【感想・ネタバレ】86―エイティシックス―Ep.12 ─ホーリィ・ブルー・ブレット─のレビュー

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ネタバレ 購入済み

自由と平等の酷薄さ

今回の話はこれまでに比べてもかなり面白いテーマであったと思う
自分は作中で表現されるところの羊としての素質と王としての素質を半々くらい持っていたらしく
どちらの言い分も分かってしまい、脱走兵達の不平不満に共感すると同時に、連邦軍人達のように呆れと嫌悪感も抱きながら読んでいた
悪者になりたくないから、無能は何もするな、という残酷な本音を言いたくないだけの卑怯者という言葉は読んでいて思わずハッとさせられてしまい、思わずその前後の文章を何度も繰り返して読んだほどだった
その後のミアロナ中佐の本音もまた、彼らの行動を嫌悪しつつも押し付けられた自由と平等の残酷さに振り回される羊への哀れさを悼むもので、それがどこか自分にとっても救いを得られたような気分で今までとはまた違う意味で強烈に印象に残った

一方で同じような元農奴出身でも諦めずに中隊長の
言葉を信じて必死に避難民を守り抜いた兵士の心情の吐露は短くまとまっていながらとても心を揺さぶるものだった
不安に挫けそうになるだろうことを見越して彼らがそれでもなおヒーローとして歯を食いしばれるようにと残した言葉とその後の泣き崩れた兵士のくだり
人間の善性の美しさ、弱くてもそれでも出来ることを果たそうという尊さ
それらがコンパクトに、とても美しく描写されていたと思う。個人的にはこの巻でのベストバウトはここだと言ってもいい

もしも、信じた者が優秀であれば、脱走兵達もまた違う未来があったのだろうかとも考えた
トーチカに籠った兵達は中隊長によって使命を与えられ、信じるものを与えられ、誇り高き軍人としての誇りを自覚させてもらえた
この差は非常に大きいものであったと思う
死してなお支えとなり兵達を守り抜いた中隊長と、死ぬその瞬間まで結局は保身に走ってしまったノエレの対比は極めて残酷に感じる
誰もが強くあれるわけではない。ノエレの行動は愚かで嫌悪すべきものだったが、私は彼女を痛ましく思う
無能であることは罪だと思う。しかしそれを当人が自覚したところでどうにかなるものでもなく、自己責任の一言で片付けられてしまう自由と平等の美辞麗句の酷薄さもまた真理であると思う
一方で己の無能を他者のせいにする無様さもまた嫌悪されて然るべきであると思う
自由と平等、強く生まれた者、弱く生まれた者
改めて考えさせられる1冊だった

#切ない #感動する #深い

1
2023年02月14日

購入済み

敵はレギオンだけじゃない

今回は課せられた任務に対して複数の問題が生じて、レギオン以外の存在にも頭を抱える…今までとは少し毛色が違うエピソードに感じました。
本作を読んで無知であること、学ぼうとしないことによって、勝手な思い込みの末に取り返しのつかない事態を招いてしまう。もしかしたら自分にもそれに近いことは起きるかもしれないと思うと、考えさせられる内容でした。

#深い #タメになる #ダーク

0
2023年02月15日

Posted by ブクログ

シンやセオ、フレデリカが「足りない」と感じたので星一つマイナス。
個性的な新キャラが登場したり、楽しめたのはこれまでと変わらず。

無知がこれほど危険な行動に繋がるとは…
機会はあったのにも関わらず学ぼうとせず、努力せず、その自らの
行動の結果を最終的に全て他人のせいにして終える人生。
自業自得と思いつつも、やるせない気持ちもある。
世の中、自分で考えて判断して行動するより、言われるままを選ぶ・
好む人がいるのも事実。 ラクだもんね。
平和な時代にはそれでもいいのかもしれないけど、悪意や様々な情報
が飛び交う現代、無知は選択。
命取りになることも。

0
2024年02月02日

Posted by ブクログ

なんか引っかかる文体があるけど、良かったです。
半分は過ぎてると思うけどまだ終わりそうでもない。
今回は、羊さんと一人の王の対比が考えさせられる。
エルンストは相変わらず脳内でアニメの声優さんの声でセリフを再生しているけどなんか合わない?不穏な感じじゃない…、声優さんがちゃんと演技してくれたの聞けたら最高なのにな…もうアニメ続編ない気がする。グレーテとエルンストの演技最高なのにな…
クジラ出さないとあとがきで書いていたけど出てきてた、あとがきでもう出さないとまた書いてたけど、出せばいいのに。ファイドとのからみも良さげ。
セオ×アネットはあるのか?
などなど、まだまだ楽しみ続編期待

0
2023年09月23日

購入済み

まだまだ続くそうです。

登場人物増え過ぎて、挿絵あっても誰状態。戦闘シーンも自分の理解力無さ過ぎて読みにくい。初期は面白くて何度も読みかえしていたが、近年は流し見で終わってしまう。

0
2023年06月26日

Posted by ブクログ

想定外…というか、このような内容のエピソードが本作で描かれる事を想像していなかったという意味で意外なストーリーとなっている今巻
物語当初においてエイティシックスとは迫害された弱者であり、それで居ながら誇りを抱えて無限地獄を戦い続けていた強者。86区を出た後は戦い続ける日々は変わらぬままに自分達を、そして自分達の未来をどうするかに焦点が当たっていったから本作の主役はいつだって彼らで。だからこそ彼ら以外があの悲惨に過ぎる世界をどう生きているかなんて考えた事がなかったかもしれない
だって読者からすれば、彼ら以外は全てモブなんだから

今巻を読み終わってから改めて冒頭に記述されたヴィーカの言葉を見ると、主役とモブ、王と羊の違いを考えずにはいられない


第二次大攻勢によって防衛戦を大きく後退させた人類。誰もが焦りと恐怖を抱えずには居られない状況。だからこそ何かを間違えれば自身すら失う未来への恐れを抱く。その状況下はむしろ自分より他人に正しい行動を取って欲しいと願ってしまうものかもしれない
その「正しい行動」とは職能に応じた最適解の行動で。だから人の理想ばかり追い求めるエルンストの支持率は下がるし、エイティシックスには戦いの技能が求められる
エルンストは求めても応えないから。、エイティシックスは求めれば応えてくれるから
なら求められた者が応える力が無いのに応えてしまったら?というのがヘイル・メアリィ連隊に起きた悲劇であり騒動の原因とも言えるのかな?

