【感想・ネタバレ】月世界小説のレビュー

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Posted by ブクログ

言語SF。このジャンルは初心者だが、とても楽しめた。現実と虚構とが入り混じり、感想としては何を書いたら良いのやら。全然わけがわからないのに、感動すら与えてくれる不思議な本。とにかく素晴らしいので読むべし。

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2021年04月11日

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ネタバレ

主人公の菱屋は、想いを寄せる相手の石塚と2人でゲイパレードを見にきたところ突如として空から天使が現れ街中に災害をもたらし、世界は終末に向かう。その最中石塚を亡くした菱屋は目を閉じ妄想の世界に逃避する。次に目を開けたとき、彼が立っていたのは自身の妄想世界のなかだった。菱屋は妄想世界を渡り歩きながら、世界を滅ぼそうとする存在との戦いに巻き込まれていく。
物語が終わっても、登場人物たちの人生は終わらない。彼らが意思を持って動き出し、自分たちで物語を紡いでいってくれたらいいのに……そんな妄想をしたことのある人におすすめの一冊。
日本語で記された小説の世界という舞台で、日本語が魔術的な力を持っているのは上手いと思った。
世界nでの再開シーンはじんわりとあたたかくも儚い。妄想世界を渡り歩き勝ち得たものが、2人が手を繋ぐあの瞬間だと思うと感慨深い。

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2018年01月04日

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ネタバレ

全然知らない作家の作品で、なんの前知識もなく読みましたが、面白かった。

2014年、突然世界に終末がおとずれる。
絶体絶命に追い込まれた菱屋修介は、いつも現実逃避をするように月世界へ逃避した。

そこから始まる妄想を軸としたパラレルワールド。

1975年のニホン。
学生運動盛んなその世界で、学生たちはアメリカの属州からの独立を叫ぶ。
しかし一番の危険思想は、この世にあったこともないはずのニホン語を見つけ出そうとすること。
記録のどこを探してもニホン語は見つからず、ニホン語を話せる人もいない。

…はずだったが、数年前に現れた自称超能力者ユーリ・ゲナーの影響のもと、ニホン語を解せる子どもたちが、ニホン語を取り戻すために立ち上がる。
なぜならば、言葉は力だから。

特にニホン語は、自国の言葉を失うことなく大国の言葉を受け入れた歴史がある。
バイリンガルのように言葉を切り替えるのではなく、言葉の意味を付け加えながら両立させる。
受けいれた漢語に大和言葉を加えながらニホン語として成長させてきた。
子どもたちを中心とした《ニホン語圏武力解放戦線モノノケ》と列島政府の言葉を巡る戦いは熾烈を極める。

その一方月世界では、人間たちが《非言語的存在》と戦っていた。

だんだんわからなくなってきます。
誰と誰が戦っているの?
誰と誰が味方なの?
天使と悪魔の戦い?

勝負は言葉が紡ぎだす物語の強さで決まります。
アナグラムや落丁、脚注などが攻撃の手段となり、さんざん読者を笑わせますが、戦い自体は非情であり、予断を許しません。

描写は結構えげつなく、ぬちゃぬちゃねっとりしています。
月の世界だというのに、結構水分含有量高めの擬音です。
でも、どちらかというとそういうのが苦手な私ですが、この作品は大丈夫でした。
勢いがあって、何より面白かったからでしょう。

ああ、当たりの読書だった。

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2017年05月16日

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ネタバレ

ゲイの青年・菱屋修介は、片思いしている石塚啓太からLGBTパレードを見に誘われ、期待と共に出かけたその場で、アポカリプティック・サウンドと共に舞い降りた天使たちによる黙示録の光景に巻き込まれ、啓太が惨殺されるのを目撃する。子供の頃から妄想癖のある菱屋は、堪え難い光景を前に妄想の月世界へと逃げ込む。
アメリカの属州として支配されている日本で言語学を専攻する学生・ヒッシャー・シュスケットは、かつてこの国に存在していたと言われる禁断の言語「ニホン語」を調査しようとするが、関係者たちが謎の組織によって次々と消されて行く。同じアパートに住む過激派と思しき男・ワクート・ソッジズに窮地を救われながら、黒服の男たちに追跡されて絶体絶命になったヒッシャーの前に、謎の言語を操る子供たちが現れる。
月世界のとある街で、菱屋修介は石塚啓太と名乗る軍人が率いる第五十七物語機甲部隊にスカウトされる。その部隊では、枠田宗治という丸顔の陽気な男をはじめ、癖のある男たちが「神」を相手に戦いを繰り広げていた。背景もわからぬまま最前線へと投入される菱屋の目の前に、言語を殲滅せんとする「神」の軍隊が襲いかかる。

