【感想・ネタバレ】新しい哲学の教科書 現代実在論入門のレビュー

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Posted by ブクログ

本書は間違いなく、私にとっての「座右の書」になった。

「高さ」と「広さ」は今の自分にとって、切実な問題だった。この世に、至高性と普遍性はない、と嘆く自分に嫌気がさしていた。

今を生き、今を嘆く自分。まだ嘆きがあるだけいいのだろう。いま、ここではない、どこかを望めるだけ「まし」なのだろう。

しかし、「まし」だという感覚だけでは生きていけない。絶対なものを持たない人生。また、共有は一時的な現象。そのような感慨は、憂鬱しかもたらさない。

エピローグで「エモさ」について、深めた論考が秀逸。
哲学は不可能性の論証から、新たな可能性の道を切り拓く。
素晴らしい「哲学」である。

タイトルからはうかがい知れないほどの可能性に満ちた本だった。

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2020年07月12日

Posted by ブクログ

メランコリー、メランコリストという枠組を提示され、さも自分を言い当てられてるかのようだった。

メイヤスー、ハーマン、テイラードレイファス、ガブリエル…彼らの思想が現代の若者にどれだけ強力な武器になるのか。

著者には今後さらに期待が持てる。

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2020年07月03日

Posted by ブクログ

ポストモダン以降の悪しき相対主義/独断主義を問い直すことから始まる現代実在論について、普遍性と超越性をキーワードに紹介、論考した一冊。そこで描かれている世界像が量子論やリトルピープル論とパラレルに見えるのも、きっと偶然ではないのでしょうね。

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2020年02月23日

Posted by ブクログ

著者の処女作。現代の哲学の状況をこの1冊でわかりやすくまとめつつ、「メランコリスト」という概念を提唱して現代人の「心のあり様」を表現し、最新の哲学の成果を踏まえた私たちの行く末を提案してくれる著作。個人的にフィットする内容が多く、特にエピローグに関しては感動的な体験でした。

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2019年11月29日

Posted by ブクログ

高校の倫理の教科書は実存主義までしか扱いませんが、その後出てきた「新しい哲学」の教科書です。カント以後の観念論をどのように破るかという横糸(実在論)と、「何をしたいわけでもないが、何もしたくないわけでもない」現代人(メランコリスト)がどのように高さ(超越性)と広さ(普遍性)を手にできるかという縦糸(実存論)とを上手く織り上げています。特に実存論と相対主義をどのように乗り越えるかという問題意識は、とても共感できました。

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2021年03月07日

Posted by ブクログ

思弁的実在論の提唱者であるカンタン・メイヤスー、オブジェクト指向存在論を構築したグレアム・ハーマン、『なぜ世界は存在しないのか』の著書で知られるマルクス・ガブリエルに加えて、文化相対主義に抗して普遍性を擁護する試みをおこなったテイラーとドレイファスの思想を、わかりやすく解説している本です。

著者は、これらの思想家たちによって提唱された実在論の意義を、「高さ」(超越性)と「広さ」(普遍性)という二つの側面に注目することで考察しています。メイヤスーは、われわれが思考と存在の相関関係にのみアクセスできるというカント以降の「相関主義」を批判し、実在にかんする理説を復興させる試みをおこないました。著者は、こうしたメイヤスーの企図を全面的に肯定することはできないとしながらも、とくに「高さ」について積極的に語ろうとする彼の試みには汲むべき内容が秘められていると評価しています。そのさいに著者は、「大きな物語」に対する懐疑を積極的に展開する「ニヒリズム」と、そうした発想が蔓延する時代にあって実存的な根拠をうしなった「メランコリー」を区別し、「メランコリー」の時代にもう一度「高さ」を求めようとする精神史的状況において、メイヤスーの展開する議論が重要な示唆をあたえてくれるのではないかと論じています。

またガブリエルの「世界は存在しない」という主張には、独断的世界像、とりわけ自然主義が一種の形而上学となってしまった時代に対する批判的意義が認められるとしたうえで、彼の存在論的多元主義の立場がどのようにして新実存主義の主張へとつながっているのかということを解説しています。

現代の精神史的状況のなかで新しい実在論の意義を見定めようとする著者の試みは、やや通俗的な議論になっている印象もありますが、新しい実在論について概観することができるという意味では、入門書の役割をしっかり果たしているように思います。

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2021年02月22日

Posted by ブクログ

マルクス・ガブリエルの「新しい実在論」って、なにが新しいのかわからんな〜と思いつつ、読んでみた。

「実在論的転回」は、ガブリエルだけではないとは聞いていたけど、違いがよくわからなかったんだけど、メイヤスとか、ハーマンとか、いるわけですね。そして、それぞれの主張の概要もわかった。

ポストモダーンの哲学がもたらした相対主義、「正しさ」はないという袋小路を乗り越えたいという動機はすごくわかる。

でも、それは単純に実在論にもどればいいというほど単純なものでゃない。ポストモダーンでは批判されてきた「実在」をもちだしても、それはポスト・ポストモダーンな議論にしかならないな〜。

なんだか、ポストモダーンよりもさらに屁理屈ぽくなっているような気もする。

多分、100年後の人たちが読むと、スコラ哲学での普遍論争とか、いわゆる神学論争にみえるだろうな〜。つまり、同じ穴のムジナだな〜、というのが印象。

そういうなかで、マルクス・ガブリエルの議論はちょっと突き抜けている感じはしたかな?

と言っても、ガブリエルの議論が新しいものにも思えなくて、これって、ポストモダーンな相対主義だよね、と思うんだよね。

ポストモダーンが、「社会的な構築だ」と言っていたのを「実在する」と言葉を変えているだけに思える。

でも、同じことをいっていても、「構築だよね」というより、「実在だよね」というほうが元気がでるわけで、そこが面白い。

自分は、もしかすると、ガブリエルと近いことを考えているのもかもしれない。

自分と同じようなことを考えている人にであうと、すごく盛り上がっちゃうこともある一方、ガブリエルにあんまり盛り上がらないのは、たんにそんなもんだと思っているからかな〜。

「新しい実在論」、もうちょっと付き合ってみるかな?

世界に統一的な意味をあたえる「世界」は存在しないと腹をくくること。だけど、私たちの周りには、いろいろな「意味」が満ち溢れていて、それを楽しみながら生きていけばいいじゃん、みたいな。

「現代実在論」の議論のわかりやすい解説はとても刺激をうけたけど、プロローグとエピローグの著者自身の考えの部分は、なるほどと思いつつも、「現在実在論」の解説部分とややニュアンスが違う感じもある。その辺のところは、別の本に切り分けて論じたほうがいいかなとか思った。

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2020年08月15日

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