【感想・ネタバレ】異文化理解のレビュー

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Posted by ブクログ

私の周りには仕事柄、沢山の外国人がおり、最近はコロナ禍も明け海外からの旅行客が原宿や秋葉原にひしめいてる。顔だけ見ていると日本人だと思っていても、近付いて連れ立った人との会話を聴いた時に中国人や韓国人と気付く事も多々ある。偶々今日は表参道辺りを歩いていたのだが、少し前から歩いてきた女性2人の会話が如何にも英語か何かに聞こえたので、てっきり海外の人かと思ったら、すれ違いざまに聞こえた会話は確かに日本語だった。私が歳をとったせいだからそう思うのか、日本語にしてはかなり発音も聞こえてくるトーンも崩れて、耳慣れない音に聞こえてしまった。日本語の崩壊が怖い。
本書を読む以前から、日本と異なる文化への理解はある程度ある方だと自分では思っていた。若い頃からアジアを始めアメリカやヨーロッパ、中国など沢山の国を訪れ異なる言葉にも風景にも文化にも宗教に慣れてきていた気がするが、やはりどこか理解に苦しむ行動や行為にぶつかり、時にはあからさまに嫌な顔をしてしまった事もあった。それは今でも変わらない。
文化とはそもそも何か。これまで私の捉え方は、表面に現れる行動、特に宗教的な側面が強く出る祈りや食生活によく現れている部分ばかりを見ていた。当然言葉も違うから、意思の疎通が十分できていたかは判らない部分が多いが、食事をする際には作法から料理のチョイスまで気を遣った事は記憶に残る。仕事の付き合いになってくると、頻繁に感じるのは考え方の違いだ。指示する側になると当然相手が理解できる内容に落とし込まなければ、納得感ない仕事となり成果に如実に現れてしまう。だから極力相手の文化や国柄、考え方を汲んでおこうと努力するが、結局先ほどの言葉の壁もあって有耶無耶のうちに進めてしまう。
考え方の違いも文化的なものが大きく影響すると思うが、文化はどの様に形成されるのか。この疑問に答えるヒントの一つに本書はなり得ると感じる。特にグローバリゼーションという言葉と共に異文化交流が進められ、インターネットをはじめとした通信技術が加速度的に進む今日に至っては、ニュース映像よりも早く動画サイトで異国文化を入手できてしまう。そこに海外からの人流も加わって、映像や書籍の様な間接的交流に直接交流までもが加わり、さまざまな自分と異なる存在を感じる事が容易になった。いや、特に情報を取りに行こうと意識せずに勝手に感覚に触れてくる様になった。
本書はそうした状態から、改めて自国の文化に戻る流れについても触れるが、アメリカのトランプに代表される様な極端なナショナリズムの流れや、ロシアによるウクライナ侵攻を早くも予言する様な文面も多く出てくるので、2024年になった今からすると2000年前後に描かれた本書は異文化理解を掲げながらも、筆者が完全な理解が難しいことを当初より示唆していた様にも感じる。サミュエル・ハンチントンの文明の衝突が描いた未来に賛同するしないに関わらず、結局は似た様な状況に陥っていく現在。

本書を読んで文化は水彩絵の具の色の様なものだと感じた。異なる緑、赤、青がそれが明確な違いだと解りつつも、画用紙に垂らした絵の具が縁で混じり合い紫やオレンジ、黄色など別の色にグラデーションしていく。青の隣には紫があり似た様な色合いを見せるが画用紙の反対側にはまだ塗られていない白や別の色が存在する。画用紙の上に水でも垂らそうものなら近くに塗った色同士が混ざり合い新しい色合いを描きだしていく。日本が中国から漢字や儒教を取り入れた様に、仏教が元を辿ればインドにあった様に、まるで絵の具の色の様に他の色を変えていく姿を思い浮かべる。高度に情報が行き交い流通し始めた現在、そして将来の世界が、全ての色が混ざった状態、何もない黒に塗りつぶされた様な画用紙にならない事を祈りたい。

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

異文化理解とは何か自分の中で定義ができるきっかけとなる本だった。
異文化理解とは、自分の殻から出て、その国に染まること。そして自分の国をみて理解すること。

それぞれの国には必ず急所のような部分があり、そこを押さえることでスムーズな理解ができる。(タイ→仏教など)

