感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
凄く面白く読んだが、結末はあまり好みではなかった。
もう少し長くあって欲しかった、と思うのは、欲張りだろうか。きちんと許可を受けて、(たとえそれがストーリーを進行させる上で要請されるシーンでなくとも)漁をするシーンはもっと見たかったし、二人の結末が描き切られていたか、というとちょっと落ち着くには足りない感じがした。今後の展開は示してあるから想像はつくけど、一番盛り上がるところで終わってるような気がする。
ダイオードが過去の記録を漁っていたのは、合法的に結婚するためではないかと思いながら読んでいたのだが、結局「想いが通じ合っていれば」とか「世界なんて関係ない」みたいな、百合だとありがちな結論を出してしまっている気がして、そこが少し釈然としなかった。
が、百合SFとしてだめか、というと全くそうではない。台詞回しがちょっと軽すぎるかなーと思う箇所はあれど、キャラクター造型は魅力的だし、彼女らの織りなす関係性は素敵だ。慣習に縛られながらも溶け込めないテラと、少女らしい美しさを持ちながら、芯の強さと荒々しさを秘めたダイオード。彼女らが正体を探り探り、お互いを必要としながらも、どこまで距離を詰めて良いのか戸惑いつつ、少しずつ心を通わせて行きーーかと思えば、一気に行き着く思い切りのよさ。緩急の効いた良い進展のさせ方だったと思う。
また、設定の扱いが硬すぎず、雑すぎず、SFとしては非常に好みな塩梅だった。とりあえず固有名詞ぶん投げても、然るべきタイミングできちんと説明がある。お陰でくどくなり過ぎず、勢いが削がれることなく、徐々に世界設定の霧が払われて行く感じがあって、楽しく読めた。個人的な難点こそあれど、それでも本作は百合にもSFにも妥協なく、一粒で二度美味しい傑作であると、言えるだろう。
Posted by ブクログ
僕たちには
物語、しか
ない。
ひとことで云えば、気持ちの良いSF。
元々が百合アンソロジーの短編なので、それはもちろんそうで、
長編とするにあたって、それがそうであるから出てくる問題、というか社会的な部分に、触れるか触れないか。
それは見て見ぬふりをするかしないか、ということなのかも知れないけれど…
むしろそれ自体を推進剤としているようにさえ感じて、素直にぐっときました。
風穴を開けるドリルのコアチップというか。
物語の要石というか。
こういう書き方もある、なんて偉そうだけれど。
開けっぴろげで、
わざとらしくなくて。
そう。
ここには感じるべき物語しか、ない。