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ロンドンの蝋人形館の創始者として有名なマダム・タッソー。
フランスで生きた若い頃の波乱の人生を描きます。
マダム・タッソーが描いたことになっている、筆者の絵も魅力的。
マリーは可愛いとは言えない特徴のある顔の、小柄な女の子。
早く両親を亡くし、ひたすら働き続けます。
医師のクルティウス先生のところに住み込み、蝋で人体のリアルなパーツを作る手伝いもしました。
やがてパリに出た医師は、蝋人形で評判をとります。
大家である未亡人は癖が強い人物で、マリーを嫌い冷たく当たりますが、最後には態度を軟化させるのが意外な展開でちょっとほっこりしました。
ベルサイユ宮殿でルイ16世の妹と親しくなったマリー。
おりしも革命が起きて、楽しい生活は一変します。
親王派とみなされて投獄されるが、腕を活かす仕事のために命は救われることに。
フランス革命を変わった角度から眺めるのもまた、思いもよらない動乱を実感させる感覚がありました。
マダム・タッソー館のフランス革命のシーンは、現地でデスマスクを作るほどの体験者だったから出来たことだったのですね。
15年の歳月を費やして書かれた大作。
登場人物は濃く強烈で、貧富の差が激しい時代の過酷さと、運命の大転換とで目眩がするよう。どこかにあたたかさ、生命力も脈々と。
読まなければ知り得ない、感じられなかった世界。
驚嘆を覚えつつ。
Posted by ブクログ
1761年、スイスの小さな村で生まれたマリーは、父を亡くし町の医師クルティウス博士の家で母と共に働くことに。だが、人馴れしない博士の仕事とは病院から運ばれてきた遺体の型を取り、蠟で標本を作ることだった。クルティウスの弟子となり型取りの技術を身につけたマリーの運命は、舞台が革命前夜のパリに移ってから大きく動き始める。ロンドンの蝋人形館で有名なマダム・タッソー(本名マリー・グロショルツ)の前半生にスポットをあて、イマジネーションを駆使して個性豊かな人びととの出会いと別れを描いた自伝風歴史小説。作者本人による挿絵付き。
マダム・タッソーの来歴をぜんぜん知らなかったので驚く展開のたびにWikiを開きながら読んだけど、さすがにフィクションだろうと思った部分ほど史実なので二度びっくりした。ルイ16世の妹・エリザベート王女の側近になったのはともかく、牢獄でナポレオンの妻ジョゼフィーヌに出会うところまで史実とは。
私はやはりヴェルサイユでの日々を描いた第四部が好きだ。思想家など著名人と凶悪殺人犯を分け隔てなく蝋人形にして展示する〈猿の館〉(元は人真似するチンパンジーが住んでいたという設定もGOOD)の奇妙さと、公開晩餐や立会い出産など人びとの"見たい"という欲望に晒される王族という生き方の奇妙さが重なり合っていくさまにゾッとする。マリーと顔立ちの似たエリザベートが度重なる婚約の破談に傷つき、"恵まれない人びと"救済のため蠟の臓器づくりにのめり込んでいく姿は、権力構造の最上位と最下位にいる二人が同じように自由を奪われ身動きがとれない悲しみを物語る。突き放すような台詞しかでてこないのに、マリーへの愛着がどうしようもなく滲みでてしまうエリザベートの別れのシーンには涙してしまった。
登場人物はクルティウス先生もメルシエさんもピコー未亡人もエドモンもエリザベート王女もみんな第一印象が良いとは言えず、未亡人にいたっては終盤まで本当にクソババアなのだが、一人ひとりが生きるということのままならなさを体現しているようで最後にはたまらなく愛おしくなる。ピコー未亡人は亡き夫のようにクルティウス先生を愛することはなかったけど、息子のようには愛していたと思う。彼女の場合、それは行き過ぎた所有欲のかたちをとるのだが。クルティウス先生がアンリのマネキンを切り刻んだ布で未亡人の額を拭うシーンは衝撃だった。愛という歪み、それ自体の愛おしさとおぞましさが描かれた名シーンだと思う。
マリーの人生は常に死に彩られていた。初めは怯えつつも、蠟を使って人体を永久保存する術を身につけたとき、マリーにとって生と死は区別のないものになったのだと思う。革命のさなかもたやすく命を奪う民衆の熱狂には怯えているが、死んだ人の姿に怯えることはない。そうしてマリーは死者が生者のようにあふれ、生者が死者の真似をする小さな世界をつくりあげた。やがてイギリスへ移ったマリーの館が建つベイカー街を舞台に、探偵小説という生と死のエンターテイメントが花開くこととなる。そういえば、コナン・ドイルのおじのリチャード・ドイルは蝋人形館の〈恐怖の部屋〉に集まる人びとを描いていた。
〈アイアマンガー三部作〉の評判を聞いてずっと気になっていたケアリー。読めば必ず好きになる作家だという予感があったが、全篇を覆うイラストも含めてぜんぶが魅力的で大好きになった。
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おもしろかった…!
