【感想・ネタバレ】緑陰深きところのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

兄さん、今からあんたを殺しに行くよ
この一文が最初に出てきて興味を惹かれた。

大阪ミナミでカレー屋を営む三宅紘二郎は、偏屈な74歳の老人。ある日、絵葉書が届き、書かれた漢詩に、昔の思い出がムクムクと湧き上がる。
紘二郎は、実の兄への復讐だけが生きる目的となっている。
今現在、紘二郎の住む廃病院で、50年前に心中事件があった。紘二郎が愛した睦子、その娘の桃子、ふたりをめった刺しにして殺した実兄。
紘二郎は、兄に2度同じ女を奪われた。兄が彼女と結婚したとき、兄が彼女を殺したとき。

睦子との思い出のクルマ、コンテッサを手に入れ、兄の住む大分日田へ向かおうとする紘二郎。
その前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の25歳の若者・リュウだった。そのコンテッサはニコイチ(欠陥車)で危険だと必死に運転を止めようとさせる。
その気持ちに心揺さぶられ、紘二郎は殺しの旅の交代運転手としてリュウを雇う。

50年前の無理心中事件が単なる無理心中ではなかったことが話中で仄めかされる。ただそれ以上は書かれていない。
桃子の出生も、睦子の精神が壊れていく様子も、はっきりは描かれない。

老人と孫くらいの年の差のある、紘二郎とリュウは、たった6日の旅で、お互いを深く知る。リョウは読んでいて辛くなるほどの生い立ちを抱えていた。そして25歳にして、余命一ヶ月になっていた。

はっきりとしたラストシーンではないものの、緑深き所で終わる。
紘二郎は殺すつもりで大分まで出かけたにも関わらず、兄は亡くなっていた。
何となくリョウのお陰で罪を重ねず済んだように感じられた。

後味が良い話ではないが、納得の行く終わり方だった。

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中々読み進められなかった。一旦読み始めると、グイグイ物語に引き込まれる。金髪のリュウが出てきたあたりから物語がグッと面白くなった。


P139
花開けば万人集まり 花尽くれば一人なし
ただ見る双黄鳥 緑陰深き処に呼ぶを

→桜の花が咲いているときはみなが集まる。花が散ってしまえばだれも寄り付かない。ただ、黄桜の枝の、緑の陰の奥深く落ちるところで、つがいの鶯が呼びかわしている
→この詩には、別の意味もあって、人の世の無情を掛けてある。栄えているときはいくらでも人が寄ってくる。だが、一旦落ちぶれるとだれも寄ってこない。変わらず来てくれる者こそ真の人である、と。

深いね。
落ちぶれても寄り添える人、寄り添ってくれる人を…考えてしまう。


P166 
「ひとつ教えてやる。未来のない人間の時間は、過去に向かってながれていくんや。」

きっと自分が過去ばっかり追っている時は、未来を想像できてないんだなぁ~と思った、健全に生きたいな。

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2022年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大阪のミナミでカレー屋を営む絋二郎はかつて兄が妻、子、義父を惨殺した自宅に暮らしている。ある日出所した兄からハガキが届く。それをきっかけに兄を殺す旅に出る。兄の妻睦子は、父の恩人の娘で政略結婚だったが、絋二郎と恋に落ち駆け落ちまでしていた。連れ戻され別れて7年後悲劇は起きる。事件はなぜ起きたのか?
睦子に約束したコンテッサを購入して大分へ向かう絋二郎に同乗することになるリュウ。リュウはいったい何者なのか?

こうやって書くと情報量が多い笑
最初は、絋二郎とリュウの祖父と孫のような2人旅。謎のリュウの行動。差し挟まれる絋二郎と睦子の回想シーン。睦子が思い出の豆腐屋に預けた手紙。大分で知る事実。事件の真相、リュウの謎。
70を過ぎた絋二郎よりリュウが先に死ぬという皮肉。なんか切ない、難しい。


三宅絋二郎(73)
征太郎(5歳上の兄)、草野睦子(兄の許嫁/同い年)
桃子(睦子の娘/享年5歳)
蓬莱リュウ(25/イダテンオート元店長)

中島(絋二郎の友人)、香代(中島の姉)

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2023年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ざりがにの~を読んだすぐ後に読んだのかこの作品で、途中であれ?って思わず本の表紙を読み、タイトルを見て、ああ!ってなった。
~の鳴くところ、~深きところ、韻が一緒で、しかもどちらもその表現が同じような環境、そして話も過去から現在を追って進んでいくという。リョウの口癖の「不思議な力」が働いたとしか思えない笑
過去の事件を思い出してコンテッサに乗って乗り込もうとする爺さんとアコギな商売でニコイチ自動車を売った若い金髪店長が共に大阪から大分まで旅する道中記がなんとも奇抜で面白かった。
過去を持った青年と、すべてを過去に置いてきた老人の物語は切なく脆い。「ざりがに~」の後だけに余計な相乗効果が生まれてしまって読む速度が加速した。
今でもあるんだろう許嫁のしきたりが悲劇を生んでしまったのだが、そこには老人介護の厳しさや育児ノイローゼまで盛り込まれており、後半の手紙がおどろおどろしい。昔はすぐに死んでくれたので介護も楽だったと思う。なんで自立の出来ない老人を日本は大事に大事に生かすのか?さっさと安楽死させて始末すれば日本の経済、生活は改善できるはず。
ラストの真相(仮定)は悲しい現実だと思った。

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2021年09月22日

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