【感想・ネタバレ】影裏のレビュー

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Posted by ブクログ

 文學界新人賞の受賞作が芥川賞を受賞ということで、公募においてのかつては定番コースだったがこの頃聞かず、久しぶりの王道だなと思って、さて、どんなものだろうか、と特に前評判を聞かずに読んでみたがなかなか良い短篇集だったと思う。
 地の文中心の密度の高い文章で紡がれているが、そう重々しさはない。もっと会話文を増やせば軽妙さも出るだろうと思ったが、このスタイルもこの頃の作家にはあまりないタイプであると思えるから貫いても良いかもしれない。
 作品の八分辺りに山を持ってきて、弛緩して字を追ってきた読み手に張り手を食らわしてシャキッと覚醒させてから余韻を残して終わる、という構成は収録三篇に共通していて、これがまた良かった。
 もちろん別パターンも読んでみたいし、長篇を書くとしたらどうするだろうか、と興味が尽きない。良い作家を知ったものだ、と個人的には満足している。 

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2021年07月18日

Posted by ブクログ

影裏 沼田真佑 著

短編が3編。

#読書好きな人と繋がりたい

読み終えたあとに、終わってしまったあとの余韻が少しだけ胸騒ぎする、そして時をかけて鎮まる感じの著書でした。

1.影裏
東北が舞台です。地方の静かな空気感、自然の音や香りが行間から溢れてきます。

転勤で住み慣れない男性とその職場の同僚の物語です。
釣り、酒、互いに間合いがよいと感じる2人ですが、少しずつずれ始めます。
同僚の互助会への転職、そして東日本大震災が襲います。

ある時、同僚が津波で死んだと噂を耳にします。
本当にそうなのか?

彼は同僚の足跡を尋ねがら考えたことは?
読者に解釈を委ねる余韻。

2.廃屋の眺め
50代の男性 独身の語り部での展開です。
非正規で職場を変わりながら生きている男性です。

同窓が旅したときに出会った心中事件。
同窓の遺品をきっかけに知り合った男性とその奥様との物語。
どこかで見聞したことがありそうな内容が展開します。

読み終えて、タイトルに目がいきます。

なぜ『廃屋の眺め』?と考えるのです。

廃屋。
昔は人が住み、気配があった佇まい。
いずれかに主をなくし、いまは、ただ風景と化した、人気の無いたたずまい。
誰も何も施さなければ廃れるだけ。
ただし、誰かが手を差し伸べれば、また、陽があたり、人の気配も戻るやもしれぬ。

廃屋の眺め。

私たち読者は何を見出すのでしょうか?

読むという行為は、想像と解釈が織りなすから、離し難いのかもしれません。

3.陶片
主人公 40代女性独身。
書店員のアルバイト。

登場人物は、再婚同士の姉夫婦と主人公のパートナー舞台女優のエム。

40代になり、夜の長さに戸惑いを覚え、日々やり過ごす彼女。

気分転換に近所の渚を散歩して、気持ちを和らげてくれるものに出会う。
それがタイトルの陶片。

砂浜から、白い陶片のみを集める彼女。
なぜ、、、?

パートナー エムと織りなすことで、孤独をひとときだけ消去できる、マイノリティであることを自身で認めて生きている。

著者は、彼女を通じて問いかけている。
誰もが、陶片、そう、侘び美しいかけらを世界の中に探していることを。
それが、己の存在の頼りになることを。









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2020年10月11日

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私にも覚えがある。友情以上に近い好意を寄せた相手がすり抜けていく感覚。自分の知らない一面に、寂しいけど強がりたいような。苦い気持ちを思い出した。

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2023年08月07日

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芥川賞受賞作品
生活の中にある人との繋がりが自身にとって、本当に必要なものか、なぜ続くのか考えた。他人の希薄さやそれでも求める人間の弱さ、信じきれない微妙な不安が細かい描写から浮かび上がってくる。

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2022年04月10日

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嫌いでは無いというのが正直な感想。
3作品とも最後にどうなるのかわからないところも考える楽しみがある。
LGBTやDVの内容ももっと身近に考えなければならないと感じた。
沼田真佑さんの他の作品も読んでみたくなった。