LGBTパレードを見に行った菱屋修介の「世界n」、彼が逃げ込んだ妄想の月世界「世界n-1」、日本がアメリカの属州として支配され国土解放のレジスタンスが暗躍している「世界n+1」の3つの世界を舞台に繰り広げられる、空前前後の「言葉の、言葉による、言葉のための戦い」。
ジャンルSFのテクニカル・タームを借りれば、多元世界SFと言えないことも無いかもしれません。が、この作品で描かれる各世界は、それぞれが密接に連環し、交差し、融合します。登場人物たちも相互に干渉し合い、成長し、変体を遂げます。精緻な理論に立脚してかっちりと話が進む、因果関係がはっきりしたストーリーが好きな人には、これほど読みづらい作品は無いと思います(^_^; でも、めちゃくちゃ面白いです!

人間は唯一、言葉を使う能力を持っている。言葉を使えるが故に、言葉を通じてしか世界を認識することが出来なくなってしまい、言葉によって再構築された妄想の世界の中に生きねばならなくなった。そして、言葉の数だけ世界が生まれていった・・・
この作品の骨格を成す世界観は、こうして文字にすると荒唐無稽に聞こえますが、肌感覚として理屈抜きに理解できますし、認識論に通ずる考え方でもあります。
それをそのまま舞台設定とし、「複数の妄想世界の中で言葉を武器に神と戦う」というトンでもないエンターテインメントに仕立て上げた、牧野修氏のぶっ飛んだ力技に感服いたしました。なんぼでもハッタリをかませる設定ですし、相当のグリップ力で物語の手綱を引き締めて行かないとあっという間に拡散してしまう危うさもあると思うのですが、複数のストーリーラインを最後にスマートに収束させ、未来への希望を感じさせる温かいハッピーエンドでまとめあげるという見事な着地ぶりです。
ストーリーはもちろんのこと、要所要所で繰り広げられる圧巻の情景描写も読みどころの一つ。絢爛華麗で外連味たっぷりのドライブ感溢れる文体で、気持ちよく酩酊できます(←褒め言葉ヽ( ´ー`)ノ)。鴨が特に好きなのは、地平線の彼方まで畳敷きの《千畳平原》を疾走する生体戦車《ドラフト》の描写。書き割りのように青い空の下、「畳を帚で掃く音」をさせながら多足昆虫のような足を高速で動かし、次の戦場に向かう《ドラフト》の勇姿!何とバカバカしくも美しい光景!
こうした凡人の想像力の遥か斜め上を行くビジョンを眼前に現出させるという、SF本来の楽しさも存分に味わえる作品です。細かいことはつべこべ言わずに、この圧倒的な世界観に酔え!というタイプですね。読む人を選ぶ作品ではありますが、鴨は大好きです。

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2017年03月05日

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 月というのは夜空を見上げるとそこにある黄色い円盤、そしてアポロが画像を送ってきたあの荒涼とした衛星。しかし、それとは別に実は月世界というものはあって、うさぎが住んでいたり、かぐや姫がそこに帰ったり、大砲クラブがズドンと行ったり、ブロウチェク氏が気づいたら到達していた世界なのである。月はその周期性によって正気を示しつつ、他方、その怪しい光で同時に狂気を体現する。

 菱屋修介はゲイだが、密かに心を寄せる啓太に誘われ、LGBTのパレードを見にいったとき、世界が終わる。世界の終わりを拒否して菱屋は妄想世界に逃げ込む。つまり「月世界」に。

