【感想・ネタバレ】アラミスと呼ばれた女のレビュー

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Posted by ブクログ

幕末から戊辰戦争終結後の長崎、江戸、蝦夷において、女性ながら男装して、お雇い外国人の通訳にあたった「お柳」の物語。箱館戦争から北海道の開拓に深く関わった榎本釜二郎(武揚)との関係を中心に描かれているが、お柳の潔さ、一途な姿勢が、湿っぽくなくてとても好感が持てる。当時女性は通詞(通訳)にはなれない文化であり、男装していたお柳の記録は公式には一切ない。記録と取材に基づいてはいるものの史料は少なく、かなりの部分が作者の想像の産物であるが、登場人物(お柳、榎本、土方など)の人生がこのようであったらなあと思わせる心地よい読後感を味わえる。幕末から戦中戦後の物語を読むといつも思うのは、志とか大義とか言って意思決定するのはいつも男性、それに巻き込まれて悲惨な目にあうのはいつも女子供。

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2019年08月12日

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時代は幕末から明治。

江戸の錺職人の父平兵衛は、外人の国への土産の簪
などを依頼されて作っていた。名人。
意匠を依頼主の外国人と通詞を介して話すのに、
江戸っ子の父親は回りくどいと感じて、
自分でオランダ語会話を独学で習得。

そんな錺職人を幕府の役人が放っておくわけがない。
通詞の最下級の「稽古通詞助」の少し上「小通詞並」
として出島に派遣される。
もともと外国語習得が得意な父平兵衛はみるみるうちに、
英語、フランス語にも意欲を見せる。
平兵衛の娘「柳」もフランス語を学びたいと父に教わる。

平兵衛と江戸時代から懇意にしていたのが榎本釜次郎。
子供の頃から密かに釜次郎に思いを寄せる柳は
フランス軍の兵法を教えるフランス人たち軍人らの世話を頼まれ、
男装して仕事をする。

榎本釜次郎は五稜郭で官軍に反旗を翻した張本人だが、
幕末から続く戦で坂本龍馬を始め
多くの人材を失った政府は、釜次郎の人物ぶりを惜しみ、
助命嘆願運動がおきた。

アラミスと言うあだ名はフランスでも高く評価され、
日本でも後から勲章を受ける生え抜きの
フランス軍人ブリュネがつけた名前で、
あの三銃士の小柄なアラミスを彷彿とさせるため名付けた。

このあまりにも、ノンフィクションかと思わせる物語は、
実はこのような男装の女性フランス通詞は他に本当に存在する。
ブリュネによるスケッチにも描かれている。
『田島勝』と言うらしいが、何しろ女性通詞は認められていないため、詳しい記録が残っていない。

後から調べるまで、全部本当のことと、思い込みたくなる
実にリアルな物語に仕上がっている。

登場人物柳の家族以外は、かなり史実に則している。

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2018年11月25日

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宇江佐先生のあとがきによると、戊辰戦争の頃、歴史には残っていないけど、男装した女性のフランス通詞がいたらしく、何が何でもこの話を書かずにはいられなかったらしい。その強い想いがあってか、通詞をしていた父親から英語と仏語を習い、自身も通詞になりたいという夢を持つようになったお柳の人生が見事に息づいていました。幕末の情勢も丁寧に綴ってあり判りやすい反面、2人が思いを寄せていく描写が少なく、榎本武揚の側の心情や家庭の事情が文脈やお柳の想像から読み解くしかないのが物足りなかった。