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2022年11月20日

Posted by ブクログ

第18代文化庁長官青木保氏が、文化庁に就任される前に書かれた本。筆者の経歴、本のタイトルからして、まさに「異文化理解」の王道の教科書といったところだろうか。

”いい意味”で思ったのとは違う内容だった。文章は平易で、実にわかりやすい。異文化理解の概念をただ説明するのではなく、筆者の異文化体験(タイでの僧修行)など、エッセイのような内容も含まれており、楽しんで読むことができる。しかしその一方で、筆者が最初に「文化は重い」と、定義されたところに、ある種のショックを受けた。異文化を理解するということの深さ、難しさについて考えさせられた。グローバル化社会といわれ、誰もが簡単に他国を理解できると思いこまされていることに警鐘を鳴らす良書だと思う。

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2019年12月26日

Posted by ブクログ

入試で、かなり助かった。分かりやすくて、納得しまくった。タイの修行僧の話に、かなり影響受けた。タイ行きたい…。他にもこの人の本を読みたい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ


青木保 「異文化理解」 文化人類学の立場から 異文化理解の必要性を説いた本。知による世界平和は人類史的な視点しかないと思う

著者は 異文化理解を通して、ハンチントン の文明衝突論(異なる文明間の衝突は避けられない)を超えようとしている

この本のテーマ
*イデオロギーでなく文化という切り口で世界を理解する
*私たちは自文化と異文化の狭間で生きざる得ない
*異なるものを取り入れることにより、自分たちの生活が豊かになる


異文化理解の方法として、異文化と自文化の境界(場所的境界、時間的境界)の認識を重視している。特に ディアスポラの人々(どの文化にも属さず、文化の境界に生きる人々)の視点が印象に残った





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2021年08月07日

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備忘録的にメモ。
それまで西対東のイデオロギー対決が何より優先され、その他の疑問や不満は抑えつけられていた状態だった。この「タガ」が外れたことが、昨今世界各地で頻発する紛争や内戦のきっかけである。ヒトやモノの移動が容易になり、情報の流通も飛躍的に増大している一方で、固有の文化・宗教・民族による対立が先鋭化の傾向がある

日本は第二次大戦後、西側の一員として資本主義、自由主義で運営されてきたが、一方で、最も成功した社会主義国家と評価されることもある。言葉や宗教、生活習慣など、異文化を取り入れ同化させる許容性がある一方、共同体の閉鎖性、境界外のものへの警戒心が小さくない。

「王の身体説」王(日本では天皇)の生命と社会活動で最も重要な時間(時代)が一体化している。王が無くなると国力が弱まると信じられており、実際に経済活動が自粛停滞するなどの現象が見られる。

日本では宗教活動でよく見られるような「境界の時間」の考え方が薄れている。お祈りの時間、ラマダン、日曜礼拝など。毎日の中でゆっくりお茶を飲む習慣やランチ〜シエスタなどの境界の時間もない。緊張した状態が継続することや区切りが無いことで意識変化の機会を失うなどの弊害が。成人の日(儀式)が形骸化していることなどに良く現れている。これに代わって新人研修などがこの役割を担っているが、これで良いのか。

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2014年11月09日

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コミュニケーションの3つのレベルの話や、4つの時間の話など、いくつかのおもしろい概念を知りました。筆者のタイでの体験もたいへん興味深い。異文化を尊重しようと考えると同時に、異文化を理解する前に自文化を省みなければと思わされます。ところで「ディアスポラ」のくだりで個人的には奥田英朗著「サウスバウンド」を思い出しました。

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2012年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
IT化、グローバリゼーションが進み、日常的に接触・交流が増大した「異文化」を私たちは理解しているだろうか。
異文化間の衝突はなお激しく、ステレオタイプの危険性や文化の画一化がもたらす影響も無視できない。
文化人類学者としての体験や知見を平易に展開しながら、混成化する文化を見据え、真の相互理解の手掛かりを探る。

[ 目次 ]
1 異文化へ向かう(文化は重い 異文化を憧れる)
2 異文化を体験する(バンコクの僧修行 境界の時間 儀礼の意味)
3 異文化の警告(異文化に対する偏見と先入観 ステレオタイプの危険性 文化の衝突)
4 異文化との対話(文化の翻訳 「混成文化」とは 文化の境界に生きる 自文化と異文化)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月24日

Posted by ブクログ

ちょい堅苦しいタイトルの割りに、わかりやすい内容!新書のイメージ変わりました。

「その文化の価値とか象徴を理解するところが異文化理解のひとつの大きな困難であると同時に、大きな課題なのです。」

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

これも大学の授業のテキストだったわけですが、面白かったのでいまだに読み返しています。体験出家エピソードと、そこから感じる国民性とか、現地の人たちの宗教のとらえ方がいいなあ。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

