【感想・ネタバレ】老いた殺し屋の祈りのレビュー

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Posted by ブクログ

 どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。

 作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているように思える。とりわけ少年と孤独な老人の間の不思議な絆ができあがってゆく風景は、この作品中、最も心に響いてくる。

 かつての妻と息子との生活を切り裂かれ、ギャングの殺し屋としての人生を終えようとしているオルソは、引退後に妻と息子との再会を果たすべく家族探しの旅に出る。しかしあっという間に彼の行動は派手な襲撃によって阻止される。派手な列車内の襲撃と残酷なまでの闘いのシーンは、映画的記憶では『ロシアより愛をこめて』のクライマックスを思い出させるものである。

 そしてその後の展開。行きずりの女性とその息子との煌めくような数日。これはもう『シェーン』や、ロバート・B・パーカーの、名作『初秋』を彷彿とさせる。暴力や闘いの世界に身を置く男が少年を父親のように優しく鍛え上げる。体をではなく心を。

 そんな懐かしいノスタルジックなシーンがちりばめられた小説、というだけでも十分素敵なのだが、イタリアン・ノワールならではのフランスやイタリアの各地で展開する過激なダイナミズムも、まるで映画そのもののように迫力を感じさせる。

 姿の見えぬ敵たちの冷酷さも際立っており、オルソは困難な敵たちと真向闘ってゆくことを余儀なくされる。老いた体ながら、暴力のプロとして、さぞかし凄まじい人生を送ってきただろうこの主人公の暗い歴史を想像させる。

 脚本家の経験を備えた実力派イタリアン・ノワールのこの作家。小説書きは副業とは思うが、今後の創作にも是非、期待したいと思う。

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2021年04月05日

Posted by ブクログ

オルソ”熊”と呼ばれる男がいる。
その名の通りの195センチの大男で、鍛えられた肉体を持つ。
数多くの逸話で語られ、齢60を過ぎても組織のトップ、ロッソの右腕。恐れと尊敬を持って扱われている未だ現役の殺し屋だ。

物語はそんなオルソが病院で目覚めるところから始まる。
心臓発作を起こして目覚めたオルソは死を間近に感じて、それまで唯一心から愛した女性アマルの現在を知ろうとする。
アマルが妊娠したことをきっかけに組織を抜け、2人で生きようと決意したことがある。だが組織内で特に信頼されているオルソのことをロッソは手放そうとはしなかった。逆にアマルと娘のグレタの命を危機に晒すことになる。オルソは2人の安全と引き換えに組織に戻ることにする。
アマルの前から姿を消して40年の歳月が経とうとしていた。
ロッソの静止を無視してオルソは2人に会いに電車に飛び乗るが、そんなオルソを襲撃する謎の男たちが現れ……。

著者のマルコ・マルターニはイタリアで50以上もの作品を手掛けてきた脚本家。
そのためか内面描写よりもアクションを軸に映像が浮かぶような筆致で語られる。そのため500ページ以上ある長編であるにも関わらず、リーダービリティが高くあっという間に読み終わってしまった。
ありきたりというわけではないが、「そうそう、こういうの!」と求めているポイントをちゃんと提示してくれているのも手練の脚本家だからか。
そして、やはりと言うべきか既に映画化権も買われている。
しかもルッソ兄弟が手掛ける予定だという。これ以上の適役はない。
ドルフ・ラングレン、リーアム・ニーソン(でも『96時間』あるしな)、もっと若かったらイーストウッド、ジャン・レノもイタリア人だし良いかもな、なんて頭の中でキャスト考えたりするのも面白いかも。

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2022年11月24日

Posted by ブクログ

還暦を過ぎた殺し屋オルソが40年前に生き別れになった恋人と娘を探しに行くという話。ありきたりな設定ではあるけれど中身は面白い。老いと病があるなかで激しいアクションもある。これが読み応えがある。途中で出会う女性とその息子との交流のホッとする場面と命を狙われている緊張感。殺し屋を引退しようと決意したときに去来する想いが溢れてくるラストもいい。

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2021年04月08日

Posted by ブクログ

男性はこの作品は好きかも。女性の立場からは、まずは40年も後に探し出して欲しくないし、それを愛とはふざけないでと言いたい。バイオレンスと主人公の純情さは確かに切なかった。

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2021年05月30日

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