感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2昔前に出た小説を今更読む。
ずっと視界に入るところにあって、引っ越してもそれは変わらなくて、もうこれは読むしかないだろと。
青森の海の近くの実家暮らしの25歳の亮介。頻繁に見る、ヘリコプターに吊るされぶらんぶらんと揺れている自分の姿の妄想に悩まされている。高校のあと弘前の服飾専門学校に入ったが卒業を待たずに中退して以来、ずっと中途半端な状態。いつかは洋服づくりで身を立てたいと思うものの具体的な行動を起こさぬままに祖父母の農業と地元の先輩のツリーハウスづくりや雑用に紛れる日々。そんなとき、兄の慎平が帰ってきて。
兄弟の関係、地元のみんなとの関係、家族との関係などなど、丁寧に描いているのに重たくない。全編、会話は殆ど青森弁(八戸辺りだから南部弁?)でそれが唯一読み難い要素ではあるが、作品の味になっている。
驚いたのが、創作物の描写の巧みさ、再現性。ツリーハウスもそうなのだけれど、香子のミニチュアール、亮介が香子のために作るワンピースなどなどが、文章から目の前に立ち上がってくる。それらは魅力的で、実物を見てみたいと思わせる。この作家自身、文章以外にも何か作ったりしている人なのだろうか。こんな作品、もっと読んでみたい。亮介、頑張れ。
ちょっと検索してみると今も作品を少ないながらも出し続けており、この後出た作品では芥川賞候補にもなったことを今更ながらに知った。他の作品もちびちびと読んでみよう。
地方舞台の青春小説の傑作
八戸を舞台に、南部弁丸出しで、青春まっただ中の若者の苦悩を描いています。
そうそう、こんな鬱屈を抱えながら、田舎でくすぶっている若者っているよなあ、自分もそうだったなあ、と共感することしきり。
家族の中でも居心地悪いし、兄弟で比べられるし、田舎の人間関係もけっこう複雑で、悩みは深まるばかり。
ここではないどこかへ行きたいんだけど、どこへ行ったらいいのかわからない。そんな悩みを一人で抱え込んでいる若い人にお勧めしたいと思います。
Posted by ブクログ
25歳の亮介と、地元コミュニティで人気者の兄・慎平。
ふたりのヒリヒリとしたやりとりに心がざわつく。
ファッション・デザイナーを目指し、
実家の農業を手伝い、
「親方」の元でツリーハウス作りをする亮介の努力を
慎平はなぜ認めず、貶めるようなことを言うのだろう。
p111
―兄弟だからだ―
p112
―兄弟なんて、言ってみれば生まれたときから
親の愛情を奪い合う敵同士みたいなものじゃないか―
すとん、と腑に落ちた。
慎平のことも亮介のことも
どちらの気持ちも、少しだがわかる気がした。
Posted by ブクログ
「おれ」がヘリコプターで吊り下げられてる部分が 最後で何か あーこういうことか、、、とつながるかと思っていたのに
ドカーンとくるものもなく 終わってしまった。
そこが ちょっと物足りなかった。
ただ 文章のところどころに うーーむ と考えさせられる箇所が
たくさんあったのは よかった。
長男と次男、上辺の体裁を整えて生きる人と不器用に自分と向き合って生きようともがく人。
私は 不器用で不細工でいい、自分に正直に生きたい って思った。
Posted by ブクログ
太宰チックっていわれてる本。第33回すばる文学賞受賞作。
世間を上手く渡る兄と淡々と過ごしたい主人公である弟と共通の知人等々がどうしたかっていうと、嫉妬じゃないのようざいのよ何でほっといてくれないのあぁもうキィィー。
彼のちょっと自分本位だけど十分気遣いしてるのに周りからバカにされる、舐められる感はとっても伝わった。
Posted by ブクログ
残酷で可愛い。この短さで主人公の心的混乱とかがうまく伝わってきた。ただ物語の中軸にならないような登場人物とか邪魔かなとは思った。細かいけど、カモメを助けるシーンが好き。カモメが「へさー」って飛んでく。可愛い。次作も読みたいな。残酷で可愛い小説。
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南部弁、懐かしかった。
幼稚園・小学校と、この小説の舞台の八戸に近いとこに暮らしてたから。
なんというかすごい閉塞感と、虚無感と言うか。
南部の曇天を思いだした。
Posted by ブクログ
八戸出身の著者が、八戸を舞台に、登場人物たちに八戸弁で語らせた八戸フリークな物語だ。第33回すばる文学賞を受賞している。
全体を通して八戸弁で語られているためか、とても感情移入した。ツリーハウス以外の周りの景色などは、実在の八戸そのままであり、読みながら実際の映像が脳裏に浮かんできた。
