【感想・ネタバレ】月世界小説のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の菱屋は、想いを寄せる相手の石塚と2人でゲイパレードを見にきたところ突如として空から天使が現れ街中に災害をもたらし、世界は終末に向かう。その最中石塚を亡くした菱屋は目を閉じ妄想の世界に逃避する。次に目を開けたとき、彼が立っていたのは自身の妄想世界のなかだった。菱屋は妄想世界を渡り歩きながら、世界を滅ぼそうとする存在との戦いに巻き込まれていく。
物語が終わっても、登場人物たちの人生は終わらない。彼らが意思を持って動き出し、自分たちで物語を紡いでいってくれたらいいのに……そんな妄想をしたことのある人におすすめの一冊。
日本語で記された小説の世界という舞台で、日本語が魔術的な力を持っているのは上手いと思った。
世界nでの再開シーンはじんわりとあたたかくも儚い。妄想世界を渡り歩き勝ち得たものが、2人が手を繋ぐあの瞬間だと思うと感慨深い。

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2018年01月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全然知らない作家の作品で、なんの前知識もなく読みましたが、面白かった。

2014年、突然世界に終末がおとずれる。
絶体絶命に追い込まれた菱屋修介は、いつも現実逃避をするように月世界へ逃避した。

そこから始まる妄想を軸としたパラレルワールド。

1975年のニホン。
学生運動盛んなその世界で、学生たちはアメリカの属州からの独立を叫ぶ。
しかし一番の危険思想は、この世にあったこともないはずのニホン語を見つけ出そうとすること。
記録のどこを探してもニホン語は見つからず、ニホン語を話せる人もいない。

…はずだったが、数年前に現れた自称超能力者ユーリ・ゲナーの影響のもと、ニホン語を解せる子どもたちが、ニホン語を取り戻すために立ち上がる。
なぜならば、言葉は力だから。

特にニホン語は、自国の言葉を失うことなく大国の言葉を受け入れた歴史がある。
バイリンガルのように言葉を切り替えるのではなく、言葉の意味を付け加えながら両立させる。
受けいれた漢語に大和言葉を加えながらニホン語として成長させてきた。
子どもたちを中心とした《ニホン語圏武力解放戦線モノノケ》と列島政府の言葉を巡る戦いは熾烈を極める。

その一方月世界では、人間たちが《非言語的存在》と戦っていた。

だんだんわからなくなってきます。
誰と誰が戦っているの?
誰と誰が味方なの?
天使と悪魔の戦い?

勝負は言葉が紡ぎだす物語の強さで決まります。
アナグラムや落丁、脚注などが攻撃の手段となり、さんざん読者を笑わせますが、戦い自体は非情であり、予断を許しません。

描写は結構えげつなく、ぬちゃぬちゃねっとりしています。
月の世界だというのに、結構水分含有量高めの擬音です。
でも、どちらかというとそういうのが苦手な私ですが、この作品は大丈夫でした。
勢いがあって、何より面白かったからでしょう。

ああ、当たりの読書だった。

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2017年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゲイの青年・菱屋修介は、片思いしている石塚啓太からLGBTパレードを見に誘われ、期待と共に出かけたその場で、アポカリプティック・サウンドと共に舞い降りた天使たちによる黙示録の光景に巻き込まれ、啓太が惨殺されるのを目撃する。子供の頃から妄想癖のある菱屋は、堪え難い光景を前に妄想の月世界へと逃げ込む。
アメリカの属州として支配されている日本で言語学を専攻する学生・ヒッシャー・シュスケットは、かつてこの国に存在していたと言われる禁断の言語「ニホン語」を調査しようとするが、関係者たちが謎の組織によって次々と消されて行く。同じアパートに住む過激派と思しき男・ワクート・ソッジズに窮地を救われながら、黒服の男たちに追跡されて絶体絶命になったヒッシャーの前に、謎の言語を操る子供たちが現れる。
月世界のとある街で、菱屋修介は石塚啓太と名乗る軍人が率いる第五十七物語機甲部隊にスカウトされる。その部隊では、枠田宗治という丸顔の陽気な男をはじめ、癖のある男たちが「神」を相手に戦いを繰り広げていた。背景もわからぬまま最前線へと投入される菱屋の目の前に、言語を殲滅せんとする「神」の軍隊が襲いかかる。

LGBTパレードを見に行った菱屋修介の「世界n」、彼が逃げ込んだ妄想の月世界「世界n-1」、日本がアメリカの属州として支配され国土解放のレジスタンスが暗躍している「世界n+1」の3つの世界を舞台に繰り広げられる、空前前後の「言葉の、言葉による、言葉のための戦い」。
ジャンルSFのテクニカル・タームを借りれば、多元世界SFと言えないことも無いかもしれません。が、この作品で描かれる各世界は、それぞれが密接に連環し、交差し、融合します。登場人物たちも相互に干渉し合い、成長し、変体を遂げます。精緻な理論に立脚してかっちりと話が進む、因果関係がはっきりしたストーリーが好きな人には、これほど読みづらい作品は無いと思います(^_^; でも、めちゃくちゃ面白いです!

人間は唯一、言葉を使う能力を持っている。言葉を使えるが故に、言葉を通じてしか世界を認識することが出来なくなってしまい、言葉によって再構築された妄想の世界の中に生きねばならなくなった。そして、言葉の数だけ世界が生まれていった・・・
この作品の骨格を成す世界観は、こうして文字にすると荒唐無稽に聞こえますが、肌感覚として理屈抜きに理解できますし、認識論に通ずる考え方でもあります。
それをそのまま舞台設定とし、「複数の妄想世界の中で言葉を武器に神と戦う」というトンでもないエンターテインメントに仕立て上げた、牧野修氏のぶっ飛んだ力技に感服いたしました。なんぼでもハッタリをかませる設定ですし、相当のグリップ力で物語の手綱を引き締めて行かないとあっという間に拡散してしまう危うさもあると思うのですが、複数のストーリーラインを最後にスマートに収束させ、未来への希望を感じさせる温かいハッピーエンドでまとめあげるという見事な着地ぶりです。
ストーリーはもちろんのこと、要所要所で繰り広げられる圧巻の情景描写も読みどころの一つ。絢爛華麗で外連味たっぷりのドライブ感溢れる文体で、気持ちよく酩酊できます(←褒め言葉ヽ( ´ー`)ノ)。鴨が特に好きなのは、地平線の彼方まで畳敷きの《千畳平原》を疾走する生体戦車《ドラフト》の描写。書き割りのように青い空の下、「畳を帚で掃く音」をさせながら多足昆虫のような足を高速で動かし、次の戦場に向かう《ドラフト》の勇姿!何とバカバカしくも美しい光景!
こうした凡人の想像力の遥か斜め上を行くビジョンを眼前に現出させるという、SF本来の楽しさも存分に味わえる作品です。細かいことはつべこべ言わずに、この圧倒的な世界観に酔え!というタイプですね。読む人を選ぶ作品ではありますが、鴨は大好きです。

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2017年03月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人の数だけ言語の数だけ、世界の数は増えていく
物語を語っていくことこそが人が人である所以、みたいな話でした。
人物や世界線の関係を把握するまでがなかなか難しかったですが、最後の盛り上がりは楽しかったです。

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2020年01月04日

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