 さて、世界n+1は、第二次世界大戦で敗戦したときに日本語が消されてしまい、その事実さえニホン人が忘れている世界。ニホンはアメリカの一州に併合されており、安保闘争の代わりにニホンの独立運動が起こっている1975年。菱屋修介の異本(ヴァリアント)、言語学者ヒッシャー・シュスケットはニホン語がかつて存在したのではないかという疑惑を調べ出す。調査をやめるように恫喝する官憲。その背後には神がいるらしい(ここでは表示できないけど旧字体の神である)。革命家の枠田宗治の異本であるワクートはニホン語再興こそが独立の要と知り、現実に働きかけ実体化させる力としての言語を身につけつつあるのだった。
 ヒッシャーは日本語で書かれたという『月世界小説』に出会い、それを読むことで、世界n−1に移動する。そこは冒頭で菱屋が入り込んだ「月世界」だ。月世界では人間の軍隊が〈駱駝〉というメカのようなものと言語兵器で戦っている。これはどう考えても“月の沙漠を旅の駱駝が行く"というイメージから来ているのだろう。月の沙漠って月じゃなくて地球にあるんだが。

 解説は山田正紀が書いているが、神と言語学者が戦うというのは『神狩り』を彷彿とさせるし、神との戦いが言語戦であり物語戦であるのはこの話がメタフィクション化していくことであって、筒井康隆の影響大ということもできる。『月世界小説』の筆者は実はヒッシャー/菱屋なのだ。また、神と対抗する言語を扱うということからかつてユダヤ民族が神により迫害され、いまやニホン民族が迫害されているといい、ニホン人が流浪の民となる小説への言及は、小松左京へのオマージュだ。
 1975年の過激派による武力抗争の世界は学生運動に乗り遅れてしまった世代の牧野修のノスタルジーのようでもあるし、アメリカ属国となっているニホン民族を特権化するストーリーは優れて同時代的な批判とも読める。

 人間は言語によって世界を認識し、言語によって妄想を紡いで世界を構築する。そしてその妄想世界の登場人物も言語によって妄想を紡いでさらに別の世界を構築する。という具合に無数の平行世界が柘榴のように存在するというのが本書の世界観。神の目指すところはすべての平行世界から言語を消し去ること。
 脚注弾とか落丁爆弾による攻撃に曝されながら主人公たちは物語る力によって戦う。冒頭、主人公をゲイとしたのは何の伏線か気になっていたのだが、一応ワケがある。
 遙か彼方で収束する物語、その遠方感は、小松左京的であり、山田正紀的である。

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2016年02月28日

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友人とゲイパレードを見に来ていた菱屋修介に突如その轟音は響いた。空から無数の天使が舞い降り終末の喇叭を吹いている。地面は大きく揺れ、高層ビルは軒並み倒れた。どこからともなく炎に包まれた巨石が降ってきて、裂けた大地から人の顔を持った飛蝗が這い出てきた。人々の悲鳴が聞こえる。眼の前で友人は体を分断された
「月へ行こう」
菱屋修介はそっと目を閉じる。現実から逃れたいときはいつもこうしてきた。幼少の時から積み上げてきた妄想の世界は自由自在だった。月世界の男が話す世界の理、神々との対抗。それは「言葉」の争奪戦だった。

 SFといわれると困ってしまう作品だ。なにせ人と神のガチンコ対決なのだ。創世記のバベルの塔に着想を得ていて、神々が人類から言葉を奪ったのは神々でもコントロールの出来ない人類の発明故と語られる。言葉の普及を神は恐れている。そして打倒神における最重要武器が「ニホンゴ」だというのだ。
 破茶滅茶な粗筋からは想像できない冒険譚。菱屋修介が再び目を開けたとき、目の前に広がるのは神々の残虐なのか否か。

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2023年05月09日

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ちょっと読みにくい部分もあるけど、SFの醍醐味を感じる読みごたえある作品。
これだけ大がかりな世界観で、言語そのものやら歴史やら神やらと向き合うのに、最初と最後は、小さな望みしかもたない恋心にぎゅっとフォーカスされる、その落差と、だからこそ感じる、大事なものは何か的な潜在的な問にやられる。

