジワジワと進展する印象。

「馬賊の唄」に馬賊の鄭が云う。「どうして日本人は、俺もおまえもと誘い合ってやってくるのだ。生まれ育った祖国に住み飽きるとは、どういうことだ。そして、もうひとつー」「中国人は、日本人を待ってなどいない」
満州国の出鱈目にはこの言葉で十分だな。

永田、石原の対談は痺れるシーンだけど、この後の歴史を考えるとウンザリ。

中国に戻った張学良。迎える宋字文や杜月笙が頼もしい。刺客来襲のシーンは映画のよう。まだ前哨戦で盛り上がるのはこの後だろう。

志津が想定する満州国の財政。チラッと不思議に思っていたことだけど、こんな非道いことがされていたのか。

最後は溥儀の天壇への登壇。悲しく寂しくなってきたな。

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2021年07月04日

Posted by ブクログ

浅田次郎の『蒼穹の昴』から始まる中国近現代史を舞台にした壮大な時代小説もいよいよ佳境に。本作『天子蒙塵』は清朝のラストエンペラー溥儀が紫禁城を追われてから「満洲国」皇帝になるまでの時期が描かれる。また前作『マンチュリアン・レポート』で爆殺された張作霖の遺児である張学良、同じく側近であった馬占山なども絡み合いながら、物語は展開する。人物の描写がそれぞれ魅力的で飽きさせないのは、さすが浅田次郎。『蒼穹の昴』の主人公、李春雲(春児(チュンル)も健在で要所要所を締めている。

次作でシリーズも完結とか。楽しみにしたい。

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2021年07月01日

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シリーズ5作目
溥儀が満州国の皇帝になるまでが描かれています。
前作「マンチュリアンレポート」をはじめ「中原の虹」や「蒼穹の昴」から随分間が空いたので、人間関係や相関が忘却の彼方でした。
自分のレビューやググってようやく思い出したところ多々あります(笑)
登場人物多くて、ストーリが追いきれません。
前作含めて、じっくり、あいだ開けずに一気に読まないとだめです(笑)

最終巻です。
いよいよ溥儀が満州国皇帝へ
しかし、なんとも寂しい式典。さらに手にもつ龍玉はまがい物
そんな式典を支えるのが老いた李春雲と梁文秀。
このクライマックスのシーンはとても悲しい。 
本物の龍玉は誰の手に渡るのか?

これ、またまだシリーズは続きそうですね。
記憶が残っちるうちに、次のシリーズを読みたい(笑)
それとも、次のシリーズが出たら、前作を読み返させる講談社の戦略なのか(笑)

4作読み切るのにとても時間がかかりました。

これまだ続きそうです

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2023年06月11日

Posted by ブクログ

溥儀が紫禁城を追われて、満洲国の皇帝になるまでを描いている。今までのシリーズのような主人公がおらず群雄割拠。魑魅魍魎の混沌とした世相を淡々と色んな立場の人目線から書いてる。あえて言うなら溥儀でしょうか。でも魅力的な人ではなかったので中々読み進めるのが難しかったです。
役者は日本軍、張作霖の息子、蒋介石、毛沢東、溥儀でした。もうこの時代の中国は大変ですね…。満洲国ってこんなに広大だったんだ…という勉強にもなりました。

創作の龍玉の出番は少なめでした。
このシリーズはどこまで続くのだろうか。

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2022年12月10日

Posted by ブクログ

最終的に満洲国が建国するところで終わる。が、まだまだ登場人物が色々登場してきて蹴りがついていない。これから第二次世界大戦、国共合作、共産党による国民党撃破による中国統一となるはずだけどまだ道のりは長い。きっと次がありますね。

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2021年10月02日

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