【感想・ネタバレ】われらの獲物は、一滴の光り(KKロングセラーズ)のレビュー

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Posted by ブクログ

未刊のエッセイ集。先に出版された「一言半句の戦場」から漏れた珠玉のエッセイを更に目配り広く採集したのが本書である。小説家としてのみならず、ノンフィクションの領域でも瞠目すべき傑作を残しさらに加えて、エッセイの分野でも感動を呼ぶ筆致を示している(まえがき)人気があるからこそその作家の残した作品の隅々までが商品としての価値を持つのだと思う。巨大な画家の鉛筆で描いたスケッチが展覧会で展示されるのと同じ理由だと思う。ともあれこの作品群は先に集められたエッセイ集「一言半句の戦場」からは漏れたエッセイ集ではある。だがこの本書もいたるところ光を放つ名文の数々が収められている。また逆に気合の入っていない軽い受け答えの調子で書かれてあるリラックスした(ように受け取れる)文章なんかもより作者をより身近に感じさせる。まるで自分も作者と同じBARで同じ夜を過ごしたかのような気がして嬉しくなる。その他にもこの厖大な知識人に『生まれるのは、偶然、生きるのは苦痛、死ぬのは厄介』や永井荷風の『小説作法』での小説家の心得『読書思索観察』などを教えてもらいまた、スパイ小説を社会論的に読み解く方法を初めて教わったし数限りない生き方の知恵などを読んで知ることが出来た。オレにとっての著者は奇しくも本文中156P「碩学、至芸す」の幸田露伴の露伴釣談を紹介する文の中で「眼光の炯々と深遠に狼狽させられるのだが、(中略)碩学の稚純な熱中と、苦心と、文体のほのぼのとした澄明。そのしみじみとした、篤厚な、それでいて終始ユーモアを忘れない捨棄と思いやりのありがたさを、この一巻をどこから読んでどこでやめてもいいから、くつろいで味わいなさいな。何しろこれらは碩学が雨と風のなかからひきだしたものなんだから、しっかりと寝かされていて、底深い。」と同じ感想をこの本を読むことで味わった。その他の作品にも遅ればせながら触れてみたい。

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2019年04月26日

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