【感想・ネタバレ】何者のレビュー

就職活動に奮闘する大学生の青春群像劇だと思ったら、最後ものすごいスピードで私の期待を裏切っていった作品(いい意味で)。
就活自体もリアルで重い感じなのに、より話のコアとなるモラトリアムや自我や自意識についての語りがとにかく心をえぐってくるので、心当たりのある方はご注意ください。

「俺は企業に入るんじゃなくて個人として生きていく」と宣言しておきながら隠れて広告代理店を受けていた友達、平凡な日常をキラキラ&ポジティブに変換してSNSへ投稿する友人、夢を追いかけて芝居の道に生きる決断をしたもののネットで叩かれまくっている仲間。
理想の「何者」かになろうと必死な友人の姿は、冷静で客観的な主人公からするとどこか痛々しい。それは巷でよく言われる「意識高い」という悪口にも似ている。
でも本当に痛々しいのは、本当に仲間たちのほうなんだろうか。

誰かの行動に批評ばかりしていても、本人は一生「何者」にもなれない。理想に近づきたければカッコ悪くても、がむしゃらに行動するしかないのだ。
クライマックスでの友人との口論が、心をえぐりつつもとても心に沁みる。年明け1冊目としてはなかなか良い、今年も頑張ろうと思う作品だった。

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Posted by ブクログ

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何者という言葉はよく自分の中で回顧してしまいます。というのも、ある曲の歌詞で、
「何者にもなりたかった、何者にもなれないから」
という歌詞があって、自分のことを言っているようで突き刺さってたからです。関係ない話か。

登場人物たちはそれぞれの理想かつ心の安らぎとなる何者を演じていたのかな?瑞月はあまりわからなかったけど。良いやり方とは言えないだろうけど、それぞれなりたいものがあるだけ良いなとも思った。

あと拓人がギンジに対して思うことが、過去の自分に重なりすぎて、朝井さん僕の心読んでたんですかって言いたくなる。ある意味恐怖。

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2024年05月12日

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ネタバレ

こういう意識高そうな振る舞い、SNSでもよく見かけるよな〜と思って読み進めていたら、後半で心臓がキュッとなりました
なりふり構わず全力投球でいいんだと思えた

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2024年04月04日

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ネタバレ

自分の就活時代を思い出し、苦しくなった。
内定出た友人に対して、「きっとあの企業はブラックだから」と私も思っていた気がするし、なかなか内定が出なくてカッコ悪い自分をさらけ出したくなくて、友人からアドバイスを貰うとかすごく嫌だった。
あの頃と比べたら自分自身、成長できたかなとは思う。人は「何者」かにはなれない。とにかく今をがむしゃらに生きる!そんな気持ちになれた本です。

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2024年05月11日

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ネタバレ

主人公が周りの友達を自分の物差しで見下したりツイッターにつぶやくの、ツイッターにはつぶやくまではしないとしても、自分もちょっとそういう風に心の中では思うかも…
素直に切磋琢磨することって難しい。

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2024年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

就活は『人の価値』を明示する。
運動会のかけっこで1番になりましたとか、大学受験で第一志望合格しました、とかそういうのはあったけど、社会の一員として大人に認められる、そういうものに受け入れられるというのは、何者でもない学生たちにとってかなり大きな価値になるのだと思う。
『人の価値』を明示する、とは言ったけど、本当はそんなことなくて、就活なんかじゃ人の価値なんて測れっこない。今になって考えれば分かるけど、あの時はそんなふうに思えなくて、それが絶対なんだって錯覚してしまう。
自分の全てを否定されたような、ある種の異常事態の中で、人間の嫌なところがあらわになる。そして本作では、それらが若者のSNS事情と絶妙に絡み合う。
元就活生として、あの時の気持ちとか空気とかを思い出した。

読み進めるほどに主人公・拓人の目線になって、痛い大学生たちを冷ややかな目線で見ていくわけで、最後の理香の畳みかけはまるで自分に言われてるように食らってしまった。あとで数えてみたら20ページくらいひたすら言われてて笑った。

あとは生活の中で起こる些細な事象を言語化する上手さ。
例えば、『あんまり大きくない会社で、という最後の言葉が、冷めた紅茶の中で溶け切らなかった角砂糖のように、この部屋のどこかに残ってしまっている。』
あーこんな瞬間あるなぁ言語化したらまさにこうだなぁって感心する文章がたくさんあった。

全然関係ないけど電車で読んでる時、時期的にリクルートスーツを着た就活生をよく見かけた。
みんなが良い未来を掴めますように。

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2024年04月07日

Posted by ブクログ

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初めての朝井さんの作品。
当時映画化されて、若い作家さんと言う事で大人気だったのを覚えてます。

直木賞を取ったくらいなので作品にのめり込め読めました。最後の最後で、えーーーー!そう来る!?という展開や、リカの心情のぶちまける感じが自分にとっての正論をぶつけ続けているんだな…と。
就活してない身からするとあの期間は本当みんな可哀想だったな思う。就活の闇や、何よりSNSの使い方も良かった!

