【感想・ネタバレ】さよなら、愛しい人のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

さよなら、愛しい人

著者:レイモンド・チャンドラー
訳者:村上春樹
発行:2011年6月15日(単行本は2009.4)
早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)

村上訳で読み返すフィリップ・マーロウ。今回は「さらば愛しき女(ひと)よ」の邦題で知られる本作品。やはり昔読んだ文庫本は見つからなかったが、不思議に話は少し覚えていた。最後の真相究明までは無理だったが。

本作品は、マーロウシリーズの2作目。訳者あとがきにも書いてあるが、マーロウの代表作で、「長いお別れ」「大いなる眠り」とならんでベスト3に上げる人が多い。今回の訳でも470ページほどあり、とても長い。しかし、掛け値なしの傑作。きっかけが、依頼された仕事ではなく、たまたま巻き込まれた殺人事件という設定で、そこに普通に依頼された仕事があって、それと関係があることが分かって、点と点が繫がるという展開だけど、いろいろ出てくるキーパーソンの役割が最初の推測と最後の解明部分とでは大きく違ってくるところが、純粋な推理小説にも近い。マーロウものにしては、少し珍しいかも。

なんと、1940年に刊行された。

(設定)
黒人専用バーの前を通りがかると白人の大男マロイが暴れている。マーロウが覗くと引き込まれ、1杯やるはめに。大男は昔ここで働いていて、一緒に働いていた女を捜していた。分からないと言われ、黒人経営者を殺して逃亡した。
マーロウは、マリオットというジゴロから依頼され、宝石強盗団から宝石を取り戻し(買い戻し)にいく先まで付き合うことに。しかし、マリオットは殺されてしまい、自分も気絶。
マロイを探すため、黒人専用バーがまだ白人でも入れたころの店の所有者(死亡)の妻のところに行ったマーロウ。ボロボロの家だったが、そこには高額な抵当権が設定されていて、持っていたのはマリオットだった。2つの事件が結びついてきた。

***(個人的メモ、ネタ割れ注意!)***

ムース・マロイ(ムショ帰りの大男)
ヴェルマ・ヴァレント(マロイの恋人)
ジェシー・フローリアン(フローリアンズの元経営者の妻)
リンゼイ・マリオット(ジゴロ)
アン・リオーダン(マーロウも知っている元警察署長の娘でライター)

ミセス・グレイル(翡翠のネックレスを強盗された富豪の妻)
ジュール・アムサー(心霊治療)
プランティング(アムサーの用心棒、インディアン)
ソンダボーグ(医師)
レアード・ブルーネット(暗黒街のボス)

ナルティー(77番通り警察)
ランドール(LA中央警察署殺人課)
ジョン・ワックス(ベイ・シティー警察)
ガルブレイス(ヘミングウェイ)(ワックスの部下)
ブレイン(ワックスの部下、体調崩す、マーロウを殴る)

マーロウがフローリアンズの前を通りがかると、白人大男のマロイが暴れている。気になったので覗くと、マロイにつかまり無理矢理2Fのフローリアンズで突き合わさせられる。そこは数年前に黒人専用バーになったが、黒人用心棒をマロイがやっつけ、この店で以前に働いていた恋人のヴァレントの行方を聞いたが知らないと言われ、立腹したマロイは奥のオフィスに入って行って黒人経営者を銃殺して逃亡。

警察に事情を聞かれたマーロウは、ヴェルマ・ヴァレントを探せばマロイも見つかるかもと提案、ではそれを無償でやれと言われる。

マーロウはまず、ある中のフローリアンズ元経営者の妻の家に。店を手放したいきさつなどを聞いたが、過去に店で働いていた芸人たちの写真を見せてくれたにもかかわらず、ヴァレントの写真だけ見せようとしなかったことを見抜く。ピエロの格好をした写真。後にわかったが、マーロウが引き上げた直後にマロイもそこを訪ねたらしい。