高校生?大学生?くらいのときに買ってずっと読んでなかった、新書って慣れてないと読みづらいしめちゃくちゃ眠くなる…ので時間かかった…泣
筆者がタイの僧侶になった話と、あとがきの味の素の話が面白かった。こういう形でもっと身近に異文化理解が進められるきっかけがあれば楽しそうだなー。数人の話だけ聞いてそれが文化だ!と思い込んでしまうこともそれはそれで怖いけど
正しい異文化理解とは一体なんなのだろう…

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2024年02月15日

Posted by ブクログ

  異文化を学ぶ意義について考えさせてくれる。異文化の接触は、自分たちがこれまで常識だと思っていたことを解きほぐしてくれる。具体的には各国の祝祭、儀礼に触れることで、近代的価値観(時間や空間など)を一時的に無効化させてくれるのは興味深い。現代人がいかに近代的価値観に支配されているのかを確認できるのは良い機会であろう。
 また文化には、言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーションの二つが存在する。このうち後者は、容易に翻訳できるものではなく、そのうえ、馴染みのない者がすぐに理解できない。すなわち、ちょっとした学びで、異文化を理解したと思い込んでならない。むしろ、じっくりと時間をかけて、徐々に理解できるものだと心がける必要がある。
 さらに、最終章で21世紀における文化の力について言及している。これまで各国は軍事力、経済力による制圧、すなわち「ハード・パワー」による競争があった。ところが今世紀においては、各国が固有に持つ文化を魅了する、すなわち「ソフト・パワー」の重要性を著者は説いている。そういう意味で、日本特有の文化を保持し、それを多くの国々に良い方向へ作用するように働きかけるのは、他国と関わるうえで重視すべき要素なのである。

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2023年05月31日

Posted by ブクログ

JMOOC OpenLearning, Japan「グローバルマネジメント(入門)」Week3参考文献。

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2018年08月31日

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ネタバレ

・コミュニケーションの3段階 ①「自然」=本能的なもの、②「社会的」=習慣や取り決め、③「象徴」=価値、信仰
・情報の2タイプ ①速い情報=即断的に理解できる、②遅い情報=意味を理解するのに時間がかかる →遅い情報として受け取るべきものを速い情報と取り違えないよう注意
・日本・ASEAN間での文化交流の機運の高まり←経済的関係は緊密だったがそれ以外の交流がほとんど無かった。両地域の共通点は、中国やインドの大文明の影響を受けてきたことや生活様式など。
・文化は人を知る入口。だから、自国の文化についてある一定以上説明できなければ、自分は相手にとって得体の知れない人物と映りうる。バックグラウンドの枠組みがある程度把握できる相手と、全くそうでない相手とでは、どちらがコミュニケーションを取りやすい(=喜ぶ話題や忌避する話題を想像しやすい)か。ましてや、文化の画一化が進行している現代である。自己表現を怠らず、コミュニケーションの基盤を明確にしていくことが求められると思う。

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2011年09月09日

Posted by ブクログ

日本は、あらゆる文化を取り込んで、自分たちに合うように変えてしまう、という文化を持っている。それは日本にいれば世界中の文化に触れられるメリットと、文化の重要性に対する鈍感さというデメリットを内包している。

人類学では、「族内婚」から「族外婚」に向かうことで、現在の社会への発展の基礎ができたと考えている。人々は外の文化を知ることで自分たちの文化を発展させてきた。

「書物(言葉)の宗教:はじめに言葉ありき」と「実践の宗教:はじめに行いありき」

異文化を理解する急所は境界の時間と空間にある。
境界の時間、非日常の時間の有効性

言説はひとつの権力になる。

福沢諭吉の「亜細亜蔑視」 安川寿之輔

異文化間では、何か問題が起きた時に相手を排斥するような極端なことが起きることが多い。だから、異文化理解は重要だ。

ステレオタイプ的理解は、異文化や他者に対する極端なアプローチの方法だ。そこには常に人間を人間として見る視点が欠けている。

「純粋な文化」は存在しない。
文化は異文化から孤立しては生きられない。
文化は、異文化と交わりながら発展し、形作られていく。これを「混成文化」と呼ぶ。

混成の仕方は、それぞれの文化によって異なる。その違いが文化の固有性だ。

ディアスポラは国境を越えた文化の創造者だ。彼らは少数者の立場から、誰もが共有できる普遍的な文化を創ろうとする。

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2011年04月19日

Posted by ブクログ

1回生のときに「異文化について」英文で3〜4枚書けというレポートの際、
参考資料として購入した。

小難しかったので、結局読んだもののレポートには使わなかった。笑

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2009年10月04日

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