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Posted by ブクログ
終戦間際の予科練を舞台にした小説。「一歩の距離 予科練」と「マンゴー林の中で」の二本が収録されています。
これを読み終わって知ったのだけれど,作者の城山三郎氏も海軍に志願入隊して,特攻の部隊に配属されて終戦を迎えていた方だったんですね。一歩間違えば,この小説は残されていなかったというわけ・・・。
結構感情的な書き方だったり,登場人物の心の動きなんかが詳細に書かれているので,あくまで小説,フィクションとして読んだんですが,なかなかよかったです。
青春群像劇,と言った感じです。
飛行機乗りというのは当時の少年達の憧れだったんですねー。今でもパイロットというのはかっこいい職業の一つではあると思うんですけど,不景気の世の中,安定的な選択をする子が増えていると思うんですよね。多分。
少年たちへの飛行機への純粋な憧れが胸を打ちます。「錘りでもなんでもいいから飛行機に乗りたい」とか,「教員からの懲罰も,その後の飛行機があるから我慢できる」と思い,ひたむきに日々の訓練に取り組む予科練生たち・・・。青春。
まだ人生経験も浅く,この世に未練も少ないだろうからと特攻に選ばれた若き予科練生たち。
誰がそんな事考えたんだかー。まだ若いからこそ,これから未来が沢山あるのに。手軽に死んでもらえる,とかちゃんちゃら可笑しい。
親も本当に悲しかっただろうなーと容易に想像がつきます。切ないなあ・・・。
塩月は「一歩の距離」について煩悶懊悩するけれど,この時,誰が死んで誰が生き残るかなんて,紙一重だろうと思います。
城山さんが生き残ってくれてよかったなあと思います。面白い小説が読めたので。