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2024年03月27日

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途中まで主人公に感情移入させといて最後に突き放すというどんでん返しには驚いたが、少し説教じみいてあまり好きではなかった。

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2024年05月13日

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ネタバレ

持久走一緒に走ろうなとか、テスト勉強全然してないわとか謎アピールあったなぁ笑と回想しながら、ギンジや隆良の様な人脈大事、自己啓発受け売りの権化みたいやヤツも、リアルやなーちょっと痛いな。と読み進めると、ハッとさせられる。達観者ヅラで評論していた拓人と重なり、若干顔が引きつる笑
最後ぶった斬られる拓人のいたたまれない感はエグかったが、何者かになろうともがく理香やギンジへの見る目が変わったのは確か。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

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朝井リョウさんの小説は『桐島、部活やめるってよ』『正欲』『死にがいを求めて生きているの』を読んだことがあり、いずれも人間心理の描き方が好きだったので現在就職活動中ということもあり本作を読むに至った。いつも思うが、朝井リョウさんの小説は特に読後どんな感想を述べても浅いものとなってしまいそうで、登場人物たちになにか言われそうで、妙な気分になる。しかし敢えて述べるとするならば、本作は非常に居心地の悪い作品だった。それは私が就職活動中だからということに他ならないだろう。私もこの時期でまだ内定が出ておらず、友人に内定が出たと知るとアプリでその内定先を検索し、年収が低かったり、ブラックと噂されるようなところだと少し安心する。最後の理香のシーンは自分に言われているようで本当に胸が苦しかった。私も心の中でずっと理香を馬鹿にしながら読み進めていたし、実際こういう子いるよな〜と、嫌悪感すら抱いていた。朝井リョウさんの小説は、そのように登場人物と読者をまるで一体化させて胸に刺さるような表現をしてくるといつも思う。非常に居心地の悪い作品だったが、読んで後悔はしていない。就職活動中に読めてよかったと思う。私もカッコ悪く泥臭く頑張ろうと思える本だった。

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2024年04月20日

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ずるい!と思ってしまう!
自分の小ささや「想像力のなさ」を、思わぬ形でガツンと自覚させられる一冊でした。

前〜中盤まで主人公の「観察」に共感しながら読み進めて、最後に「あなたのこういうところ、どうなの?」と突きつけられる。痛快。

最後に、「かっこ悪いところに気付けた」という形で成長を描くところに、朝井リョウさんの物語がもつ爽やかさを感じました。

登場人物の描写については、よくもこんなに些細でリアルな人々の姿を拾い出せるなぁ…。と感動です。

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2024年04月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他人を客観視してしまう主人公が自分の重なる。
他人から1歩引いて俯瞰的に見ることで"自分はこの人達と違う"と自ら呪いをかける。
でも、大事なのはカッコ悪い自分を受け入れ、カッコ悪く生きることなのではないか。

就活になると一人一人の人間性が出てくるのだと思う。隆良やギンジのように信念を持って生きる者、瑞月のように取り巻く環境を受け入れながら自分のゆく道を信じる者、光太郎のように"らしさ"全開で生きる者、理香や拓人のように背伸びした自分を見せようとする者。どの生き方も間違いではないし、正解でもない。

どの人物も、実際に生きる者全員の心の中に潜む性だと感じた。正直に生きることは難しいこと。でも自分を受け入れないと前に進めない。カッコよく生きるのは時に自分を苦しめ、時に自分の中で壁を作り可能性を狭めてしまうと感じた。

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2024年02月13日

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何者かになりたくて必死な人、それを見下して嗤う人、格好悪いのが嫌な私たち。人間であるが故に逃れられない醜さと対峙した気分でした。
どんな人間も誰かの価値観を否定することで、相対的に正しく思える自分に陶酔してるなとも思います。漏れなく私のそのうちの1人で、そうしていないと自分を保っていられないような不安に常に苛まれているんだと感じました。
序盤はとにかく吐き気がしましたが、終盤はもっと吐き気がしました。読者を巻き込み、想像力の限界を突きつけられたような作品でした。

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2024年04月16日

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