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2022年02月27日

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読書開始日:2021年7月4日
読書終了日:2021年7月4日
所感
これぞ純文学といった作品に思えた。
主人公目線で、日浅、主人公のことが淡々と語られる。
日浅の心情、主人公の心情もそれぞれそこはかとなく描かれていて、日常で相手の心情を図ろうとする力と同じ程度の力で推測しながら進めることが出来た。
文章がとても綺麗で、かっこいいと思った。津波の「ついに顎の先が迫り来る巨大な水の壁に触れる」描写には震えた。
主人公は、友として、そして恋人として、日浅に惚れていたのだと思う。
最後まで日浅の圧倒的な味方でいて、最後のシーンも日浅を追いかけていた。
終の住処の雰囲気に似ている。
好きな作品。

要するに友人を探しているのだった。
おれはなんにも誇れないのが誇りだけどな
喉の奥に激しい言葉の塊が終始悶えているような、胸苦しい2年間
はじけるような花嫁の笑顔は記憶にあったが、新郎の顔がどうしても出てこない
自分の鈍さが呪わしかった。
この種の話題にながれると、日浅は俄然魅力を増す。
あんまり典型的ですぐ描けると思う。
たぶん寂しさからくる自制心の衰えと、さらにはまたこうした話題を直接口でつたえる相手をもたない孤独の暮らしは身につまされた。
却ってその場に釘付けになる。
ついに顎の先が迫り来る巨大な水の壁に触れる
私情に溺れる、ありふれた男の渋顔。

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2021年07月04日

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岩手出身です。
他県の人が岩手に移り住んだらこんなイメージなんだ、という感じですね。盛岡を綺麗に描写してくれて嬉しい。方言の使い方も上手。
人の捉え方は表裏一体。だから影裏。
映画はまだみてません。映画館通り行きたいなぁ。川徳を冷やかしてフェザンで買い物したい。一階のタリーズはまだあるのかな。

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2021年06月04日

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映画「影裏」は小説では書ききっていないところまで描写しているのね。ということが分かった。
「陶片」の、「…世界は臆病者で溢れている」という一文のためだけに読んで良かったと思う。

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2020年07月23日

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芥川賞作品。
盛岡の自然描写の表現が見事。
丁寧でとても美しい。
人間の弱さ、生き辛さが大袈裟でなく描かれている。

他の2篇もマイノリティの心情が良く伝わってきて、面白かった。

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2020年03月28日

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岩手を舞台に、疎遠になった同僚に思いをはせる表題作ほか、2編を収録した短編集。

芥川賞受賞作は初めて読む作家であることが多く、手に取るときには新たな作家に出会える期待と少しの緊張が伴って、背筋が伸びる。
この「影裏」も同様で、ひとつ深呼吸してから読み始める。
冒頭から、情景描写に魅了された。こんなふうに丁寧に言葉を紡いでいく作品は、読んでいて心地よい。その落ち着いた雰囲気から、途中まで主人公は中高年かと思っていたら、もっと若かったのが意外。
さらには、同性愛者であることが見え隠れしてからは、友人に対する言動も異なったものに見えてきて、ぱらぱらと読み直した。

「陶片」は、女性が主人公の性的マイノリティを描いているが、女性作家かと思うような生々しい繊細さのある視点が印象的。

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2020年03月24日

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ネタバレ

様々なマイノリティーと共に身近な人間関係が描かれていく三編。‬

‪美しく豊富な言葉と、静かにスッと突き刺さる文章で構成されていた。‬
‪三編の主人公に共通した生きづらさのようなものに感情を刺激される。特に『陶片』の最後の数ページにグラグラと揺さぶられて夢中になった。‬

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2020年02月06日

ネタバレ 購入済み

謎が残る

芥川賞受賞、映画化等で興味を持ち、読みました。短編集なのですぐ読み進める事が出来ますが…。表題作に関しては、主人公の妹の結婚のあたりから、最初の疑問が生じ…というのは、主人公の性別が、男性だと思っていたけど男性と付き合っていて別れたと思われる描写があったからです。さらに、読み進めると震災が起こり親友が失踪したのを知った主人公が、親友の父親を訪ねて捜索願を出すよう頼みに行くと、親友がしていた不正や裏切りを知るというところで、真相は明らかにされず物語は、終わってしまいます。読者の解釈に任せるということでしょうか?私が思うのは、親友は、不正はしたかもしれないけど、親がお金を脅し取られる謂れはないということです。若しくは、父親が、詐欺にあった可能性もあるとも思います。それらの、解らない部分を置いておいても、自分が暮らす街を舞台に見た事のある自然や回覧板をまわすなどの生活上の細かい事が描写されていることから、より身近に感じられました。