マリオットという男から依頼。知り合いの金持ち夫人が翡翠のネックレスなどの宝石を強奪された。2人で自動車移動中に。強盗団は、非常に価値のある翡翠は処分先を探すのが大変だから8千ドル払えば返してやると言ってきたので、一緒に行って欲しいというのが依頼だった。依頼料100ドルを受け取ったマーロウは運転をし、指定の場所に行こうとしたが直前で入り口が狭くなったので車を止めて徒歩で行った。そして車まで引き返すと、マリオットが殺され、自分も殴られて気絶した。預かっていた8千ドルは奪われたが、依頼料の100ドルは無事だった。マーロウは責任を感じて犯人捜しを決意。マリオットの死体を探ると、模造鼈甲の煙草入れの中に3本のロシア煙草があり、別に普通の煙草も持っていることが分かった。

現場に通りがかったのは、捜査好きのライター、アン・リオーダン。マーロウを車置き場まで送ってくれた。しかし、彼女は戻り、3本のロシア煙草を抜き取っていた。
彼女はマーロウを訪ね、宝石商をあたって翡翠ネックレス持ち主の金持ち夫人がグレイル夫人であることを教え、抜き取ったロシア煙草をおいていった。

マーロウはマリファナだと思われるその煙草を分解すると、一枚の名刺が中に巻かれていることを突き止める。住所なく電話番号のみ。心霊療法のアムサーの名刺だった。彼はそこに電話をして会いたいというが拒否される。しかし、マリオットの名を上げると6時に来い、住所は言えないので迎えの車をそちらに出すという。

マーロウは再びフローロリアンが住むぼろ家の抵当権所有者を知人に頼んで調べてもらうと、なんとマリオットだった。しかも、不動産価値に比べてかなり高額だった。彼はフローリアンをまたたずね、マリオットとの関係を訪ねると、以前にマリオットの家で働いていた、今も少し面倒を見てもらっている、とのこと。どうやら毎月仕送りをもらっていたらしい。もう仕送りは来ないよと言い残して去った。

グレイス夫人の執事から電話があり、会いたいとのこと。訪ねると、彼女、病気の夫、ライターのアン・リオーダンがいた。グレイス夫人から事件の際の詳細を聞いたが、どうも本当のことを言っていないようだった。そして、彼女はマリオットにポルノ的な写真を撮られているという弱みを握られていた。マリオットはそういうことで金をせびる男だったようだ。

マーロウがオフィスに戻ったのは6時15分前だった。インディアンが迎えに来た。心霊治療のところに連れて行かれた。インディアンにはすっとぼけて「どんな依頼だ?」と言って着手金を要求、100ドル渡されたので車に乗ったのだった。
アムサーが出てきて話をする。マリオットもグレイル夫人も患者として来たことがあるという。ロシア煙草のことを言い、マリオットは強盗とつるんで襲わせているやつだ、お前も一蓮托生だというと照明が落ち、屈強なインディアンに襲われて気絶。持参していたロシア煙草1本も奪われていた。2本はオフィスにあると説明していた。

気が付くと警察官が2人(ヘミングウェイとブレイン)とアムサーと女子事務員。アムサーはマーロウがゆすりに来たと思い連絡、録音した会話を起こした文書を女子事務員に読ませていた。アムサーは去り、2人の警察官がマーロウを車で連れ出してどこかで降ろすので歩いて帰れといった。あるところで降ろされると、マーロウは背後から殴られ気絶。殴ったのはブレインだったことが後に判明。

気が付くと部屋に閉じ込められていた。幻覚を見ている。麻薬を打たれている。倒れそうになりながらも、旨く好きをみて部屋から脱出、建物内を探るとなんとマロイがかくまわれていた。そして、医学博士を自称するソンダボーグの部屋へ。そこは麻薬中毒とアル中を収容する私立施設だった。ソンダボーグは銃でマーロウを押さえ込もうとするがマーロウは先手を打って去る。