ノエレ・ロヒが利用した放射性廃棄物から核兵器を、といった手段。ノエレは状況を劇的に変える希望の武器としてそれを求めたけど、作中で言及されたように御伽噺みたいな力は無かったわけで
求めても応えられない。何故ならそんな役割は持ってないから、力を持ってないから

形を転じればメアリラズリアの領民達がノエレ・ロヒに求めたのも同じ構図
彼女は応える力なんて持ってなかったのにそれを自覚しないばかりに悲劇へ突き進んでしまった

そう考えるとこれまで求められるがままに転戦し常勝してきたエイティシックスって異質な存在かもしれない
勿論、86区で殆どのエイティシックスが死に絶え、それでも生き残った者が機動打撃群として戦っている事を思えば、絶死を生き抜く素質を持つ特別な人間ばかりを今ではエイティシックスと呼んでいる都合もあるけど
絶死を生き抜いてしまった彼らだからこそ、死を目前に正しく足掻こうとしない者の気持ちを理解しきれない
エイティシックスは真に無力な者にとって救いであると同時に絶望の象徴だろうな……

それを踏まえると前巻終盤にてシンが恨みを吐く共和国人に「どうして戦わなかったのか」と悲痛な問い掛けをしていた場面の意味が変わってくる
あの時はエイティシックスに感情移入し、共和国人を忌避する形で読んでいたから気付かなかったけど、あのシンの言葉は戦える者の傲慢とも言えてしまうのかな……


この巻では出来るから出来る者、出来るのに出来なかった者、出来ないから無力を押し付けられた者が入り乱れている
後退した防衛戦の中で一緒くたに存在するから衝突が起きる。互いの違いが見えてしまう
違いが見えてそこで自分の行いを改められるならそれはまだ出来る側の人間。違いが見えたのに違うのは自分のせいではないと他者に押し付けたら出来ない側の人間
両者には大きな断絶が有る

これまではあまりに過酷で悲惨な境遇であった為に理解される事が少なく、また自分達をも理解しきれていなかったエイティシックスが他者を理解できない側に回るとは思わなかった
この意外さはこれまで本作がエイティシックスを主役として描いてきたから生じるものだね
エイティシックスは勝って生きて成長してきた。それに読者は寄り添ってきた
だから第二次大攻勢によって悲惨な状況に陥った者達をエイティシックスが理解できないなんて展開が有るなんて思わなかった

でも今巻はエイティシックスとそれ以外で区別されているわけではないから尚更に厄介
出来る者と出来ない者、自身の王である者と他者に王を求める者、役割に応えられる者と応えられない者
能力・才能の差と言ってしまえばそこまでなのだけど、人類の状況が極限に近づいてくるからこそ見えてしまった差なのかな


なんだか今回は内容に直接言及しない形の感想になってしまったな……
状況に劇的な変化があるわけでもシン達に何か試練が訪れたわけでもないから仕方ないかもしれないけど

つまりは状況やシン達以外に少しずつ変化が起き始めているかもしれないという事で
現政権に反発する連邦人、独自の行動を取り始めるエイティシックスの一部、明らかになった共和国の裏切り
状況が状況だけにレギオンよりも人間の方を恐ろしく思えてしまう局面が近づいているのかもしれないね……

0
2023年04月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回はレギオンとの戦闘もあるけれど、それよりも愚かな造反軍の顛末に焦点が当たったお話だった。
あと、レーナはおやすみ回^^

造反軍の愚かさ、自分では何も決められず誰かに責任を押し付ける様は、ある意味共和国の白豚どもと似通っていて、だからこそシン達86が、自分の事を自分で決められる王たちが、一層尊く感じてしまった。
けれど今回はなんと言っても再登場したクジラ(原生海獣)の印象が強い。
なんか起きるんじゃないかとドキドキした。
あれ、これもしかしてクジラくん今後重要な意味を持つの? と思ったけど後書きでそれは否定されてた。えー。

共和国がらみで色々伏線が張られているようなので次回も気を抜けないな。
あと、後書きがらみで言うと、まだ全く終わる気配ないよね、と思う。

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2023年03月10日

購入済み

待ってたー!

続きを楽しみに待ってました!が、発売日が延期になり、忙しい時期と被ったため、しばらく読めず(TдT)
さっき、やっと読み終えた!

人の自由について考えさせられますね。
アニメの中で、シン達が手に入れた死をも含めた自由。あの映像美しかったなぁ。
それとの対比が、、、ねぇ。。。

前巻に続き、人間が内側に隠しているものが物語の主軸。個人的にはこっちの人たちの心情の方が理解しやすいので読んでいて、グサグサくるけど面白い。
正しくありたいと思う人たちの在り方も、読んでいて爽快感がある。

続き早く読みたいです!

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2023年03月08日

Posted by ブクログ

相変わらず不穏は不穏だけれど、最後は大団円だと信じてるから頼む……!! という心境。内部に生まれた不和をどんな落としどころに持っていくのか。これまでとは性質のちがう事象と対応になるのかな。本編の続き、楽しみです。

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2023年07月17日

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