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2020年02月06日

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岩手では年末から映画「影裏」のCMがガンガン流れていて、CMの最後でふるふると震えて泣いている綾野剛が、笑えてくるくらいなのだけれど、この本を読んで、もう冒頭で文章の美しさに衝撃を受けてしまった。言葉が豊富、そしてリズムが良く読んでいて気持ちが良い。
「影裏」はまだ続きがありそうな感じで終わってしまう。その先まで読みたかった。共に収録されている「廃屋の眺め」「陶片」も、よくありそうな日常の風景なのだけれど、夢の中のような世界観で、とにかく文章が美しくて、今後ぜひ長編を描いてほしい。

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2020年01月25日

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森の濃い香りが漂ってきそうな 丁寧な風景描写が印象的な表題作。著者のことは存じ上げなかったのですが、映画化、芥川賞受賞作ということで手に取ってみました。読後、幸せとは? 普通とは? 常識とは? 揺さぶられて不安な気持ちになりました。

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2019年11月08日

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意識が深化していく。記憶を辿るたびに文章は深みへ向かう、深まるほどに時間や空間という軸の制限が取れていきなり視点が飛躍する、我に返る、繰り返し。深い内面描写とともに今目に映る光景の描写もまた枝葉の端まで見つめようとしている。まさに影の裏までを見ようとする静謐で貪欲な文章。

でも個人的には表題作「影裏」よりも最後の「陶片」がいちばん好き。この本の小説の主人公の一人称は一貫して「わたし」でどれも冒頭読んだ程度ではこの人が男性か女性かわからない、そもそも性別にあまり「こう」だと思っていないところがいいなと思った。でもフラットなんだけど、情念がすごい。

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2019年10月30日

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芥川賞受賞作の文庫化。その他2編も含んだ短編集。3.11、DV、LGBTをそれぞれ題材にしていて、いずれも、ともすれば散々な結果を招きかねないものだけど、上手に取り扱われていると思う。さりげない日常を描きながら、実はそれが上記題材へと繋がる伏線になっているのは、それぞれの作品に通底する部分。かといって画一的に感じられる訳でもなく、クライマックスへ向けての比較的鋭角的な展開が、結構気持ちよく感じられもする。なかなか良かったです。

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2019年09月06日

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同僚であり唯一の親友であった湯浅。主人公は、突然姿を消した彼の、自分が知らない暗い一面を知ることとなる。

収録されている三つの短編のどれも、複雑な感情をリアルに、どこか暗くて、レトリックに溢れている。少し回りくどいと感じる表現もあるが、ふっとよぎるものの認識すらしていなかった感情をピンポイントで示す鋭さもあり、そこがこの著者の魅力的な部分なのかも?

「浜にはわたしのほかに、人影があったりなかったりするが、暗闇の彼方に先客がいるのが目に入ると、なぜだかそれが、残忍極まる人物のように感じられ、回れ右をしてさっさと帰途に就くこともある。一方で、言葉を交わすことさえできたなら、生涯の共になれそうな気がして胸が騒ぎだりする日もあるから、いろいろである。」

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2023年08月15日

Posted by ブクログ

多くのクチコミから
"暗さ"を愉しもうと頁をめくった。

ところがどうして
キラキラした描写に引き込まれていく。

そのくせ妙にハードボイルドで
それが心地よくて。

70頁で終わらず200頁ほどに増やして
もっと探っていって欲しいな・・

そんな風に思いました。

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2023年02月21日

Posted by ブクログ

自然の風景 色調などの描写が美しく 目の前に現れるが 登場人物の魅力が欠けていて 感情移入出来なかった
あっという間に読めた

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2022年04月20日

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読み進めていけばいくほど、ぼやけていく今までの日浅の人物像。
見せている部分だけが全てではないし、誰でも人によって使い分ける多面性を持っていると思った_φ(・_・

2021/11/25 ★3.4

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2021年11月25日

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この作品を読んで感じたのは、文章から感じる風景描写の美しさ。3つの短編からなる作品なのですが、私がおすすめしたいのは、「陶 片」という作品で、両親と暮らす独身女性の話で、自分の境遇に嫌気を立ち、時折自宅近くの海岸で、陶器品の破片を集めて、心を落ち着かさせるという話で、非常に共感しました。自分に当てはまる所もあったので、是非読んでほしいです。表題作の「影裏」も良かったです。第157回芥川賞受賞作。