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2016年06月25日

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通詞の娘で長崎で育った女性・田所柳が子供の頃から語学に興味を持つ。
父はもとは職人だったが、オランダのカピタンがみやげにする櫛や簪などを買いに来る店だったためにオランダ語を覚えたのが評判となり、通詞として認められ、幕府から長崎に派遣される。
安政三年、お柳が10歳の時から始まります。
お柳は特にフランス語に堪能で、女だてらに通詞になるのが夢。出島に出入りできる女性は遊女のみなので当面は無理だったのだが。
父を認めてくれていた榎本の御前の息子・榎本釜次郎(武揚)と幼なじみだったという。
釜次郎が海軍伝習所に2年学んでいた間、休みには家に来る関係だった。
父を亡くした柳は江戸に戻り、母親と二人で生きていくために18で芸者に出ることに。三味線が出来たために宴会の助っ人芸者になれたのだ。
宴席で釜次郎と再会し、男装で通詞となる。女性は役人にはなれなかったためだが、通詞は大いに必要とされていた。
髪を切り、父親の着物を着て、横浜の異人宿舎の一室に住み、夜となく昼となくフランス人の世話を焼く生活に。
国全体が大きくうねる時代の波乱の運命と一筋の恋。
海軍副総裁だった榎本が蝦夷地下賜を願い出て、開陽丸で船出するのに同行。
何と蝦夷地にまで男装で通詞として渡り、五稜郭にいた?!?
史実には残っていないそうですが…
軍事指導の教官として来日していたフランス軍人のブリュネは、本国の命に背いて釜次郎らと行動を共にする。
ちらっと出てくる土方歳三を思うとちょっと切ない。
榎本‥というと大変!ではあるがまあ明治まで生き延びるからいいか~などと思いながら読みました。
榎本とお柳の性格がどちらもなかなか好感持てる描き方になっているので、気分よく読めます。
五稜郭で敗れ、獄中にありながらも次々に次代のための研究を重ねる。
死罪でも当然の所を、明治政府に必要な人材として黒田清隆に味方されて救われる。北海道開拓に向かう榎本武揚。
時代は変わって、お柳も家で女学校の生徒に英語を教える仕事もしたりするのでした。
血を引いてか語学に興味を持つ一人娘のお勝を育てつつ。
榎本とはほとんど会うこともなく過ぎますが、お勝の父親代わりを榎本に頼まれた側近の男性・大塚が傍にはいたのでした。彰義隊の頭取で生き残り、五稜郭でも生き残った大塚も何という人生でしょうか。
表紙絵は、鹿鳴館での舞踏会で。
幕臣の正装で現れた武揚と、芸者姿の仮装で踊るラストシーンですね。

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2010年11月13日

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タイトルから想像するのはハードボイルドだが、内容はまったく違って、幕末のフランス語の通訳を(男装して)務めた女性の話だった。
そういう人物がいたことは史実らしいが、内容はフィクションとのこと。
榎本武揚との一生をかけた恋模様が長崎弁で語られるのが、なんだか心に沁みる。

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2011年05月07日

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ネタバレ

 榎本武揚と男装の仏語通訳田所柳。この二人の生き方を通して、宇江佐真理さんが幕末から明治への移行時代を描き上げました。「アラミスと呼ばれた女」、2006.1刊行、2009.4文庫。

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2022年11月21日

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安政3年、肥前長崎。出島で働く父から英語や仏語を習う10歳のお柳。「うち、お父ちゃんのように通詞になりたかとよ」。女人禁制の職に憧れる幼いお柳の運命は、釜次郎、のちの榎本武揚との出会いによって大きく変わっていく。攘夷運動、大政奉還から戊辰戦争へ。激動の時代に消えた1人の「男装」の通詞。

ラジオ(BOOK BAR)で紹介されていて、気になったので読んでみた。

時代が大きく変わる中で、フランス語の通訳として男たちを支えた女性の話。
1つの秀でた才能、自分の武器と言えるものがある人は強いと思う。
歴史に疎いので、細かな情勢の描写はすっ飛ばして読んだが、それでも十分楽しめた。
長崎に縁があるので、長崎弁も懐かしかった。

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2018年08月10日

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幼い頃から榎本釜次郎に焦がれていた通詞の娘が、戊辰戦争で榎本と再会し、男装の通詞となり共に箱館へ渡る。
公的な資料はないが男装の女性通詞は実在したらしい。

旧幕府軍とブリュネたちフランス人の関係を間近で見たアラミスことお柳の視点は面白いが、女の感情まる出しでちょっとウザ…硬派な魅力に欠けると感じた

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2013年03月20日

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幕末の長崎で生まれ育ち、激動の時代を男装の女性通詞として奔走した主人公。
実在した(と思われる)人物がモデルだそうな。

地元的には、長崎弁がちょっと・・・・・惜しいというか・・・・・。

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2012年08月17日

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ネタバレ

通司の娘お柳が大好きな榎本武揚の元で働きたく、男装してフランス通司となり五稜郭の戦いまで供にする話。

お柳と榎本の間に娘を授かったりするが、幕末の情勢を書くのに精一杯で細かな情愛は描かれていないので淡白な感じ。感情を入れにくい話。

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2012年04月20日

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ネタバレ

アラミスは期待と絶望を繰り返してその時そのときを夢中に生きていました。

彼女の大きな目標は叶ってなかったのですが、人生なんてそんなもんだと思うようになりました。

ある程度流される必要もあるんだなぁと。
最近、「流されなさい、ただし決然と」という言葉を聞きましたが、アラミスの乗った波は土石流じゃないかなぁ。

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2011年07月01日

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幕末・明治。
男装して好いた人のために働く女子がいた。

さらりさらりと読めて、最後の引き際もすっきり、という感じでした。
主人公のお柳はこの時代に男の社会に飛び込んで働いた女性で、とてもかっこよかったです。

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2009年10月09日

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