【感想・ネタバレ】やがて君になる(8)のレビュー

「わたしには特別って気持ちがわからないんです」
人を好きになること、特別に思うこと、恋愛感情が分からない主人公の侑は、生徒会所属の先輩の七海の告白現場に出くわしてしまう。自分と同じような感情を持っているのではと考えた侑は七海に親近感を覚えるが…。
特別に思うことが分からない侑と片思いしかわからない七海の、絡まりそうですれ違ってしまいそうな関係がもどかしく、今後どう二人の感情が変化していくのかが気になります。
感情の変化や表情のひとつひとつが繊細な描写が綺麗で、百合漫画と分類されるであろう作品ですが、百合に触れたことない方にも読みやすい作品だと思います。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 「成就した恋ほど語るに値しないものはない」という至言がある。敬愛する森見登美彦氏の『四畳半神話大系』の台詞だけれど、これは僕の中で一種の信念にまで昇華されていると言ってもいい。現実では付き合ったあとが色々大変なんだろうけど、物語においては安定して幸せになることを望んでいいと思うし、そういう甘々な描写ばかり見せつけられると口から砂糖を吐き出すほど胸焼けする。だから、新しい関係の始まりで幕を引くべきだ、と思っている。
 本作を初めて読み終えたときは、そういう理由で少し不満が残った。勿論、思いが通じてから、自分たちの関係をどう定めていくべきか模索する描写の丁寧さは素晴らしかったけれど、恋が成就して終わりが一番綺麗、という信念に捕らわれ過ぎていたのかも知れない。
 翻って、初めて再読を終えた今の心境はどうか。何も言うことはない。既に上記したのと同じ点を、今の僕は更に素晴らしいものとして味わうことができた。むしろ結ばれて終わりではなく、自分の気持ちをどこにおくか、自分たちの関係をどう位置づけていくかという問題に踏み込み、真摯に描き切った点をこそ評価したい。
 ありがとう、中谷鳰先生。

0
2021年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

以下、電子本で読んだときの感想。

もとはビザール好きで悪い意味での百合好きでも、この作者の誠実さには打たれた。
わたし人を好きになれないかもという不安を、人から与えられてなかったことにするのではなくて、自分が掴むんだ選ぶんだという強い選択をしたあと、両想いってわかって、それで私たちどうするの、っていうところを、時間をかけて描いてくれる、だからこそベッドシーンも下世話な意味ではなくなる。
すばらしい、いい意味での百合漫画。

アニメ終了後もずっとこの漫画・アニメのことは折に触れて思い出していた。
「櫻の園」「青い花」に連なる、好きな作品。

各巻の帯の一言が毎回素敵だったので、まとめてみた。

1巻
わたしを
好きな、
わたしの
先輩。

2巻
わたしに
好きは、
訪れない。

3巻
このままで
いたい。
ほんとだよ。

4巻
わがままだ。
あなたも
わたしも。

5巻
ここでは
ない
場所へ。

6巻
先輩は
もう、
大丈夫だね。

7巻
いいか、
もう。

8巻
わたしの
好きな、
わたしの
先輩。

0
2021年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アニメ2期をしばらく待っていたが、残念ながら2年経っても製作されそうにないので、ついに完結まで読んでしまった。大団円を迎えてしまって、ハッピーエンドなんだけど、個人的には寂しい気持ちが強い(○○ロスと言われる現象か)。

7巻のラストから、2人が結ばれるまでもう少し葛藤があるのかと思ったが、これまでさんざん思い悩んできたのだから(特に侑の方が)、2人がともに思いを伝える気持ちになったのなら、素直に繋がるのは当然といえば当然。
その後は、当てられてしまいそうなほど、ひたすら2人の幸せな日々を描いている。肉体関係を描いたところ、後日譚で、2人の関係を知っている誰もがそれを自然に受け取り「女性同士の特別な関係」としてとらえないところに、著者の強いメッセージを感じた。

アニメとマンガの両方で、自分の新しい領域を開拓してくれたこの作品に感謝。

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2020年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ついに最終巻。最高だった。
8巻通して語られたのは、関係性を紡ぐ物語。いつも人との関係性を紡ぐのは、何かを選んだり選ばなかったりを繰り返すことで生まれるのだな。
他人に興味の持てなかった侑、亡くなった姉の人生を生きようともがく燈子、それぞれが互いに欠けたピースは「選ばない」という共通項だったのですね
物語終盤、それぞれが「選ぶ」ことで二人はお互いにすれ違う。でも、もう大丈夫なのだ。それまでに紡いだ糸がちゃんと繋がっている。主人公の名前、小糸侑が(糸を結う)に音が重なるのは偶然か。姉を演じ続けた燈子が姉の亡くなった年を越して選んだのが、演劇なのが、偶然か。素晴らしい作品だった。マーヴェラス!

