【感想・ネタバレ】下り坂をそろそろと下るのレビュー

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Posted by ブクログ

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オーディオブックで聴書

平田オリザさんの著書はいわゆるビジネス書のような主張をまとめ並べ立てる形式ではなく、エピソードを通して示唆を与える点が好きだ。そのため、単純に読み物として面白く、前著「わかりあえないことから」同様楽しく読めた。

本書で最も大きな主張は、
日本は既に工業立国ではなく、
東アジア唯一の先進国でもなく、
再び世界経済の中心となることはできない。
ということから、下り坂をそろそろと下る、つまり上記の事実を認め、世界に勝てなくても捨て鉢にならず日本の良さを見出し、しっかりとした足取りで経済の衰退の道を辿っていくことが必要だとしている。

私自身日本が経済の中心に未だあると思っていたため、現実として突きつけられると暗い気持ちにならざるを得なかった。しかし、昨今日本の素晴らしさを謳うテレビ番組が溢れていたことに対しては、自信を失った日本人の不安のあらわれだと言う示唆がネット上でも度々見受けられ、日本人の現実逃避として気持ち悪さを感じていたところであり、本書でズバッと切り捨てて頂いた事に心地よさを覚えたものである。

さて、もうひとつ本書で重要となるテーマは文化資本である。物事を指示通りに正確にこなす能力はもはや世界での価値を失っており、これからの時代は、豊かな想像力とそれを人に伝える能力が必要だ。その能力をいかに育むかの点において、都会と地方で質の高い芸術に触れる機会に格差があることを問題としている。現状のままでは、都会で育った人々に地方出身者が太刀打ちできなくなるだろうとのことだ。実際、私はそれほど芸術好きではないが、ネットで伺い知れる範囲において、最先端の文化や芸術に触れるには都会に行かなければならない、そしてそういった文化的教養のある人々がネットビジネスにおいても成功していると感じている。

いち一般市民としては、自分や家族が今後いかにして良質な文化に触れることができるのか模索し、文化的素養を身に着けていきたいと感じた。

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2019年12月11日

Posted by ブクログ

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子育て中の女性が子どもを預けてあそんだり、友人とおしゃべりすることが受容される町、失業者の人が劇場に観劇に来たら、「失業中で大変なのに、劇場にやってきてくれてありがとう」とむしろチケットの値段をおまけしてくれる町。若者がIターン、Uターンしてきてくれるような「面白い」町。そんな町があるのなら、ぜひ引っ越して住んでみたい。本書は、いよいよ経済的に「下り坂」にさしかかった日本の中で、発想を転換し、これまでとは違った意味での豊かさを地域社会の中で追求するためのアイデアに満ちた本である。上記のような視点から、平田さん自身が実際に取り組んできたいろんな取り組みがたくさん紹介されている。さすがアーティスト、柔軟な発想におどろかされた。

それぞれのアイデアは、客観的な効果が検証されているというわけではない。でも、学術論文ではないからそれは別にいいのである(それに、なにをもって成功とするかはとても難しいことだ)。共感できる、目からうろこの柔軟なアイデアが満載な点で、とても良い本だったと思う。

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2018年10月10日

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