マーロウにこれ以上手を出すなと警告していたLA警察のランドールが訪ねてきた。彼は、マリオットは宝石強盗の手先だったが、もう賞味期限のためあの事件を最後に消されることになった、と推測した。そして、マリファナ煙草に心霊療法師の名刺を入れて、捜査でわざと見つかるようにしてメッセージを残そうとしたと。また、ベイ・シティーの警察官は腐敗しまくっていることも。レアード・ブルーネットが街を牛耳っている。市長の金蔓でもある、と。
マリオットがマーロウに連絡した時、すでにマーロウの名刺を持っていたことをランドールは指摘した。後に、その名刺は汚れていて、フローリアンに渡したものであることに気づく。フローリアンが名刺の上に濡れたコップを置いていたことを思い出したから。

2人でフローリアンの家に行くと、彼女は殺されていた。首の骨を折られたあと、脳をかち割られていた。マーロウはそれがマロイの仕業だと見抜く。ただし、事故っぽい。

マーロウは、ランドールに教えられたのをもとに、ブルーネットの経営する船上カジノに乗り込む。捕まるがブルーネットに会えた。そして、船の警備上の穴を教えてやるかわりに、マロイへの伝言を頼むことができた。

マロイがマーロウを訪ねてきた。マーロウは、マロイがヴェルマの行方を聞き出すために再びフローリアンを訪ね、詰問して揺すぶった時に首の骨を折ってしまったこと、そのあとに頭を割ったことを指摘した。そこに、グレイル夫人が来た。マロイは奥に隠れていた。
グレイル夫人は、実は裏街道を行っていた女だった。それをフローリアンは嗅ぎつけて脅していた。マリオットを通じ、彼女の家の抵当権を高額で押さえ、生活費も出していた。
しかし、マロイが刑務所から出てきて、ヴェルマを探し、マーロウも彼女を探し始めて、ヴェルマは危機感を覚え、マリオットにマーロウを殺すように説得したが、マリオットは鎖が弱いので彼を殺すことにした。そこで、宝石強盗事件をでっち上げ、マーロウに依頼をして殺す機会を作ったが、ヴェルマはマリオットだけを殺してマーロウを殺さなかった。

そんな話をしている時に、マロイが出てきた。なんと、彼女はヴェルマだったのだ。そして、マロイを8年前に警察に売ったのもヴェルマだった。マロイはまだ彼女を愛していたが、彼女は彼を嫌いだったのだ。そして、グレイルと結婚して莫大なお金を手にしていた。グレイル夫人はマロイを撃って逃げた。

マロイは死んだ。そして、3か月後、ヴェルマは歌手に戻って逃げていたが、歌声で見抜かれて逮捕されそうになったので刑事を撃って、自分も撃って自殺した。

腐敗していたベイ・シティーの警察署長は解雇され、刑事の多くは降格。そして、レッドという元警察官が復職した。レッドは、マーロウがカジノ船に乗り込むのを手助けしてくれた好漢だった。

アムサーはとんでもない詐欺師で逃げている。ソンダボーグも行方知れず。

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2021年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作でも相変わらずフィリップ・マーロウはクールでタフでハードボイルドなわけですが、「ロング・グッドバイ」に比べると、やはり少し見劣りします。

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」のような名言もなく、マーロウさんがぐだぐだ言うセリフが多いです。

また、人生の悲しみに対する描写もイマイチです。

しかし、やはりメタファーは非常に凝って独特であり、村上春樹氏は本当にレイモンド・チャンドラーから多くのものを学んだ(若干パクリぎみの部分も)のだなと思わされます。

ロング・グッドバイに比べると、素晴らしい!ってほどではないですが、中々読めます。

最後の方に出てくるアンの『私はキスされたいのよ、ひどい人ね』というセリフと、最後の最後の「しかしさすがにヴェルマが向かったところまでは見えなかった」という終わり方は割と素敵かな。

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2014年04月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『ロング・グッドバイ』に続いて、村上春樹訳の私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ。
原作はこちらのほうが前の作品のようで。

『ロング・グッドバイ』に比べると少々物足りなかったけど、こちらのほうが物語の展開がわかりやすくて読みやすかった。

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まったく洗濯桶みたいにキュートな女だ。
(P47)

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2020年08月09日

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