0
2020年05月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

侑と燈子の関係性はもう少し拗れたものになるかと思いきや、案外あっさり二人はそれぞれの想いを伝え合うことが出来たのは意外
でも、この段階の二人の間に横たわっていた問題は誤解と「好き」に対する認識の問題だけであり、それさえ解決できれば二人の間にはもはや何も障壁など無いのか
そもそも、此処に到達するまでに散々悩んで苦しんできたわけだし。

自分の「好き」「特別」の意味を納得できる形で理解した侑。変わってしまう侑をそれでも好きだと感じる燈子
それぞれが不変だと思っていた感情を乗り越えて互いを好きだと伝えあえた様子は素晴らしい
だからその後のエピソードがこれまでの重苦しさが嘘のように完全に甘々なものになっているのも、二人が障壁を乗り越えられたご褒美のようなものかもしれないね
だからって互いが好きすぎて「相手にして欲しいことを要求する権利」を基に同じ妄想をしている様子には笑ってしまったが。
障壁が無くなったからって一気に盛り過ぎである

そういった甘々な日々の中で印象的なシーンと言えば、燈子が「付き合ってる」とか「恋人」みたいな言葉で今の侑との関係を説明したくないと言ったシーンかな
侑が「特別」を判らないといって始まり、燈子が侑を「好き」で縛り付けたこの物語。二人の想いが通じ合った今の状況は確実に「恋人」と呼べるものだけど、一方で付き合いたての淡い状態でもあって
これからの変化を予め許容し当たり前だと思うために「恋人」ではなくただの侑と燈子で良いと感じた燈子の姿には確かな成長を感じられたなぁ

そして最終話で数年後の姿が描かれたわけだけど……
良い意味で変わっていない部分、良い意味で変わった部分が見られたのは良かったなぁ
ここで注目したいのは侑が「特別だったあの日もあの瞬間もはるか後方に」とモノローグしている点かな
燈子と結ばれた瞬間に念願の「特別」を手にした侑。ならこのモノローグから数年後の侑は「特別」を無くしてしまったのかといえばそうではなく、「特別」の意味が変わって、それでも変わったものを受け入れて燈子と共有しているのだろうなと伝わってくる

「特別」だったものが別の物に変わっても穏やかに二人過ごす侑と燈子。
「好き」ではなく「何になってもいいよ」と伝え合う二人の様子や星空に手を伸ばして確固たる表情で燈子の手を取った侑の様子
二人の道行きの先には確かな幸福が存在しているのだろうと感じられるラストは感無量

恋愛モノでありながら、読み進める中でここまで感情を掻き乱された作品ってそんなに多く無い自分にとってこの作品は確実に「特別」と呼べる物語
でも、二人が手に入れた物を思えばただ「特別」と呼んでしまうのも何だか勿体ない。これからも折に触れて読み返してこの物語が持つ意味を様々な方法で読み取っていきたいと思える、そのような物語だった

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2019年12月30日

ネタバレ 購入済み

好きに向き合えた

随分前から燈子を好きになっていた侑と好きに怯えて向かい合うのを恐れていた燈子。
前巻では燈子に告白して振られて落ち込む侑と、沙弥香の告白を受け好きの意味をやっと自分の中で整理できた燈子が描かれます。
そして本巻で2人はお互いの気持ちを確かめ合い付き合うことに。侑に特別が訪れて良かったと心から感じました。
沙弥香がストラップで2人の関係を察したところ、侑とも爽やかに接した(むしろ距離が縮んだ)ところは流石ですよね。
ハッピーエンドのその先を描いていたのも良かったです。もう1巻分ぐらい見たかった(笑)
最後は3~4年後くらいでしょうか。登場人物が皆自分らしく生きているのが描かれていてタイトル回収完了でしたね。
仲谷先生の次回作が楽しみです^^

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2019年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「変わる」ということにそれぞれの形で
怯えていた主人公・侑とヒロイン・燈子の物語が
遂に最終巻となりました。
お互いがお互いを思い、そのことを伝えることで
壁を乗り越えた訳ですが、
単なるハッピーエンドではなく、これからやってくる
将来における関係性への期待や不安の描写に、
誇大表現ではない恋愛のリアルさを感じました。

空白の数年間は読者の中で…ということでしょうね。

素敵な物語をありがとうございました☆

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2019年11月28日

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