自分には兄弟がいないので、もし兄なり弟がいたら、こんな確執も生まれるのかなと思うと、ちょっとゾッとした。でもこんな心理描写ができるところが「現代の太宰治か」といわれるところなのかもしれない。
最近、地元紙のデーリー東北で木村友祐氏による「空飛ぶ鉄犬」という小説の連載が始まった。これもまたファンタジックな物語のようだ。お話の続きに期待したい。
Posted by ブクログ
青森八戸
服飾の専門学校を中退し
就職することもなくほぼバイトみたいなもんで生活する亮介
兄の慎平は破天荒で感情的で自由奔放で
農業を継ぐわけでもなく都合のいいようにふらふらしている。
兄の紹介で親方の趣味の延長みたいな
ツリーハウスを建てるのを手伝う日々
兄弟。
同じ腹から生まれてきても、考えも性格もまったく違う。
気が合わない他人となら、簡単に距離を置いて接しなければいいだけなのに
血がつながっているということだけで、簡単にそうもいかなくなる。
いつだってヘリコプターにつるされた「おれ」がやってくる。
もろくて孤独で危うい日々。
暗い話かと思えどそうでもなくて
亮介が親方の娘を送るときに、親方に疑われて怒鳴られるところとか
文字が太字になっていたりでしかもめっちゃ方言でなまってて
どこかぷぷってなるときもある。
終わり方はこんなもんだよねー。
Posted by ブクログ
兄弟間の確執…とまでは行かないものの、微妙な溝とか苛立ちとか葛藤とかがリアルに描かれていた。
そこに職場の上司でもあり物語の軸になる人物でもある『親方』が絡んできて、表紙の愛らしさからは想像もつかないドロドロした展開に。東北弁のおかげか筆致のおかげか、テンポよく読めたのであまり気分は悪くはならなかったけど。そんな中、香子ちゃんの存在が救いだった気がする。
とにかく主人公の兄(ついでに言うと親方も)は私の大嫌いなタイプで、彼の言動にはいちいち虫酸が走った。こういう人、私ダメだわ〜。何が半農半X(エックス)じゃボケ。
とにもかくにも、これから先、主人公が思う人生を謳歌できればいいなと願う。大成するか否かは別として。
でもってヘリに吊るされた「おれ」に関しては、もっと何かこう…ドカンとぶちかましてくれたら愉しかったのにな、と。具体的には思い付かないけど。
Posted by ブクログ
読み終わって、まず、ごたごたしてるなと思った。でも、ごたごたしてるなかで必死にもがいてる主人公は読んでてそれなりに共感を持てた。
個人的には読み始めからかなり浮いた存在であった“首をくくられたおれ”にはもっとぶっ飛んだアピールをしてほしかった。
Posted by ブクログ
25歳の亮介は東北南部の実家の農家を手伝いながら、“親方”の元でツリーハウス造りの手伝いもしていた。いつかはファッションデザイナーになるという夢を持ちつつ。そこへ、スローライフ、自給自足と唱える兄が帰ってきた。兄と父、兄と弟の関係に不穏な空気が漂い始める。
どこでオススメだった本だったか忘れちゃったけど、表紙のかわいさに騙された。なんか冒頭の一文から最後まで鬱々とした閉塞感ただよう話だったな。肉親間の容赦ない諍いって、やりきれない。最近読み終わった本って、こんなんばっかり・・・。それに、私って最後がはっきりしてない話は好きじゃないんだと思う。で、どうなったの?って気持ちが悪くなる。その中で唯一、親方の娘さんとのやり取りにホッとした。
ただ、東北南部弁のやり取りは新鮮だったし、迫力があった。読みづらかったけど、目で追って読むだけなのに耳に残る感じ。
Posted by ブクログ
図:うん。案外読みやすかった。でも後半尻つぼみな気が…。
内容(「BOOK」データベースより)
25歳の亮介は、ファッション・デザイナーを目指しながらも、実家の農業を手伝うかたわら、「親方」の元でツリーハウス作りに精を出す毎日。地元コミュニティで人気者の兄・慎平の帰郷がきっかけとなり、つかの間の均衡が崩れはじめる…。第33回すばる文学賞受賞作。
Posted by ブクログ
亮介は、デザイナーを目指しながらも、じいちゃんの農業も手伝い、「親方」のもとでのツリーハウス作りのバイトにも精を出す毎日。 が、そりのあわない人気者の兄・慎平の帰ってきて、日常の均衡が崩れはじめる。 兄ばかりがもてはやされ、自分をわかってもらえない苛立ち、兄の命令に逆らえない葛藤。 第33回すばる文学賞受賞作。 だけど、私は、この後の亮介の行く末こそを読みたいな。 亮介、どう生きていくの? ここでやめないでよ、木村さん。 「現代の太宰?」と帯の惹き句にあるけれど、おおげさにすぎないかなあ。 もう少し他の作品を読んでみないとわからないけどね。