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2020年08月12日

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トンデモ設定なSFだけど元ネタが実際の出来事だったりするのでかろうじて理解できる感じ。
一気読みしないと世界観に取り残される。
しかしなんでSFって”ぬらぬら”の表現を使われることが多いんだろうか?(←別にこの作品内で頻出というわけではなく、ふとした感想)

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2020年06月17日

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言語を使い、物語を語ることで神と戦うっつー話。平行世界的な構造をとっているわけだが、その世界に上位も下位もない。そういう概念を理解するのに時間がかかったが、あとは楽しめた。悪夢のごときビジュアルと、冒険的空気に満ちた神との戦い。確かに神狩りのオマージュか。

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2015年08月14日

Posted by ブクログ

言語SFと呼ばれてるのが気になって初牧野作品チャレンジ。「物語を語る」事によって言語を武器に神と戦う人類。なぜニホン語はこの世界から失われたのか。
メタと言いますかー……言語によって多重世界が、そして物語が、繋がり、重なり、拡散して、収束する。その全シーンで描かれる妄想世界の密度が濃くてげっぷがでるほど面白かった!(こういうパラレルワールドっぽいのが元々好きなので)今も余韻にひたって楽しんでます。
ああそうそう。読んでる途中、エンデの某作をちょっと思い出しましたね。

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2015年07月30日

Posted by ブクログ

1975年。米国領ニホンの大学院生ヒッシャーは、ジョン・ディーという老人が読めない言語で書いた一冊の本をきっかけに、現在英語を公用語としているニホンにもかつて独自の言語が存在したことを知る。国土回復運動に参加するワクートに誘われ、ニホン語研究を始めようとしたヒッシャーだったが、「警視庁公安課神学対策室」を名乗る黒づくめの男たちに追われ……。言葉を奪おうとする〈神〉との闘いを描いた言語SF。


面白くなりそうな雰囲気を漂わせながら、そのまま尻つぼみで終わってしまった。リーダビリティが高い文体で、地球人の現実逃避によって生まれた妄想の月が人から言葉を奪おうとするという設定は面白かった。
小説が言葉によって書かれるものである以上、言語をテーマに掲げる小説はメタフィクションにならざるを得ない。メタ展開には読者がキャラクターと切実さを共有しづらくなるという難点があるが、本書では菱屋=ヒッシャー(筆者のもじりなのかな)が創作世界を必要とした理由付けが最初になされる。だが、逃避先もユートピアなんかではなく、むしろ菱屋の性向をより厳しく規制する世界だという捻り。テッド・チャン「地獄とは神の不在なり」の設定を安保闘争の時代の日本に適応させた感じなのだが、〈我々を許さない神〉が他国の神であるというのも皮肉が効いているところだろうか。
言葉に宿るイメージを駆使して戦う月の戦争パートもよかったけど、ルィナンが操るポリイや《王女》が語る物語のような詩情を地の文にもだしてくれたら、もっと盛り上がった気がする。

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2022年07月15日

Posted by ブクログ

言語によって築かれる多重世界。統一を謀る神の軍団と抗う主人公達の戦いの話、という解釈で良いんでしょうか?結末もよく分からなかったので、後半を読み直してみようかなと思ってます。

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2021年11月18日

Posted by ブクログ

物語が変容しながら枝分かれしていって、どこまで壮大に成長していくのかとワクワクする感じ。枝分かれしたいくつかの物語が最終的に一つに結実するわけだけど、そこが力技な感じがした。

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2020年12月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人の数だけ言語の数だけ、世界の数は増えていく
物語を語っていくことこそが人が人である所以、みたいな話でした。
人物や世界線の関係を把握するまでがなかなか難しかったですが、最後の盛り上がりは楽しかったです。

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2020年01月04日

Posted by ブクログ

ゲイである主人公が好きな男性とパレードに出かけると
空からアポカリプティックサウンドが鳴り響き
天使と蝗が現れて
世界の終末がやってくる
そして全てから逃避した主人公は妄想の月へーーー

あまりの怒涛のスタートに、これはギャグなのか?!
と思ったけれど
読み進めるにつれて深まる謎と世界の在り方に夢中になる

言語は世界を支配する

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2015年11月21日

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