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2021年09月03日

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都会の時間に疲れ、岩手に出向になった2年間
一人寂しい時間の中に現れた彼、ふいに声を掛けられ、親交が繋がり、釣りと酒を酌み交わすなかに、そんな彼が突然消えた……。心のどこかにいる彼、、、
突然、現れ何事もなかったかのように、時間が戻る。。。
しかし、また突然消えた。。。3.11。。。

知らない間に彼を求め、探すうちに自分の知らない彼を知ることに。一体、私はなぜ?彼を追いかけているのか……

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2021年07月27日

Posted by ブクログ

出向で移り住んだ岩手で、慣れない環境に孤独を感じていた今野。唯一心を許した同僚の日浅と、釣りや酒を楽しむ日々。そんな中、日浅は突然仕事を辞め今野の前から姿を消した。
二度目に日浅が姿を消した後、311で彼が行方不明になっていることを知る。
それをきっかけに、次々と知らなかった日浅の人柄が暴かれていく....。

「廃屋の眺め」
友人の葬儀の席で知り合った、私と佐尾。
冴えない者同士、三年ほど飲み仲間として過ごしていた。温泉旅行を計画し、佐尾の妻と三人で向かうが、佐尾に急な仕事が入り、佐尾の妻と二人きりで過ごすこととなる。
混浴に入った私が見たものは、身体中に痣を作った佐尾の妻だった。
「陶片」
実家暮らしでアルバイト生活の香生子。
姉も再婚し、40代の香生子に母親は結婚紹介所の申込書を渡す。そんな中出会った、女優のエム。
香生子はエムとの官能的な時間を過ごす....。

テーマは震災だったり、DVや同性愛だったり割りと重めだったが、文章が綺麗で引き込まれた。
全て結末が、この後が知りたいとなる最後なのでモヤモヤしつつ、後ひく作品だと思う。

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2021年06月11日

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表題作は先に映像を観てしまった。映画の方はエピソードが少し足されていて印象が異なる。でも、共通して感じたのは水と緑のイメージ。

表題作の他に2作。どれも不安定でぐらぐらしているようでどこか吹っ切れて前向き…そんな印象。

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2021年03月14日

Posted by ブクログ

しばらく軽くて読みやすい本ばかり読んでいたので、なかなか骨が折れた。
表題作は、映画を先に見たので、むしろ原作にはない映画独自のいくつかのエピソードが思い出されて、変な感じだった。
後の二篇は、これはいったい何が言いたいのかなぁ、という感じ。娯楽小説なら楽しめれば良いが、こういう文学の系統は、何かテーマがあるはず、と思うのが、型にはまりすぎなのか?

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2020年12月11日

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表題作しか読んでいない。よく分からなくて、想像に委ねられてるのかなという印象。
映画行けなかったから、DVDが届くの待ってます。

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2020年07月23日

Posted by ブクログ

芥川賞作品。一つひとつの話が、そこで終わる?という呆気ない終わり方をしていて、逆に何が伝えたい作品なんだろう…と考えさせられる。こうあるべきだ、という倫理観を信じて疑わない人間と、そこからはみ出した人間の、決して交わらない価値観を描いていて、この世の世知辛さを感じた。

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2020年05月16日

Posted by ブクログ

面白かったです。
初めて読む作家さんです。
3話とも、なんだか寂しくて好きです。影のある人々。
特に「陶片」が好きでした。「穏やかでいると、人って孤立しますよね」ってわかる感覚でした。エムと香生子の会話、好きです。
登場人物たちのままならないところ…ずっと曇りのような薄暗さが漂っていて好きな世界でした。
「影裏」の映画化の綾野剛さんと松田龍平さんの帯に惹かれて帯買いです。沼田さんの他の作品も読みたくなりました。

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2020年01月18日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞、映画化もされるということで沼田真佑氏の「影裏」を読みました。
描写表現がとてもきれい。
文体がとても文学的。
初めて沼田氏の作品を読んだので、最初はその文体に戸惑いながらなので、頭に内容が残り難かったですが、単独で読むよりも、一緒に収録されている短編二編「廃屋の眺め」、「陶片」を読み終えるジワリと良さが滲みてきます。
一度だけでなく、何度も読み返す本かもしれません。
どの様に映画化されるかが楽しみです。

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2019年10月18日

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