ずっと読みたかったんだけど値段にビビって買えずにいた♡
結果買ってよかった…!久々に続きが気になって睡眠削ってまで読んでしまった。
大好きなマダムタッソーミュージアム。
本当楽しくて何回も行ってるけどその歴史は全然知らなかった。
まさかのこんな苦労人の女性だったなんて。
もちろんこちらはフィクションではあるが、エリザベート王女に仕えてたことやマリーアントワネット達のデスマスクを作成してたなんて…
その時代の作品って沢山あるけどまた新しい視点から見たパリでとてもおもしろかった。
クルティウス先生はフィクションの中の登場人物感が拭えなかったけどみんな必死に生きててよかった。
エドモンは本当に実在したのだろうか…とか後から思っちゃうくらい儚かったなぁ。
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主人公の「おちび」(原題はLittle)とはマダム・タッソーのこと.例の蝋人形館には30年ほど前に行ったことはあってタッソーとは設立者だろうな,ぐらいにしか思っていなかった.7歳でパリに連れられてきた彼女がフランスで革命の激動に巻き込まれ,41歳でイギリスに渡るまでの期間を描いた話.
どうやら史実にフィクションを重ねているらしいが,愛を与えられなかったおちびの切ない物語である.とはいえ悲壮さはなく,ディケンズ(最後の方にちょっとだけ名前が出てくる)風の人間ドラマである.
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ロンドンに実在する蝋人形館の経営者であるマダムタッソーの人生を描いた作品。
決して美人ではなく、恵まれた環境にもおかれないマリーが、たくましく、貪欲に、力強く人生を生きていく姿が一冊を通して描かれていると思います。
この物語の面白いところは聖人君子のような人間が出てこず、全員が一癖も二癖もあるような登場人物であるところ。わたしは、クルティウス先生が好きです。
いかんせん文量が凄いので、最初は読み進めるのに苦労したけれど、マリーがパリに渡ってからは怒涛の展開で、ページをめくる手が止まらなくなりました。
本当に素晴らしい作品に出会えた時は、一晩眠れなくなって誰かに読んだ本の話をしたくなるんだなと気付かせてくれた作品でした。
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蝋人形館で有名なマダム・タッソーの波乱に満ちた人生を、彼女の自叙伝の形で描いたフィクションです。
素晴らしく、感動する秀作です。
これまで経験したことがない、新しいタイプの小説で、ケアリーの他の作品も読んでみたくなりました。
著者、自身による挿絵も良かったです。
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マダム・タッソーの伝記風小説.15年かかったという歳月が決して無駄ではない熟成された物語.小さなマリーが心の中の大きな愛を抱えて強く健気に生きていく.物語の前にまず小さなマリーの人形があったというのもむべなるかな,そのマリーへのケアリーの愛がしみじみ感じられる風変わりで歴史に忠実な物語だった.それと,訳がとてもいいと思いました.
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かなりの分厚さで速読する私でも何日もかかって読んだ。主人公実在した人物とのこと
特に少女時代の話は夢中になって読んだ。彼女の生涯に書かれた本
時はフランスルイ16世の頃
大きな変革飲み込まれ生きていった1人の女性の話
Posted by ブクログ
おちびのマリー
と風変わりなクルティウス先生との運命的な出会いから蝋人形を作る事になる。
最初は人の臓器、やがて人間の顔を石膏で型をとり
蝋人形の顔を作る。
スイスを追われ、パリに行き2人は洋裁店の未亡人とその息子の家に間借りをしまた新たな運命が動きだす。
フランスの歴史に絡め、おちび事マリーの長い長い
人生模様にルイ16世、マリーアントワネット、
ルイの妹のエリザベートその他色々な人物が登場
しフランス革命までのマリーの喜怒哀楽を込めた
不思議な物語が紡がれて行く。
ロンドンに行き着く最後は、おちびのマリーの
新たな名前は有名なマダムタッソーとなる。
Posted by ブクログ
マダム・タッソー → マリー・タッソー こと マリー・グロショルツの物語。
実話ではなく、ケアリーの作り上げたフィクション。
フランスの蝋人形作家。
不気味で怖い挿絵だが、あちこちにたくさんあり、わかりやすい。
幼い頃の話は、グロ恐い。
恐い話なのか?と思いビクビクしながら読んだが、
ヴェルサイユ宮殿に行ってからのマリーは見違える様に生き生きとして、
というかものすごい下剋上だと思う。
エリザベート王女と知り合えて本当に良かった。
城を探検して、錠前師と友達になったおちびのマリー。
なんとその錠前師はこのフランスの国王でルイ16世と呼ばれていた。
マリーアントワネットも登場。
「ベルサイユの薔薇」を知っている人は、おなじみの名前をいくつか目にして嬉しくなるはず。
エドモンと、2人の間にできた娘を名簿に記した時の悲しみは、グッと来た。
フランス革命時での類い稀な体験。
混乱状態がよくわかる。
本人そっくりな蝋人形を作り続ける自伝的なストーリー。
壮絶な人生。
映画にはなってないの?
実写でいけそう。恐い雰囲気で。
Posted by ブクログ
フィクションとノンフィクションの中間な
マダム・タッソーの自伝的物語。
結構なボリュームで中盤疲れたけど
読み切ってよかったと思う。
タッソーの蝋人形館がロンドンにあるから
勝手にイギリス人かと思ってたけど
大陸の生まれでフランス育ちだったのか。
そして、フランス革命の時代を生きた。
史実をうまく加えて書いてあるのでしょうが
なかなかに激動の人生だな。
人間の嫌なところも写し切る蝋人形。
…怖いねぇ。
Posted by ブクログ
18世紀のフランスを舞台に、スイス生まれのマリー・グロショルツが、両親と死に別れ、師のもとで蝋加工や人体について学び、フランス王女の教師となり、革命期には王族や政治家のデスマスクを作り、投獄から生きのび、結婚して、ロンドンに渡って展示室を作る。
臓器、スケッチ、服、デスマスク…と蝋人形に至る技術との出会い。孤児や野犬や死人や臭いやらで、花の都どころじゃないパリ、を感じました。